第63話 閉鎖中
教師に報告した後、いったん町に戻る。
その途中で、僕達が先ほどいた森から大勢の魔物が出てきた。
絶対に手に負えない数、というほどじゃなかったけど、それでも多い。
しかも、後から後から出てくるし、街道まで追いかけてくる。
普段は魔物がいないような、人通りが多い街道にも魔物がうろついていた。
何か、尋常じゃない事が起こっているに違いない。
僕達学生は宿に戻って待機。
教師が詳しい事情を調べる事にした。
その数時間後、悪い予感が的中してしまったようだ。
「魔物のスタンピートが発生したらしい」
と、戻ってきた引率の教師が、町に出回っていた情報を教えてくれる。
スタンピートが発生すると、理性を失った魔物たちがめちゃくちゃに暴れまわって、人や動物を襲いまくる。
が、十分な対策をしていれば、怖くもなんともないものだ。
発生の予兆を掴んで、事前に隊規模な討伐隊をさしむける。
森の中に生息している、魔物の数を減らしておけば被害を抑えられがはずなのだが、今回はそうでなかったらしい。
何でも、この付近で起きた呪術犯罪者の潜伏がどうたら……とかいう事件のせいで、手が回らなかったらしい。
今もその事件のせいで、頼りになる騎士や勇者はみんなではらってしまっている。
頼りになる戦力が、全くいない状況だった。
そんな中、今町の外に出るのは危ないだろう。
という事で僕達は町の中に閉じ込められてしまった。
町の人達は、スタンピートの発生を受けて、鬱々とした雰囲気を纏いはじめた。
「これからどうなってしまうんだ、この町は。頼りになる騎士も勇者もいないのに」
「これから来てくれるのを待つしかないのか?」
「うまくいくと思うか? 特別な遺物に選ばれないと勇者にはなれないんだろ? そんな珍しい人が、俺達のような小さな町に来てくれるわけないじゃないか」