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ヒトラーが告げる  作者: 猫提督
収容所の怪
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収容所の怪5




1958年 ドイツ第三帝国 シュトラウツ収容所


 かつて、ドイツ第三帝国を抑えるために建設されたズデーデンランドの防御施設の跡地を改造して作られた巨大収容所は、四方に置かれた鉄筋コンクリート製の見張り台と、その周囲を囲うように3メートルほどの壁で囲われていた。

 唯一のゲートは、市街の外周を囲っていた大通りから一本の筋道がから入れるようになっており、無機質な外見と合わさってまるで悪魔が住む城のように見えてしまう。

 その小道を走るダイムラー・ベンツの170が1台、ゆっくりと悪魔城の城門に向かって近づいていく。

 「止まれ!」

 城門にたどり着く前に居たSS兵士が、ダイムラー・ベンツへと近づいてくる。

 「私は、ベルリンの総統直下の命令を受けている者だ。この施設の稼働ができるかどうかの視察に来た。ヒムラー長官から聞いていないのか」

 助手席の窓を少し開けて、一枚のファイルを見せる。

 (ねえ!本当に大丈夫なんでしょうね。)

 車内で秘書のような服装に身を包んだ全国指導員が横に居る、少し老けた格好をしているルセフを座らせて大尉に問い詰める。

 大尉と記者は、クローに用意させたSSの軍服を羽織り、同行者としていた。

・・・・数日前・・・・

 「ルセフ閣下を使って中に入るですと!」

 基地に響き渡る様な声で大尉に唸るクローの声で、外にいた守衛も一瞬ビクつく様に体を上げる。

 「左様です。ここには、ベルリンで起こっている現状はまだ入ってきていない。そこが今回の計画に必要な事なのです」

 大尉が考えた計画とは、ルセフにアドルフ・ヒトラーへと変装させて、件の施設への緊急訪問という形として潜入して、内部への視察を行うという流れである。

 「しかし、もし君の言ってた話があちらに伝わっていれば、偽装だとバレてしまう。下手をすれば皆殺しになっていしまう」

 「それは、ないでしょう」

 大尉がそう言ってクローの懸念を払うように説明を始める。

 「まず、大佐が言った通りの情報であれば、閣下の正体については一部のものしかまだ知らない状態であります。もし知っていたとしたら、むしろ確保に動くはずですから、なお残歳刹那に引き入れることとなるでしょう」

 「確かに・・・・しかし、安全の確保は」

 クローがそう言うと、大尉の横にいた記者が付け加えるように話をする。

 「もしも、作戦が不首尾となれば旅団長殿の部隊が出番となるのではありませんか?12時間以上連絡がなかった場合は、直ちに攻撃をして頂きたい。その間は、私たちが何としても閣下をお守りしていきますので」

 記者がそう言って大尉の肩を叩く。

 「まぁ。大尉の腕前走っているが、実質一人で要塞全部を相手しなければならなくなる。それを守れるとは・・・・」

 「下手に多いと気取られます。つけるとしたらもう一組程度が限界かと」

 大尉と記者の説得ではあるが、クローには正直な所、信用できないでいたのである。

 「大佐」

 「作戦には、本人の意向がいるだろう。閣下に話してから再苦戦の最終決定としよう」

 その日の夜。大尉たちは、ルセフの居る別荘へと向かうと、彼は快く受け入れてくれた。

 「・・・・という計画でして、ルセフ閣下にも協力していただきたく思いまして」

 大尉は、ルセフに作戦の詳細と彼の必要性について説明する。

 「私どもとしましては、あなたの身を守るのが第一の命令であります。ただ、協力を頂けるのであればありがたいのでありますが」

 クローは、自身の任務を伝えつつも作戦の参加を申し出てくれていた。

 ルセフは、コーヒーを口にしながら、しばらく考え込んだ後に、顔を上げて答えを出した。

 「私が助けになるのでしたら手伝いましょう。前線は怖いですが、彼らがそばに居るのであれば、安心ですから」

 クローは、それを聞いた後に、大尉たちへ顔を向ける。

 「信用されていますな。とてもうらやましい」

 「まぁ。ここに居る者たちの中で一番付き合いがありますからな。我らは」

 大尉は、頭を掻きながら答える。

 「ルセフ閣下。もし、不測の事態が発生した場合は、わが隊が全力をもって対応させていただきます。絶対にお命をお守りするのでご安心を」

 クローは、観念したかのように答える。

 こうして、ルセフを交えた潜入作戦が決定し、その準備が行われた。

・・・・現在へ・・・・

 「・・・・確認できたが、視察される人物名が書いていないのはどういうことだ」

 確認しに来たSS兵士がそう言って、大尉の方に書類を手渡す。

 「何か問題があったのかね」

 後方から、し枯れた声でルセフが質問する。

 「いえ、閣下。実は、書類不備があったと言う事でして」

 「なんだと。余が病の体を押してここまで来たというのに、帰れというのか」

 後ろからの声は、外にいるSS兵士にも聞こえたらしく、何かあるのではとそわそわし始めた。

 「君。すまないが君の上官を呼んできてくれないか」

 「は、はぁ」

 SS兵士は、少し駆け足で検問所に座っていたSS将校に伝えると、気だるそうに歩いてきた。

 「なんだね。予定にない来客は受け入れていませんが?」

 そう言いながら、不満げなSS将校が大尉の方に向かって伝えると、後部座席の窓がゆっくりと開く。

 「そうか!余であろうと、この施設においては、事前に許可を取らねばならないというのかね」

 そこから顔を出した人物に、SS将校の顔を青ざめさせるのに十分であった。

 アドルフの実子であるルセフは、少しメイクアップすれば、父親同然の姿となっている。

 「ハイル・ヒットラー!」

 急な上官の大声に応えるように周辺兵士も車に向かって敬礼する。

 「うむ。敬礼はよい。さっきの質問についての返事をもらっていないが」

 ルセフがそう言いながら睨みつけると、SS将校が慌てて近くの兵士に何かを確認させに行く。

 「少々お待ちくださりませ」

 「うむ」

 暫くすると、奥からいくつか勲章をぶら下げた中年のSS将校が走ってくる。

 「ハイル・ヒットラー!」

 SS将校は、敬礼して出迎えた。

 「大変申し訳ございません。私は、当施設の管理官をしておりますハインツ・バルトホッフ大佐であります」

 バルトホッフと名乗る男は、おどつきながらもルセフを歓迎する。

 「ところで、余がここの施設に入るのには、ヒムラーの許可が要るのかね?」

 「そんな事ございません!総統閣下が来ていただけるとあらば、これほど光栄なことはございません」

 バルトホッフは、汗を流しながらルセフたちの車を中に案内する。

 この施設に一体何が?ルセフたちは、無事作戦を完遂できるだろうか?

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