収容所の怪 12
1958年 ドイツ第三帝国 シュトラウツ収容所
「迫撃砲中隊の展開完了。第二中隊は、正面ゲート向かいの建物より狙撃体制をとっています」
クローの元に各部隊の配置が報告され、収容所周囲を包囲するように展開していった。
「旅団長!すでに、捕縛した施設関係者の報告によりますと。現在、施設内において親衛隊と地下研究員とでの戦闘が勃発中との事」
「総統閣下たちは、どうなったのだ?」
「現在、安否を確認しております。ですが、収容所内の混乱により情報が錯綜しております」
参謀からの報告にクローは、頭を掻きながら地図を確認する。
「総統閣下の身が最優先である。各隊には、射撃対象の確認を徹底させると共に、分隊ごとの行動を厳守させろ」
「了解しました」
クローの命令により、混乱している収容所に麾下の空挺部隊が突入する。
・・・・収容所内部・・・・
シャイドルの実験室から、出てきたルセフ一行は、外に出るべく行動を行っていた。
「大尉。この先の予定について聞いてもいいかな」
「そうですね。先ずは、武器と移動手段を確保しなければですな」
大尉は、目の前に掲示されている地図を見ながら答える。
「大尉。この状況ですから武器の入手は賛成です。しかし、戦闘員があなただけでは、いかに凄腕と言えども、守り切れないのではないですかな」
階段を上り切り、息を切らせた記者がそう尋ねる。
「お前がそれを言うかね。ウィーンで見せてくれた射撃センスがあれば、十分に戦えるだろう。後の二人には、物陰に隠れるなどの対処をすれば、何とかなるんじゃないかなと思っているんだが」
大尉が振り返りざまに記者に自分の考えを伝える。
「あのね。相手は、腐っても親衛隊ですよ。私みたいな一般人が勝てるわけないじゃないですか!」
記者は、呆れた表情で大尉に物申す。
しばらくしてから、やっとの思いで階段を上り切った全国指導員が座り込みながら大尉たちに声をかける、
「ところでさ、武装して脱出するのは分かったけど、肝心の武器庫ってどこにあるのよ」
「そうだな。この地図には載っていなさそうだから・・・・」
施設内図を指差しながら、大尉は武器庫であろう所を探す。
「とりあえず、施設から出られるように車両置き場に行こうか」
大尉と記者は、腰につけていたガンホルダーからワルサーP38を抜くと、車両置き場にある方向へと走ってった。
車両置き場には、警備用のSd.Kfz. 231と乗ってきたダイムラー・ベンツ、数量のオペル・ブリッツが並んでいた。
見張りの兵士は、ライフルをぶら下げながら周囲を見回していた。
「ありがたいな。車両は、遠くに運ばれていなかったみたいだ」
「急いでいきましょう」
大尉が先導してダイムラーベンツにたどり着くと、キャビネットからStG45を取り出す。
「ねぇ。もしかして、これで突破しよとしているの?」
「そのまま出られなかった時の用心だよ。あって損はないからね」
全国指導員の問いに大尉は、ライフルを持ちながら答える。
「まぁ、護身用ですからね」
横に居る記者も柄付手りゅう弾を腰に差しながら同意する。
「マジですか・・・・」
そう言って大尉は、運転席にライフルを置き、横に居る記者にもう一丁のライフルを手渡した。
「さてと。それでは行きましょうか」
不安になりながら全国指導員とルセフが後部座席に座り込む。
「頼むから、無事に抜けてくれよ」
ルセフの声をよそにダイムラーベンツを勢いよくエンジンを響かせる。
「おい!貴様ら」
SS兵士が慌てて車両の前に出るも勢いの良いダイムラーを止める事が出来ないと察して横に躱していく。
「なんという事だ。おい!直ちにハインツ大佐に連絡するのだ」
混乱に陥っている収容所から、ルセフたちが脱出することができるのか?




