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ヒトラーが告げる  作者: 猫提督
収容所の怪
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収容所の怪 13


1958年 ドイツ第三帝国 シュトラウツ収容所


 「おい!外に居る者は、あのベンツを狙え。絶対に逃がすな」

 外で部隊の指揮を執っていたSS将校が、展開している兵士たちに大声で命令していた。

 外に居るSSの多くは、軽装備であったが、何人が対戦車用のパンツァーファーストを持ち出していた。

 ベンツの運転をしながら、片手でワルサーP38を撃つ大尉は、周囲より襲ってくる敵弾を躱しながら、その火点へ向けて射撃する。

 「おい、文屋!StGで正面を切り開け」

 「無茶な事を言う!」

 悪態をつきながらも記者は、StG45で目の前に居る敵兵へと射撃を始める。

 大尉が認めた通り、彼の腕前は並のものではなかった。

 記者のはなった銃弾は、ドライブバイの状態でありながらも効果的にSS将兵たちに脅威を与えており、彼らの射撃制度を落としていた。

 さらに、放たれた銃弾数発とそのあと投げた柄付手りゅう弾が、そこにある燃料か弾薬を引火させたのか勢い良い爆発を起こす。

 「ふぅー。やっぱり、並の文屋ではないな、あんた。従軍経験ある奴でも、お前さんほどの腕を持った奴は、そうそういないよ」

 「やかましいな。あんたこそ、運転に集中してくれよ」

 記者の愚痴を聞き流しながら、大尉の運転するベンツは、土嚢や収容所の壁を回避する。

 「大尉!もっと安全に運転しなさいよ。ルセフ閣下に何かあったらどうするのよ」

 「それは失礼しました。閣下には、もうしばらく、このドライビングをお楽しみください」

 全国指導員の横でルセフが、大尉の振り回す後部座席にて体を持っていかれる左右に振り回されていた。

 「ああ。こんな事なら、簡単について行くと言わなければよかったよ」

 「申し訳ございません、閣下!大尉には、私からしっかり指導しておきますので」

 全国指導員は、悪態をつくルセフに大尉を諫める事を宣言する。

 「おいおい。それは、さすがに酷くないですか」

 「指導を受けて当然です!こんな危険な所に総統閣下を連れてくるなんて」

 「一応、彼の意志を推奨しましたよ。まぁ、予定とはちょっと違いますけれどね」

 大尉は、全国指導員の苦言に軽口を叩きながらもベンツを流して一つ目の先ほど試験を行っていた広間に出る鉄製のゲートに到着していた。

 「文屋!ハンドル任せていいか」

 「おい!」

 大尉がそう言って、StGを片手に飛び出す。

 大尉は、その足でゲート横にある詰所に入って行く。中には、いくつものボタンとここを警備していたSS兵士市街が転がっていた。

 ゲートは電子開閉式で、守衛のカギによる解錠と開閉ボタンによる操作で開くようになっており、直ちにその操作を実行した。

 ゆっくりとしたペースで開く扉に苛立ちを覚えながら、向かってくるSS兵士へ反撃する。

 徐々に扉が開いていくと、大尉は車へと走っていく。

 だが、彼の無防備な姿をSS兵士が見逃すことはなかった。

 大尉が走っている足が急激に熱くなり、激痛が彼の全身を襲う。

 「ぐっ!」

 痛みに耐えながら、匍匐で車にはいると、そこで自分の受けた傷を確認する。

 「大尉!足が」

 全国指導員が驚くのも無理はなかった。

 大尉の太ももにはどす黒い液体が勢いよく溢れ出ており、肉の一部が削り落とされていた。

 「文屋!早く車を出せ。ここじゃ狙い撃ちになる」

 「あ、ああ」

 記者は、慌ててアクセルを踏み、ゲート外へと走りだしていく。

 「待っていてくれ大尉。いまキットを持ってくる」

 ルセフは、荷台に手を伸ばして、医療キットを探し出す。

 「ほら。これで足を処置すると良い」

 「すみませんね。閣下は、なるべく姿勢を低くしていてくださいね」

 大尉は、そう言って片手でStGを抱えて、威嚇射撃を行うと、自分の足に包帯を添え止血にかかる。

 「大尉。敵が離れていくわ」

 全国指導員が後ろを見ながら伝えると、大尉や記者もサイドミラーを見て工法を確認する。

 「何とか振り切ったようだな。このまま遠回りしてでも、ここを抜けてから大通りに向かうしよう」

 記者は、人心地付いたようにアクセルなどを緩める。

 「大尉!今のうちに包帯をしっかり巻きます。どこかで止めて足を診ましょう」

 全国指導員がそう言うと、記者は、車を端に寄せて街路樹の間に止める。

 

 ・・・・収容所親衛隊詰め所・・・・

 クロー麾下空挺部隊の襲撃に加えルセフたちの脱出に伴うシャイドルらの謀反により、バルトホッフは状況把握に苦心していた。

 「偽の総統閣下について身柄を確保できたか?」

 「未だに確保できておりません、報告によると乗ってきた車両を使い、簡易試験場方面へと向かったのことで、車両部隊に追撃を指示しております」

 副官の報告は、バルトホッフを苛立てるのに充分であったが、横に置いてある箱を見て笑みを浮かべる。

 「ちょうど良いものがあるぞ」

 バルトホッフがそう言って、その箱を副官に渡す。

 「これを、各部隊に配布しろ。一気に戦局を打開できるぞ」

 バルトホッフがひらめいた反撃の一手とは?

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