第60話 卒業試験について
そんな中、勇者養成学校に通っている僕達は、卒業試験を受ける事になった。
卒業試験の内容は魔物の討伐。
一定の数、魔物を倒したら卒業可能になるらしい。
一昔前と比べて勇者になれる人数が増えてきたため、試験の難易度は以前と比べてだいぶハードルが下がってきている。だが、それでも学生がこなすには少し難しい。
魔物との戦闘になれば、命を落とす危険性が格段と増すだろう。
けれど、僕の幼馴染(馬鹿&お嬢様)にふりまわされてきた経験が活きているのか、クラスメイト達は全員、試験に乗り気なようだった。
これまでちょくちょく課外授業で不運にも魔物と遭遇してきた事があったし、幼馴染達の武勇伝を聞かされてきたから魔物の生態にも詳しくなってきたしな。
数字好きの女生徒、(というかイリンダ)によれば「私達全員の試験の合格確率はほぼ百パーセントです」とのことだ。
けれど(※ただし問題が起きない場合に限る)なんだよな。
あの二人、トラブル吸引体質だから、絶対今回も何かあるぞ。
僕は視線の先のとある人物に目を向ける。そいつは、授業中にもかかわらず、机に立てたテキストに隠れて、何かを口に入れている。幼馴染の馬鹿だ。それを注意いしているお嬢様もついでに見る。
「あむあむ」
「あっ、駄目じゃない隠れておやつなんか食べて。今な授業中なのよ。これは没収」
「えーっ。ちょっとくらい良くね? なあヨルン、どう思う? 俺宿題忘れたせいで昼ご飯抜きで勉強させられたんだぜ? ちょっとくらい良いと思わね?」
お前らちょっとは緊張感持てよ。
とりあえず、そろそろ教師の我慢が限界に達しようとしているな。
こんな時にやる事といったら、一つしかない。
僕は真顔で幼馴染(馬鹿)を生贄に差し出した。
「先生、この馬鹿が弁当食ってます」
「あっさり売られた!」
元から仲間じゃないからな。
「ごくろうさん、ヨルン。よし。廊下に立ってろ、馬鹿生徒」
恨みがましい視線を送ってくるな。
自業自得だたわけ。




