第37話 勇者と戦え
秋の季節が足早に駆け抜けていった頃。
三年生になるための、進級テストが迫っていた。
学年に在籍する半分が落とされるという事で有名な、鬼畜なテストが。
現役勇者とパーティーを組んで戦って、善戦せよ。
だ、なんていう聞くだにやばそうなテストが。
二年になる時のテストも相当苦労した、だから早めになんとかしないといけない。
とりあえず、やるべき事は決まっている。
まず、パーティーを組む。
ここが一番重要だな。
勇者にありあわせのパーティーで挑むなんて論外だ。
だから、どんな戦い方をするか知っているやつと組まなければならない。
その点、僕達は楽だよな。
「おい、馬鹿、あとお嬢様。やる事は分かってますよね」
「うん? 何だヨルン、何か困った事でもあったのか?」
「どうしたのヨルン? 相談ならいつでものるわよ」
「……進級テストの事だよ馬鹿たれ。お嬢様も一緒になって馬鹿とボケてないでください。割と重要な問題ですよ」
頭はこんなだけど。
戦力には恵まれてるんだよなぁ。
テストの時は、僕と幼馴染(お嬢様)と幼馴染(馬鹿)で組めばいいんだから。
上限人数は四人だったけど、いつも三人で行動していたから、少なくてもこっちの方がやりやすい。
むしろ余計な一人を入れると、連携が崩れる恐れがあるな。
メンバーが決まったら、どの勇者に挑むか考えなければならない。
作戦を立てるのは、その相手の実力を知ってからだ。
僕は、テスト用に用意された勇者のリストに目を向ける。
生徒会でも作成したリストだ。
一応先に目を通していたけど、知らない奴ばっかりだな。
まあ、有名な勇者が学生の相手をしたら、僕達が木っ端みじんになってしまうだろうし。
そもそも学生相手に剣を交わすなんて、そんな暇はないだろう。
「へー、勇者ってたくさんいるんだな」
「三十人くらい? よね。 こんなに私達のテスト相手になってくれて大丈夫なのかしら」
「近頃は、魔物の活動が一時的に控えめになっているみたいですから、遊ばせる戦力が多めなんでしょうね」
そこに記されている者達は、学生の相手をするくらいだから、まだ勇者になって日が浅い者ばかり。
だけど、気を抜く事はできない。
「情報収集してから決めた方がいいけど、申請は早い者勝ちだ。どこかに勇者と知り合いの人がいればいいんだが」
指名した勇者がダブった場合、早く声をあげたパーティーの要望が優先される。
悩みどころだった。
貴族なんかは社交界でたまに勇者と顔を合わせるらしい。
この学校にはそういった生徒も多く通っているから、聞き込みをするという手はあるが。
「有利に戦える勇者の情報なんて、ライバルに教える前に、自分達でさっさと申請するだろうしな」