第56話 何か強大な存在に邪魔されてね?
休みの日、その日は珍しくも、いつもの人助け関係のイベントは起きなかった。
だから、その希少な日を活かして、例の問題を片付ける異にした。
例の幼馴染共をけしかけて、デートに行かせることにしたのだ。
だが、騒動啓のフラグはただ息をひそめて、出番が来るのををうかがっていただけのようだ。
近くの町でデートする幼馴染達。
その中で、馬鹿が持っていた袋をごそごそしはじめた。
「じっじつはプレゼントがあるんだけど」
「どうしたの? そんなにかしこまっちゃって」
視線の先では、馬鹿が頑張ってお嬢様に似合う帽子をプレゼントしようとしていた。
見るからに好機。
いい雰囲気になりかけていたのだが、そこで、まさかの、事件発生。
「おうおう、いいところのお嬢さんじゃねーか。持ってるもん全部おいてきな」
「おにーさん達や刺しいからよ。全部ざいさん渡してくれるだけで助けてやるっていってんだ」
「あーん? なんだその反抗的な目は」
どこから湧いてきたのか、と思う様な素行の悪い連中が幼馴染達をかこみはじめた。
あとはもう、想像できるだろ?
いつものように、ふってわいた騒動の解決に奔走したというわけだ。
え、僕?
ついていってなんてないけど?
後日たまたま近くを通った恋バナ好きの同級生から、事のあらましを聞いただけだよ。
その時は、生徒会の仕事に忙殺されてたんだよ。
確かにあいつらは、幼馴染だけど、だからっていつも一緒にいるわけじゃないんだ。
最近はちょっと自制がきいてきたようだし、際限なく難事に首を突っ込むこともなくなったから、ちょっとくらい見てなくても大丈夫かなってな。
で、あの幼馴染達の恋路の話だ。
あの馬鹿とお嬢様は、一緒にピンチを乗り越えたというのに、何も芽生えていないようだ。
せめてお嬢様に恋心を自覚させるところまではもっていけよな。
柄の悪い人間達に囲まれて乱闘騒ぎになって、その後えん罪なつりつけられそうになったら、かつ小一時間くらい逃避行して、目撃者捕まえて自分達にかかったえん罪を晴らしてもらって、途中で見かけた困ってる人助けて、最後に犯人捕まえて。
なんて事二人でやったらしいのに、なんで何も進展してないんだよ。
せっかく二人きりにしたのに。
僕はクラスの放課中に、プリントをあつめにいった馬鹿の頬をおもいっきりつねった。
「いてててて、あにすんだよ」
「おい、女顏」
「おい、お前みたいな呼び方すんなよヨルン。夫婦か」
「おぞましい事いうな。僕が聞いた話の中で、あのお嬢様が一人で無法者集団につっこんでったってストーリーがあったんだが?」
「あたりだ。いやーたくましいよなー。惚れちゃうぜ。あっ、俺もう惚れてたんだった」
「いやーたくましいよなー。じゃないだろ、何呑気に観戦してるんだよ。そこは男のお前が体はるもんだろ」
「うっ、だって、一般市民が巻き添えになりそうになってたのを守ってたら、何か知らない間に役割分担ができちゃってたんだよ。あっちが敵に突撃してたんだよ。で、こっちは防衛の方にまわってた」
「ここまでくると逆に運命の神、邪魔してるんじゃないかそれ」
気まずげにしている所をみると、一応マズいとは思っているようだった。
しかし状況が修正を許さなかったと。
逆にもう、多いなる者の意思でも働いていると考えた方が納得できそうな有様だった。




