第72話 最後の一日
朝。
まだ寝足りない。
けど起きなければならない。
頭に響いてくる音があるからだ。
防衛網の各所についている者達……見張りの人間が起床の鐘を鳴らした。
魔物の群れが、もう何度目になるのか分からない突撃をかましてくるのを確認したようだ。
僕達は持場につかなければならない。
夜の内は攻撃してこないってのがせめてもの幸いだけど、迫りくる魔物の群れを見るとその幸いに対する感情も、すぐふっ飛んでしまうだろう。
眠っていた人間達が次々とたたき起こされる。
今日一日、ギリギリまで戦って、市民達を逃す。
これが僕達の仕事、だから明日のことはもう考えない。
戦える人間は総動員だ。
僕も、剣を持つのは得意じゃないが、そうも言ってられなくなった。
「ヨルン、行くぜ! 今日は俺達一緒に戦えるな!」
「最後にならない事を祈りたいな、ほんとに!」
で、近くで休んでいた馬鹿と合流して同じ持ち場へ。
幸か不幸かこの場合は分からないが僕は、近隣の魔物を討伐しすぎて有名な魔物ハンターになってしまったような、そんな戦闘狂幼馴染達と肩を並べて戦うはめになったのだった。
急いで現場に向かう。
魔物は、やっぱり多い。
くそ地面が見えないじゃないか。
さっそく準備ができた自警団たちが弓やら投石器やらで攻撃している。
近づきすぎた敵達には僕達が相手だ。
途中からお嬢様も参戦。
「くそっ、こなくそっ、ぜぇ、ぜぇ」
「えいっ、やぁっ」
さすがに何日も連戦しすぎて、体力馬鹿っぽいところがある幼馴染達にも疲労の色が見えてきている。
反対に、早々に後方に下がらせてもらった僕にはまだまだ余裕があった。