第46話 僕を数に入れるな
ドラゴンって、勇者でも騎士でもない人間が挑むようなもんじゃないだろ。
っていうか特異型の魔物だって、普通の魔物より数倍強いんだろ。
お願いだから考え直せよ。
危険なんだよ。
主に僕が。
「僕は反対したからな。絶対反対したからな。責められても僕はお前らの事かばわないからな!」
「ぶつくさ言いつつも、付き合い良いよなヨルンって」
「ヨルンは良い人だもの」
しかし、この幼馴染達は筋金入りのあんぽんたんだった。
説得失敗。魔物討伐に付き合わされた。
けれど、幼いころから、木刀だの剣だのを携えて、魔物をばったばったとなぎ倒してきた二人は、さすがにそんじょそこらの連中とは力量が違った。
魔物は見る間に、討伐されていく。
こいつらへたなおとなより強いからな。
この間は勇者にも勝ってしまったし。
それで増長してるんだろうか。
いやいつも通りか。
目の前でまた魔物がやられた。
「えいっ、おとなしくやられて!」
『ギャアァァァ』
お嬢様の衝撃派で吹き飛ばされていくギガトレントの群れ。
僕はそれを見学するだけの置物だった。
そこに新手がやってくるが。
「とりゃ! 俺達と勝負だ!」
『グォォォォ』
次の瞬間、地にひれ伏すゴールドドラゴン。
もう、めちゃくちゃだ。
こいつらどこまで強くなるつもりなんだよ。
人間やめてると思ったけど、さらに生き物やめてくレベルになってるよ!
二人に付き合わされて、なくなく腕が上達してしまった僕とは、色々と次元が違う。
あれこれつっこみを入れている間に片付いたようだ。
お嬢様が額に浮かんだ汗をぬぐう。
「ふぅ、これで全部片付いたわね。汗かいたらノドがかわいてきちゃった」
「じゃあ、俺の水筒やるよ。これでもう終わりだよな!? 俺が一番やっつけた数が多かったぞ!」
僕がぜーはー言ってる間に、十とか二十とかの数を片付けてしまっているんだから、色々人間のできがおかしい。
しかも、余力もあるらしい。
「お前ら元気だな。百体以上は倒したって言うのに」
ちなみに馬鹿らしくなったので、二十以上はカウントしていない。
けど、今までの感でなんとなく討伐数が分かってしまう。
たぶん累計だと、二百は超えてるんじゃないか。
お嬢様が倒した連中が起き上がらないか念入りにチェック。
「けっこう多かったわね。先生が言ってたわ。一匹見つけたらたくさん出てくるって、魔物って本当にそうなのね」
「何か違うの混ざってないか。んー、でも確かにたくさんいるよな。ここ。帰る時も、また出会いそう」
馬鹿は素材になりそうなのをはぎとっている。
こいつらのレベルに、ついてけない。
僕はその間周囲を警戒。
「もう、帰るぞ。これ以上ここにいたら、他の魔物が寄ってくる!」
退治した魔物の血の匂いで他の魔物が寄ってくる、なんてことはよくある事だ。
だから、早めにこの場所から離れたかったのだが。
「えっ、いいじゃない。それだけ討伐すればみんなのためになるんだから」
「だよな! 俺達三人がそろってれば、どんな奴が来たってらくしょーだろ!」
との発言だ。
正気を疑う。
僕を数に入れるのやめろよ。
後ろでぜいぜい言ってるのが見えないのか。
こいつらやっぱ、調子乗ってんな。




