第66話 敵に囲まれながら、なんて無理に決まってるだろ
そして一日経って、四日目。
状況が厳しくなってきた。
さすがに幼馴染共も、手加減だのなんだの言ってられなくなってきたな。
「くそっ、何で騎士達は早くきてくれないんだよ。これじゃ、もたねーぞ!」
「俺達まだ学生だろ。今頃普通に試験終えて、地元に帰ってるはずなのに!」
「こんな命がけの初戦があってたまるか。帰りてぇ」
なんて叫びながら、自警団の奴等も、クラスメイト達もひいこら言って戦っている。
別に学生なんだから、こんなところで体張る必要ないのに。
まあ、白い目で見られるだろうけど、前に出て戦う必要なんてどこにもないのだ。
なんだかんだでこいつらも、良い奴だよな。
そんな中、人のフォローをする方が活躍できる(と自認している)僕は、あっちへこっちへ行ったり来たり。
「負傷者を運ぶ! 道を開けてくれ」とか「矢を補充しにきたぞ!」とかやってるよ。
魔物の群れに突撃するのは、あの幼馴染共に任せておいた。
だってあいつら、普通は防衛線の内側から攻撃するのに、町の外に出ていって敵に囲まれながら命のやりとりしてるんだぞ。
マネできるわけないだろ。
一週間くらい籠城してても、外部から騎士たちがくる気配がない。
ぶっちゃけ、見捨てられたんじゃね?
と思う。
応戦に出た自警団の奴等には負傷者が続出してて、いつ防衛棒が突破されるか分かったものじゃない。
そうならなかったのは、一般市民達が協力してくれて、かろうじて持ちこたえているからだ。
兵士達の武器をもってきてくれたり、負傷者の手当てをしてくれたり、ご飯をつくってくれたり、見回りをかってでてくれたり。
彼らの手伝いがなかったら、ぶっちゃけやばかっただろう。
僕達なんて、押し寄せてきた魔物に蹂躙されて一瞬でミンチだ。
それもこれも。
『おねーちゃんたち、いつもありがとう。これお花あげる』
『ありがとう、私達も貴方たちのおかげで助かってるわ。でも、無茶な事はあんまりしないでね』
『おにいちゃん、これたべる? ごはん!』
『おう、ありがとな。えっ、俺にそのご飯くれるのか? 苦手なもん押し付けようとしてないか? だめだぞ、子供はちゃんとなんでも食っておかないと』
こまめに住民たちとコミュニケーションをとって、彼らの心をケアをしている幼馴染達のおかげだろう。
まだ学生である僕達。
そんな僕達が、騎士でもないにもかかわらず身を挺して戦っている。
そういった事が伝わったから、町の人たちも協力してくれるようになったのだろう。
絶望的な状況の中でも、あの馬鹿とお嬢様がいるところには、希望があった。
なんて考えてたら、別の場所で戦っている馬鹿とお嬢様が「へっくしょん。誰か噂してるかな」「風邪? こんな時にひいちゃだめよ。大変なんだから」みたいなやりとりをしていたとか。