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番外04 卒業式



 桜が咲くころ。


 卒業式の日がやってきた。


 学校の中はしみったれた雰囲気で満たされている。


 あっちもこっちもお別れの話でいっぱいだ。


 まあ分からくないけどな。


 三年間同じ学び舎で過ごした奴等と卒業後は二度と会えないかもしれないんだから。


 感傷的になったりもするだろう。


 僕も少しは、感慨深い思いがあるし。


 入学した時はまさかこんなに濃い三年間を送るとは思わなかった。


 学生のくせに、何度命の危機に陥った事か、数知れない。


 途中で途中であの幼馴染達になんとキレたか。


 僕の胃によく穴が穴あかなかったな。


 でも、なんとか卒業できる。


 生徒会室とお人よし幼馴染コンビが飾り付けた式場をみて、物思いにふける。


 これで、やっと本職の商売に専念できる。


 幼馴染達ともおさらばだ。


 そう思っていたけれど。






 卒業式が終わった後。


「捜索願がだされています」

「は?」

「ですから、この学校で迷子になった要人がいるので」


 生徒会で在校生への引継ぎの作業をしていたら、イリンダからそんな事を言われてしまった。


 まだやってなかったのか?


 って。


 どこかの幼馴染が最後まで問題やら騒動やらを起こしまくるから、後に伸びまくったんだよ。


 ったく。


「詳しくは言えませんが、その迷子のお方はやんごとなき身分の方だそうです。護衛の人達があわてて校内をはしりまわっていますよ」


 最後の最期までトラブル満載かよ、僕の学園生活。


 でも最後になるなら、多少は心が広くなるというものだ。


「分かった、探しておく、念のために言うが……」

「すみません、もうあの二人にも連絡してしまっています」


 ちくしょう、そんな事だと思ったよ!


 あの二人がからむと、別のトラブルに巻き込まれてくるからいやなんだよな。


 せめてあいつらより先に見つけられないかな。


 絶対失礼な事いって怒らせてたり、変な事言って困惑させるだろ。







 ため息をつきつつ、頭痛をこらえながら校舎をめぐっていく。


 卒業式を終えたなごりを味わうためか、まだ比較的学生達が多く残っていた。


 勇気をだして告白、なんて場面もあって探しにくいったらありゃしない。


 さすがにそんな雰囲気の中、どうどうと出ていけるわけないだろ。


 なんど回り道した事か。


 まったく寂しがる余裕もないな。


「しかし要人って一体だれなんだ?」


 思い当たる可能性としては領主か勲章を持った人、または卒業生で出世した人だが。


 それだったら普通に名前を告げてくるはずだ。


 イリンダは、どこかの馬鹿と違って伝えるべきことは伝えるはずだし。


 と言う事は名前を知る事が僕達にとって不利になる相手?


「まさか国王とか、そんなわけ」

「なーんだお前王様なのか」


 脳内に浮かんだ選択肢を捨てようとした矢先に!?


