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ブレイブ・スクール 勇者養成学校に通う幼馴染が無茶苦茶すぎる  作者: 仲仁へび
第8章 卒業試験を受ける僕と幼馴染達
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第74話 勇者誕生



 時間の感覚が次第にあいまいになってくる。

 ただ手の痛みだけが、強烈に頭に焼き付いていた。


 何度剣を振ったかわからない。

 どれくらいの数の敵を葬ったのかも。

 とっくに体力は限界を迎えていて、気を抜いたら膝をついてしまいそうだった。


 それでも意地で、限界を超えて、剣を振り続ける。

 一人でも多くの人間を救うために、一体でも多くの敵を葬るために。


 しかし、やがて限界が訪れる。


 ただし最初にそれを迎えたのは僕達じゃない。


「も、もう駄目だ」

「うわぁぁぁ!」

「防衛線が突破されたぞ!」


 離れたところから悲鳴が上がる、とうとう守り切れなくなったらしい。


 戦える者達がいなくなった場所から、魔物が町中へなだれ込んでくる。


 魔物たちは、町の中で一般市民達を虐殺していった。


「そんなっ!」

「くそっここまでか!」


 悔しそうにする幼馴染達。

 お前達はよくやった。

 全部守れるわけがなかったんだ。


 誰がこいつらを責められる?

 少なくとも僕は、こいつらを責めたりしない。


 悔しそうにする幼馴染達にかける言葉を探した。


 しかし、彼らはまだ諦めはしなかった。


「まだよ。一人でも救うの。諦めちゃだめ。最期まで抗うの。抗いなさい! 絶望に負けないで! 」

「明日を諦めるな! 膝を落とすな! 誰が負けるなんて言ったんだ。俺達はまだ戦える、まだ頑張れる! そうだろ!」


 絶望するしかない状況にいても、彼らは気高く、そして力強かった。


 その姿に、決して心折れないその雄姿に、僕は視線を奪われていた。


 英雄という存在がどういうものかと聞かれたら、僕は迷わず彼らの姿を思い浮かべるだろう。


 きっと彼らは、やがて英雄になる存在だ。


 彼らのような存在こそが、英雄になるべきなのだ。

 こんな所で、死んでいいはずがない。


 そう思ったとき、彼らの叫びに応じるようにして、何かが飛んできた。


 一体いつからいたのか、どこから見ていたのか。

 近くにやってきていた不審者が何かを投げてよこした。


 幽霊みたいにいきなり出現すんな。


「使え! 女神が許可したなら、使えるはずだ」

「えっ」

「何だこれ」


 戸惑うお嬢様と馬鹿。

 彼らの手に収まったのは二つの光り輝く剣だった。


 その品物からは、まばゆい光が放たれている。

 これってひょっとしてまさか、選ばれて奴しか持てないっていうあれか?


 勇者の遺物?


 そう、それは選ばれた者、勇者になる資格がある人間にのみ与えられる遺物だった。


 遠くで閃光がまたたいて、視界がそろく染まった。


 一瞬遅れて轟音。

 誰かが戦っているらしい。


 だが、その人物を見なくてもわかる。


 笑えるほどの戦闘力、馬鹿にならない一撃。

 それは待ち望んだ助けの手だ。


 勇者が来てくれたのだ。


 視線の先では、白銀の光が明滅してやまない。


 この世界で一番強い力を持った勇者。

 この町は見捨てられたわけじゃなかった、きちんと誰かが助けようとしてくれていたのだ。


 その光景を見た、幼馴染達は互いに頷きあって、勇者の剣を握りしめた。


「いくわよ!」

「おう!」


 そして、力強い光で魔物の軍勢を切り開いていく。


 その姿はまさしく英雄。

 難事に膝を屈する者達に手を差し伸べ、力強い背中で励ます英雄の姿だった。


 あれほど苦戦した魔物たちが、あっという間に殲滅されていった。



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