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森では春には気持ちのいい風が吹いて、たくさんの花が咲いて、夏には真夏の太陽に照らされた木々がとても綺麗で、夜には星が輝いて、秋には木々は色を変えて紅葉をして、虫の鳴き声が聞こえて、冬には川が凍って、それから森にはよく真っ白な雪が降った。
森の四季はどれも魅力的だったけど、私は冬が一番好きだった。
雪が降ると、森は真っ白な色に染まった。
「どうですか? 自分の好きなものは見つかりましたか?」
卒業式の日、(それは二人だけのいつもの最後の授業の日だった)温かいコーヒーを淹れてくれたあとで先生は言った。
「本当は見つけたした、って先生に報告したいんですけど、でも見つけることはできませんでした。ごめんなさい」と私は言った。
「別に謝る必要はありませんよ。時間はたっぷりとあります。焦らず、じっくりと自分の好きなものを見つければいいんです」
と優しい顔をして先生は言った。
その日も、森には雪が降っていた。
その森に降る雪を見て、そのあとで先生は私の顔を見直してから、「卒業本当におめでとう」と私に言った。
その言葉を聞いて私はずっと我慢していた涙を流した。
「……一年間、本当にありがとうございました。先生」
と泣きながらにっこりと笑って、私は先生にそう言った。