第61話 願掛け
そんなこんながありながらも、試験の日がやってきた。
訓練も積んだし、武器の状態もしっかりとチェックした。
僕はともかく、幼馴染達は学年のトップの成績。
少なくともあいつらは、余裕で合格できるだろう。
危なくなったらあいつらの力を借りるか、傍でおこぼれに預かるのも悪くはないはず。
各自準備を整えた後。
クラス人数分の馬車を借りて、試験の場所へ向かう。
二、三日かかるため、ちょっとした旅行だ。
各町や村を経由して、目的の場所にたどり着くまでにはいろいろあった。
馬鹿がお嬢様に告ろうとして相手にされていなかったり、お嬢様が試験の不安にのまれそうなクラスメイトを気遣ったり。
僕は、試験の合格に自信がないので鍛錬に精を出していたな。
あの幼馴染と違って僕は人間やめてないから、落ちるときは落ちる。
気合で覚醒なんてこともできないので、運命の日が数日後に迫っている中、のんきに過ごす事ができないのだ。
途中で立ち寄った町で、願掛けできそうなスポットがあったので、足を向けてみた。
テストといっても学校行事もかねてるから、ある程度の自由時間が得られるのがいいよな。
で、そんな僕達が選んだ先は。
「へぇこんな場所があったのか」
「すげー。良いとこだな。俺も結構ここ好きかも」
「私も、素敵な所ね」
そこは、星が綺麗に見える施設だった。
その町は夜空からの流れ星が多く見える地域らしいから、観光客が多いのだとか。
多くの人が訪れるのならハズレはないだろうと思い、足を向けてみたが、思ったより結構いい場所だった。
辺境だからか空気が澄んでるし、夜の時間になるとみんな消灯するから、星空が綺麗に見える。
夜空に広がる満点の星々はかなり迫力があったし、見ごたえ抜群だった。
その地域では、空から落ちてきた星が消えるまで、願い事を言えたら叶う、とかいう話が伝わっているらしかったけど。どう考えても人間には無理な行動だった。
やつら消えるの早すぎるだろ。
一緒に来ていた馬鹿は早口言葉に失敗して舌かんでたな。
「付き合えますように、つきあ、いててててっ」
「ちょっと大丈夫? 唇から血が出てるわよ」
「うわ、顔近い。顔近い。願いは叶わなかったけど、これはこれでいいかも」
おまえらこんな時でも、のろけ出すのかよ。
気をきかせて二人きりにしてみたものの、仲良く星のお話に興じてるだけで、ぜんぜん進展しやしない。
馬鹿は寒いなとかいいながら「あっ、手をつないでも良い?」とかきょどりながらやってるけど遠回りすぎだろ。
お嬢様も「そうね夜だもの。寒いしいいわよ」とか言って、全然意識してないし。