第57話 鈍感を貫くお嬢様
神様とか運命とかのせいにしちゃ、だめだな。
それは思考停止の極みだ。
よくないよくない。
考えてみたが。
なかなか二人の恋が進展しないのは、馬鹿が馬鹿のままだからだと思う。
いや、むしろ馬鹿じゃなくって一段地位を落として、あいつは馬鹿野郎だしな。
お嬢様が鈍いんだからいい加減に、きちんと自分の気持ちを言葉にして告白しろって言ったのに。
普通に勇気をだして「特別な好き」だと言えばそれですむ話なのに。
とりあえずもう一回休日にふたりきりにさせてみて、馬鹿が馬鹿野郎だという事が分かった。
後日馬鹿に愚痴ったら、さすがに申し訳ないと思ったのか謝って来た。
「すまん、ヨルン。というかごめんなさい。無駄に一日消化しました。いや楽しかったは楽しかったけど」
デートはいつも通り騒動こみで行わた。
それでちゃんとプレゼントも渡せたらしいのだが。
その後、馬鹿野郎は、一生友達宣言されて帰ってきたらしい。
『いつも、貴方といっしょにいると楽しいわ。だから私と御ずっと友達でいてね』
『え、お、おう……』
だとさ。
僕は思わず馬鹿に殴りかかった。
「いてててて、ごめんてよるん」
「ごめんですむか! お前、馬鹿じゃないのか。馬鹿なんだろ。馬鹿だったな。でも馬鹿にも限度があるだろ! いつになったら、進展するんだよ。分かりきった結末延々と引き伸ばされて、迷惑被ってる僕の気持ち考えろよ」
「うっ、いや、だってな」
「だってな、じゃない!」
だけど。
うなだれる馬鹿野郎は、さらに落ち込みながら涙目になって悲惨な事のなりゆきを告白してくる。
「そばにいたいって言ったのに「ええ、私も好きよ。これからもずっと仲良くしましょ」が返って来るし。一誰よりも近くにいたいって言ったら「卒業したら同じ職場になれるといいわね」って感じになっちゃうし。それだったら結婚してくれみたいな事もいったんだけどさ「そういう事は軽々しく言っちゃ駄目よって」なんて冗談だと思われるし」
それをきいて、哀れになってきた。
さすがに殴るのはやめてやる。
うわぁーー。
笑いながら思い出し泣きする馬鹿。
お嬢様、どんなシチュエーションでも鈍感をつらぬいてるな。
想像以上に悲惨なシチュエーションを聞いて、ちょっとだけ同情したくなった。