第38話 テストの相手決定
そんな中、お嬢様が相談相手に選んだのはあの不審者だった。
うげ。
屋敷に集まった僕達は、今だ居候し続けるその不審者に質問していた。
すっごく不本意だけど、こいつ知識は一応あるからな。
やつは屋敷へ持ち帰って来たリストの中、とある名前を指示して答えた。
アルバレス・カウルとかいうやつだ。
「そいつが一番戦いやすいはずだ。そいつの癖は、お前らでも見抜ける」
「そうなんですか?」
純粋なまなざしで頷いているお嬢様と、対照的に腑に落ちない様子の馬鹿。
「なあ。この人がヨルンが言ってる例の人か?っていうか、この人まだこの屋敷にいるんだな」
それで、なんかお嬢様と不審者が仲良くしていると、心がムズムズするとか言い出した。
恋の病、発症かよ。
でも、様子を見るにまだ自覚する段階ではないらしい。
「進展がなさそうな難しい病だな」
「何か言ったかヨルン」
「何でもない」
こいつらの恋の行方なんか知った事か、好きにやってくれ。
そんな平和な悩みは、テストが終わった後にしろ。
で、平和じゃない方の悩みに知恵を注ぐ。
とりあえず戦うべき相手の目星はついたのは朗報。
後は相手の戦い方に応じた作戦を立てるだけだな。
勇者となると、色々な所で活躍してるだろうから。資料集めが楽でいい。
騙されてるって事はないよな。
まあ、それは調べればわかる事だな。
あとは、やっぱり訓練の日程を組まないとだよな。
今まで対人戦もそれなりにこなしてきたけど、ちょっと弱い奴とか三下ばっかりだったから、もっと格上の奴と戦っておかないといけない。
学校の教師にでも頼むか?
でも、幼馴染達の成長がちょっと化け物じみてきてるからな。
馬鹿は、素早く動くと残像が残るようになったし、お嬢様は剣から衝撃波が出る。
こんな奴らとの訓練に付き合える奴等いるのかよ。
僕?
つきあえないよ。
残像も残せないし、衝撃波だって出ないんだから。
パーティー戦ではしゃしゃり出ずに、大人しくフォローに徹してるよ。
すると、いつもはお嬢様が何かお願いしても消極的な姿勢で「頼るな」とか言ってる不審者が驚きの提案をしてきた。
「練習相手が必要なら、俺がなってやる」
は?
えっ、何この展開。
どういう風の吹き回し?