第67話 秘密の通路
町の中にこもってから数日経過。
まったくただの卒業試験をこなしにきただけなのに、何でこんな目にあってるんだ。
なんて、ぶつくさ言いながら起きた早朝。
例の不審者が、変な資料を持ってきた。
こいつまだいたのか。
見かけなかったから、とっくにどっか行ったと思ってた。
その不審者はそれを手渡してくる。
ものっそい古臭くて、紙がボロボロだ。
「えらい奴は自分だけ助かればいい、って考える奴が多い」
その資料のタイトルを見て、ピンときた。
なるほど、そう言う事か。
「市民の反感をかったときに、領主が夜逃げするための道……か」
そういう発想はなかったな。
幼なじみ達と一緒にいる間に、知らずに考え方が毒されてきていたのかも。
資料を読むに、この町には一般の人間がしらない、秘密の地下道があるらしい。
どういう風の吹き回しで不審者がそんな手助けをしてくれたのか分からないが、戦いは一日経つごとに厳しくなってきている
戦いがどう転ぶかと問われれば、間違いなく悪い方に転ぶと答えるだろう。
なら、守らなければならない市民達は少ない方が良い。
ヨルンは、防衛線の戦いで負傷したクラスメイトに声をけた。
「地下道を調べに行く。町の資料を見返してみたんだが、もしかしたらここから安全に逃げられるかもしれない」
危機的状況を抜け出すために、奇策に打って出ることにする。
どれくらい使われていないか分からない。
ひょっとしたらもう、なくなっているかもしれない。
あるかどうかも分からない、避難通路を探して地下道を歩き回るのは疲れそうだが、少しでもこの状況をマシにできるなら無視できない。
魔物の活動がよわまる時間を見繕って、僕と数名のクラスメイトは地下に向かった。
ただし、幼馴染(馬鹿&お嬢様)は必須戦力なので、地下にはこれない。
不審者は……こっちについてきた。
何でだよ!
お前、お嬢様の事気に入ってただろ。
あっち行けよ。
なんて遠回しに言えば、「この町に人間に罪はないからな」とか言ってきた。
それ、今聞いてない。会話をしろ会話を!