第58話 さっさと付き合えよ
そもそもこの僕が、何で人の恋のあれこれに手出ししなくちゃいけないんだ。
時間の無駄だ。
あーもう、やめやめ。
どうせ振り回すだけ振り回して、こいつらくっつくときはあっさりくっつんだろ。
なんて、そうでも思っていないとやってられない出来事が起きた。
ある日。イベントに向けて、生徒会室で書類仕事を片付けることになった時の事。
幼馴染達が手伝いに来たのだが、数分もせずにピンクをまき散らしやがった。
「なあなあ、俺やる気でないから抱き着いて良い?」
「だーめ、ちゃんと仕事にとりくみなさい」
そこ、乳繰り合うな。
気が散る。
存在が邪魔。
「えー、ちょっとくらいよくね?」
「だめったら、だめ。そんなわがまま言ってると、口きいてあげないんだから」
「えっ、そんな事いわずに。話しができなくなったら、俺たぶん死んじゃう」
なんだよこいつら、黙って仕事しろよぉ。
人の前で無自覚にいちゃつくな。
つきあってもいないのに、どこからその糖分でてくるんだよ。
生徒会の仕事を手伝わせるために、幼なじみ(馬鹿)と幼なじみ(お嬢様)を呼んだは良いけど、害しかなかったようだ。
このままだと負の感情に飲まれて効率が落ちる。
僕は、まず馬鹿に苦情を入れた。
「おい、まず馬鹿。とりあえずお前外出ろ」
「何で俺だけ!?」
「真面目に仕事してないからだろ、お前が喋り出すと気が散るんだよ!」
「えーっ!」
だいたいピンクが発生するきっかけはいつも馬鹿なんだよな。
馬鹿さえ行動を起こさなければ、お嬢様は真面目にやってくれてるんだから。
人の視界の中で、桃色のオーラまき散らしながら好きな相手にちょっかいかけたり、時々天然な反応を返されて鈍色のオーラ放ちながら落ち込んだりするなよ。
「そこをなんとか。これからはちゃんと頑張るからさ」
「私からもお願いヨルン。ふざけないようにしっかりと見張ってるから」
「しかしですね」
「だ、だめ?」
「……はぁ、おい馬鹿、次はないぞ」
でも、お嬢様の方が甘いから結局は追い出しきれない。
で、さすがに注意された後は真面目に仕事しだすんだけど、今度は。
「あっ、ここ間違ってるわよ。作業やりなおし」
「えっ、あっ本当だ。さんきゅーな。うっ」
「どうしたの」
「いや、ちょっと顔近くね、っと思っただけで」
「どうしたの? 顔が赤いわよ。熱あったの?」
「熱はあるかもだけどそれは恋の病てきなアレなわけで。うわわっ、ちょっおでこくっつけて熱測ってくれるとかこれ誰得!? 俺得だった!?」
真面目に(本人達的には)そして無自覚にいちゃつきだすから困る。
お前ら、もうさっさと付き合えよ。
僕は、資料の束を持ってその部屋から。桃色空間ができあがっている中からさっさと退出する事にした。
別の部屋で作業した方がいい。
もうこいつら放置しておこう。