第43話 新しい武器
進級テストに向けての準備は、ほぼなされたといったいいだろう。
後は、最後の仕上げとして武器を新調するだけだった。
お嬢様は貴族だから剣の調達には困らないだろけど、僕と馬鹿の剣はお古だからな。
困っている人の手助けをしたついでに、自警団とかであまった剣をもらった奴だから、そろそろ新しいのに代えないと折れる。
そういうわけで、僕は馬鹿と一緒にそこそこ名のある鍛冶師の元を訪ねた。
前に、地元であった空き巣事件を解決した際、盗まれた鉱石を返しに行った時、知り合った顔だ。
「おう、ヨル坊。それに、お前らか。剣が必要なのかい?」
「テストに備えて武器が必要なんだ、予算にあわせて丈夫な奴をつくってほしい」
「時間かかるぞ、間に合うかね。いつまでだ?」
僕達が目的と期間を話すと、その鍛冶師は快く応じてくれた。
金額も半分ほどでいいといってくれたから、かなりのサービスだ。
お手伝いで蓄えたお駄賃が八割ほどふっとんだけど、これなら何とかなるだろう。
馬鹿とお嬢様にまきこまれて人助けしていると、意外に結構なお金がたまってくるけど同じくらいへってくんだよな。
無茶苦茶やって壊した品物の弁償代とか。
けがの手当て代とか。
薬は高価だから、一回でかなり飛んでくのが痛い。
唾つけときゃなおるとか言ってるけど、ばい菌でも入って悲惨な事になったらどうするんだよ。
それで、数日後。
武器ができあがった。
年甲斐もなくよろこんでる馬鹿は、その武器に名前をつけていた。
「絆。よし、絆にしよう」
馬鹿らしい安直な名前だな。
「ヨルンはどうするんだ?」
「お前じゃあるまいし、名前何てつけるか」
まあもしつけるとしたら、苦労人とかだろうか。
……。
やめとこ、なんか余計気分が暗くなりそうだ。
幼なじみ達がばかやるたびに出番があるからとかいって、そのうち武器に感情移入して話しかけてしまいそうだ。