第51話 救いに来た不審者
闘志と気力はあるが、それだけ。
体力はすでに底が見え始めている。
力は及ばず、運にも見放された。
絶体絶命かと思った。
だが、その時。
「勉強の時間になっても部屋にいねぇと思ったら、こんなところで油売ってやがるのかよ」
男性の声がした。
たまに、幼馴染(お嬢様)に向かって「やられる前にやれ、気力でまけたら死ぬ」みたいな戦闘の心構えを教えくさっているあの野郎、不審者だ。
お嬢様のお屋敷に居候しているあの、とにかく怪しい男性がここにいた。
「正義のためだって言うんなら、乱獲して生体バランスを壊した人間なんぞ、見捨てる方がいいんだろうがな」
なんでか知らないけど、めっちゃ腕が強くて、俺達三人がたばになってもかなわない実力を備えている。
けど、今は助かった。
こいつなら、この群れ相手に数分くらいは持ちこたえるだろ。
よし、こいつなら心が痛まないから、囮にして逃げよう。
尊い犠牲(予定)に心の中で手をあわせる僕だったが。
「今から、この不良ガキに説教してやるからよ。犬っころはお呼びじゃねぇんだ。とっとと失せろ」
その瞬間、おぞけが走った。
具体的に何かがかわったわけじゃないけど、殺気みたいなのを感じた。
えっ、僕お嬢様みたいに殺気を感じられるようになったのか。
まだ人間でいたいんだけど。
そんなしょうもない事を考えていたら、敵に異変が。
『きゃいん。くーん。わうっわうっ!』
子犬みたいになってた。
そしてぶるぶる、震え出す。
あの不審者が白狼をにらみつけたとたん、状況は一気にひっくり返った。
白狼が、おびえた声を出して、しっぽ巻いて(文字通り)逃げていったからだ。
え、助かったの?