第53話 恋の時期になる幼馴染達
僕には二人の幼馴染がいる。
一人は可愛いらしくも真面目で向上心の高い貴族令嬢の幼馴染。
で、もう一人はあんぽんたんで馬鹿たれで、よく考えない平民の幼馴染。
そんな二人は最近色気づいてきているらしい。
最初は馬鹿だけが恋の病を発症させていたが、次第にお嬢様も発症の傾向がみられるようになってきた。
「あれ? ひょっとしてこの気持ちは恋?」みたいな奴だ。
学校の授業の最中、教科書貸し借りしたり、勉強を教え合ったりしている時に、変化がみられた。
具体的にいうと、今までより馬鹿が赤面したり、恥ずかしがったり、恰好つけるようになった。
でも、お嬢様は天然だったから、馬鹿が色々なアピールをしても気づかない。
格好つけたり、恋心をあらわにしたりするたびに、「いいお友達」発現とか「かまってほしいなら後でね」発言が出てしまい、ダメージを受けている。
お嬢様、そういうのには鈍いけど馬鹿には普段から特別な態度なんだよな。
なんだかんだいって、信頼してるし、頼りにしてる。
でも、どっちも互いの事を好きあってるのに、全然仲が進展しないもんだから、見ててイライラしてくる。
しかしそれでいて「頼りになるわよ」とか「俺の背中を預けられる存在だな」みたいに無自覚にピンクをふりまくからタチが悪い。
急に空気に濃い糖分をまぶされると、息できなくなるだろ。
見てるこっちの胸が焼けてくるんだよ。
で、そんなだから、誰に頼まれたわけでもないのに、ついついお節介を焼いてしまう。
でも毎回フォローするのもすごい面倒臭くなるんだよな。
「なあ、ヨルン。どうしたら振り向いてくれるかな。この間(異性として)好きって言ったら、普通の態度で(友達として)好きって返ってきたんだ」
これだよ。
あきらかに前途多難な坂がそびえてるじゃん?
僕は別に恋愛相談だいすきな人間でも、それに詳しい玄人でもないんだよ。
クラスの中には、そう言うのが好きな奴、大抵一人か二人いるから、そっちの方に放り投げておきたい。
でも、変な奴にまるなげして、興味本位でおちょくられるのは可哀そうだし、余計な事でこじれると僕に被害が競うでこわい。
生徒会室で作業している僕の横。
手伝いに来たっていったのに。こんな時でも、遊びに来た馬鹿の頭の中はお嬢様の事でいっぱいらしい。
「なーヨルンヨルンヨルン。どうすればいいと思う? 好きって気づいてもらうにはなにすればいい?」
だぁああっ。うっとおしい! お前らさっさと付き合えよ。