 階段を使って別の階へ移動すると、そこには用心らしき人物と話をする馬鹿とお嬢様がいた。


「こら、そんな言葉使いだめでしょ? もっと丁寧に喋らないと」


 お嬢様は良識のある人物のままでいてくれ。

 絶対に卒業しても変わらないでほしい。


 どうにか馬鹿の口をはやく縫い留めなければ。


 そう思って早足で近づく。


 馬鹿はこちらの気配に気が付いたようだ。


「おっ、ヨルン聞いてくれよこいつがもがっ」


 僕はそのいらん言葉を喋る口をふさいで、用心に謝った。

 ついでの頭もおさえて、一緒に謝り倒す。

 こんな所で不敬罪で死刑になったら、さすがに嫌だぞ。

 そんな罪は僕のいる国にはないけど。


「もうしわけありません、こいつ頭がおかしくて可哀そうな奴なんで。どうかお見逃しを、後できつくいってきませますから」

「もがもが」


 うるさい。


 どうせ、そんな事ないとか言ってるんだろ。


 あるんだよばーか。


 とりあえずさっさと謝ってこの場から逃げよう。


 そう思ったのだが。


「もしやあなたがヨルンさんですか」


 きっちりと相手に認識されてて、興味をもたれてしまっていたようだ。


 なに喋ったんだこいつら。


 お嬢様に視線を向けるが、きょとんとするだけだった。


 目の前にいる用心は小声でこちらに自己紹介してくる。


「申し遅れました。僕の名前はエルランド。どんな立場の人間かは、ここでは言えませんが、貴方達をとある職場に推薦しにきたんです」


 嘘……だろ。


 たのむから嘘だと言ってくれよ。


 僕はその場にくずれ落ちたい思いでいっぱいだった。


 さっき馬鹿が国王とは言ってたのを思い出す。


 そしてエルランドと言う名前は国王の名前と同じだと言う言葉を思い出す。


 嫌な予感が満載だった。


「ぜひ、僕の願いを聞き入れてくれないでしょうか。国の為に動ける人が一人でも必要なんです」


 断りたいなぁ。


 僕には夢ってものがありましてですね。


 商人になってやるべき事があるんですけどね。


 両親の後を継がなくちゃいけないんですよね。


 とか喋りたかった。


 でも、相手が相手だから、うまく言葉にできる自信がなかったのだ。


 考えている間に会話が進んでしまう。


「あの、返事は時間がかかってもいいので、それでは失礼しますね」


 ちょうどいいタイミングでやってきた護衛らしき物達が国王様を回収していってしまう。


 そんな空気の読み方ってないだろ。


 もうちょっと僕が言い訳するまで、迷子を見失っててくれよ。


 国王様、その頼みって断ったら、とんでもない嫌がらせとかされたりしません?


「もおおお、なんでこうなるんだよ」


 僕はとうとうその場に崩れ落ちて床に拳を叩きつけた。


「うおっ、どうしたんだヨルン」

「体調でもわるい? 保健室にいった方がいいかしら」


 僕の平穏って、一体どこにあるんだよ。





 後に僕は思い知る。


 学生時代におきたあれこれは、ただの序章にしか過ぎなかった事を。


 それは幼馴染達が巻き起こす前代未聞の伝説の一端にしか過ぎなかった事を。


 残念ながら凡人である僕も、その伝説の一幕に数えられてしまう事を。








〇馬鹿の称号・ランク

 称号 すぐれた魔物ハンター。お手伝い屋さん、弱い物いじめ討伐者、勇者を討ち倒し者(※ただしやつは四天王の中でも最弱)、気高き魂、恋愛ヘタレ、学業を修めしもの

 勇者称号 平民勇者

 女神称号 女神様注目株

 ランク 「SS」

〇お嬢様の称号・ランク

 称号 すぐれた魔物ハンター。天然記念物よろず屋 正義の執行者(※ただし優しい)、危機感ヤヴァイ、勇者を討ち倒し者(※ただしやつは四天王の中でも最弱)、信念と慈愛の少女、幽霊こわい、学業を修めしもの

 勇者称号 勇者ご令嬢

 女神称号 女神様注目株

 ランク 「SS」

〇僕の称号・ランク

 称号 こなれた魔物ハンター、お世話大好きマン、実力派みならい商人、大大大苦労症、不審者お掃除係、勇者を討ち倒し者(※強者のアシストも立派な戦い方さ)、幼馴染を止めし者(心配だよねー)、弱者の矜持、常識が壊れしもの(※ただし途中)、学業を修めしもの

 女神称号 女神様も同情

 ランク 「A」


 一言コメント「学校卒業あめでとー!! でもまだまだ人生は続くよ BY女神」


 勇者称号付与 勇者に与えられる世界の力の恩恵です。

 効果 衆目集中、カリスマ向上、王位の視線


 女神称号付与 日常的に女神の力の恩恵を得られます。

 効果 身体能力強化、生存能力上昇、気配感知、霊感向上







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