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Twitter始めました。キャラ絵とか上げてます。上手くはありませんし、少し描写と違うところはありますがよければどうぞ。@hQFgdifCaIg8Bda
カランとドアベルの音が鳴る。人通りの少ない時間帯、カフェ【Clover】にいる人物おらず、今しがた入ってきた葵だけが唯一の客だとわかる。
そのことに対して驚きもせずカウンターまで足を進めた女は、近づいてようやくそこに立っている人物が見知った人間と違うことに気がついた。
「あら?今日は別の人なのね」
「ん?なんだ、紅の知り合いか?」
「知り合い…まぁそうね、関係値的にその程度かしら」
「なら呼んでこようか?アイツ今後ろで仕込みしてるだろうから…」
「その必要はねぇよ」
髪を一つで結んだ男は軽い調子で話しかける。それに椅子に座りながら答えると、奥から望んでいた人物が出てきた。それにニコリと微笑むことで答えると、青年ーー紅は顔を顰める。
「お、きたか。お前に客だぜ」
「…真昼間からなんのようだ」
「何って、お茶しに来たのよ。喫茶店にそれ以外の目的で来ることある?」
「……そうかよ。じゃあ薫、紅茶でも淹れてやれよ」
「え、お前の方が淹れるの上手いだろ?」
「俺の紅茶じゃ不服なんだと」
「紅でも無理なら俺でも無理だって」
「えー私は紅くんの紅茶が飲みたいな」
「ほら、彼女もこう言ってるんだしさ!」
「……」
渋々、といった様子で紅茶を淹れた青年にあの時みたいに点数をつける。すると男はさらに不機嫌になり、眉間に皺を寄せながら奥へと戻ろうとしてしまう。
「んー…64点。一応前言ったことは気をつけてるみたいだけど…やっぱりブレンドが微妙ね。あと茶葉が開き切ってないんじゃない?これ」
「…チッ。要件はそれだけか?なら俺はもう奥に戻るぞ」
「いやちゃんと他に要件はあるわよ。あなた、週に何回程度見回りをしてるの?タッグを組んだんだから、そこらへんの報連相はしっかりしてもらわないと…」
それを引き止めてここにきた目的を話し始めると、今まで黙っていたもう1人の男が声を上げて喜び始める。
「へー!紅、お前タッグを組んだのか!!」
「……この人、協会の関係者?」
「ここで働いてんだから当然だろ」
「それもそうね」
どうやら彼も協会の関係者らしい。改めて男をじっと観察する。一つ結びの髪に、そこそこある身長、加えて整った顔立ちからさぞかしモテることだろう。ジロジロ見られていることに気がついたのか、男が名乗りをあげる。
「自己紹介が遅れて悪い。俺は八代薫、呼びやすいように呼んでくれ」
「ご丁寧にどうも、私は葵って言います。紅くんの相方よ」
紅茶を飲みながら女も自分の名前を伝える。協会の関係者ということは、自ずとなんの役職か絞られてくるものだが、念のため彼の立場を明かすことにした。
「えっと、あなたも呪祓師?」
「いや、俺は違うぜ。俺は器具師だな」
器具師とは呪祓師が呪いを祓う役目なら、そのサポートをすることが役目である。主に呪祓師の道具をメンテナンスしたり、新たな道具を与えることが彼らの役割だ。主に器具師は1人につき3人ほどの呪祓師を担当しているのだが…。
「へぇー…ひょっとしなくても紅くん専属の器具師でしょ?なんというか、贅沢ね〜」
「うるさいな、用がないなら帰れよ」
「だから用はあるってば」
「…店が忙しくない時はだいたい水曜日の夜に巡回している。ほら、これでいいだろ?わかったならーー」
「ねぇねぇ、器具師ってどんな仕事するの?」
「……」
青年の言葉を無視して自分の聞きたいことを聞く女に、彼は冷たい視線を向ける。それに苦笑いしながら、薫は自分の仕事について話し始めた。
「器具師の仕事は、そうだなー…当たり前だけど呪祓師の持ってる道具の調整だろ?他にも霊力が少ない人間でも使えるような小道具の開発とかかな」
「へぇ〜…意外とやること多そうね」
「まぁな」
一通り聞きたいことが聞き終わったのか、再び紅茶に口付ける女に、青年はため息を吐く。そしてふと、言っておかなければならないことを思い出し口を開いた。
「おいお前。先に言っとくが来週は巡回しないからな」
「え?なんで?」
「コイツが協会に行くんだよ。だから仕込みやら掃除やらいつもより少ない人数でやることになるからな」
「ふーん…単純な興味で聞くけど、なんで協会に行くの?」
「あー…報告会みたいなもんだよ。俺は別に行かなくてもいいとは思うんだけど…」
そもそも協会とはなんなのか。それは呪いに関わる者が会する集まりのようなものだ。呪祓師はもちろんのこと、器具師や呪いに対する研究をしている研究者などもいる。
とはいえ普段から個人行動が多い呪祓師にとってあまり協会に行く機会は少ないのだが…。
「決めた」
「何を」
「私も行くわ!」
「は?」
「えっ」
「協会って本部には行ったことあるけど他は見て回ったことないのよねー。器具師の知り合いも欲しいし、いいでしょ?」
「おい、お前いい加減に…」
「まぁまぁ、器具師の知り合いがいた方がいいのは事実だ。別にいいぜ。俺と一緒なら少しだけど案内できると思うし」
「あら、ありがとう」
女の勝手な言い分に怒り始めた青年を、男が制する。勝手なのは確かだが、器具師の知り合いは多いに越したことはない。そう思い支部を案内することを伝えれば、女は満足げに微笑んだ。
「それで、あなたも来るでしょ?」
「いやなんで俺まで行かなきゃならねぇんだ。店のこともあるし、俺は行かないぞ」
「えー…私、何するかわかんないわよ?」
「コイツ…」
図太いを通り越すレベルの我儘に青年は頭を抱える。別に女の言うとおりついて行っても構わないのだが、男にはそれをできるだけしたくない理由があった。勿論、女の言う通りに動くのが癪だという気持ちもあるのだが…
「紅、遅いけどどうしたの?」
「あ、マスター。すみません、今行きます」
「マスターさんって協会の関係者ですか?」
「おい!」
すると奥で料理をしていたであろうこの店のマスターが顔を覗かせる。遅い青年を心配したのだろう。すると男の発言で彼が店のマスターだと知った女が無礼にも直球な質問をする。
「うん、そうだよ。君は…紅のペアの子か。紅がお世話になってるみたいだね」
「それはもう、お世話してます」
「……」
それに不快になることもなく答えるマスターに厚かましい態度で応対する女に、いよいよ青年は怒りを通り越して呆れてきた。もうこの女はこういう性格なのだと諦めた方が早いのかもしれない。
「それで私、協会の支部に行きたいんだけど紅くんも連れてっていいですか?」
「紅も?うーん…」
「マスター、コイツの言うことなんか聞かなくて大丈夫です」
「………いや、行っておいで」
「マスター!?」
「やった!」
「いいんですか?紅は…」
「それもそうだけど、君1人で行くのも心配だからね」
「紅はともかく、俺はもう子供じゃないから大丈夫ですって〜」
「ともかくってなんだともかくって」
店のこともあるし、と言う青年に少し悩んだマスターは首を横に振る。その答えに驚いた青年と対照的に喜んだ女。そして彼の答えに驚いたのは男だけではなく、薫もだった。理由を尋ねると、なんとも過保護な答えに苦笑いをする薫。
そんな彼らを見て、男が胃を痛めることになったのはここだけの話だ。