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ブレイブ・スクール 勇者養成学校に通う幼馴染が無茶苦茶すぎる  作者: 仲仁へび
第8章 卒業試験を受ける僕と幼馴染達
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第71話 運命の日、前夜



 その日の夜。


 町に戻った僕達は、早急に地下道を使った避難計画を立てた。

 住民達の数は多い。

 おそらく、全員逃がすのは無理だろう。

 防衛線で戦っている者達への被害もかなり多くなってきた。

 どう計算しても、全員が避難する前に、その前に町に魔物がなだれこんでしまう。

 だが、だからといって助けられる命を見捨てるわけにはいかない。


 女性と子供、老人から先に逃がし、男性を後にまわす事にした。


「押さないでください。子供から手を離さないように」


 避難させる人達の列をさばきながらも、色々あれこれ考えてみるが、やはり数手足りない。


 せめて、この場に一人でも勇者がいてくれたら……。


 そう考えてたら、先に避難する事が決まった女性から声をかけられた。

 小さな少女と手をつないでいる。


「頑張ってくださいね」

「ありがとうございます」


 きっと彼らは、この町の状況を知らない。

 明日には破られる防衛網の事を知らない。

 

 だから、そんな風に声をかけられたのだろう。


 あの馬鹿と幼馴染達と知り合う前の僕だったら、こっちの気も知らないでなんて思っていたかもしれないな。


 誘導を手伝った後も、やる事は残っている。


 明日の予定を話し合う会議場へ出向いて、大人達にまじってああだこうだと意見を述べ合う。


 こういう所は、経験が生きている。

 ただ有事や災難に巻き込まれてきたわけじゃないからな。


 自分達に力があればと、今日ほどそう思わなかった日はない。


 ここにいるのが勇者であれば、全員助けられただろうに。


 この世界で一番強い勇者。

 白銀の力を持つ勇者。

 彼ほどの存在なら、魔物の群れの一つや二人あっという間だろうに。


 でもここにいるのは、ただの学生とちょっと経験がある自警団達だけ。


 すると、種戦力という事で同じく場所に集っていた馬鹿が言葉をかけてきた。


「お疲れ様だ。ヨルン。まだ仕事あるのか?」

「まあな。助けられる人間を助けられないかもしれないってのは歯がゆい」

「区別と差別は違うだろ。よく分かんないけど。優先順位をつける事が駄目なわけじゃないって、先生が言ってたぞ」


 ちなみにその先生(学校の先生の方だ)は教える腕は良くても、剣の腕が一般並みなので、早々に怪我を負ってダウンしている。


「馬鹿のお前になぐさめられるなんて、終わりだな」

「お前って、ほんとぜんぜん素直じゃないよな」


 ともあれ、馬鹿のはげましもあってか、何とか今日の仕事をやり終えた。


 僕達が防衛線を維持できるのはあと一日。


 もって、たったの一日だ。


 明日全ての決着がつく。



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