第36話 ダメだこの子。僕がしっかりしておかないと…
後日、そんなことを幼馴染(馬鹿)に話したら「えっ、俺も確かめに行かなきゃ」となったが、鬼軍曹先輩に捕まって修行にかかりっきりになってしまったので、当分先だろう。
これ、僕が頑張るしかないのかよ。
地味に頼りにしたかったんだけどなぁ。
あてにしていた戦力が欠けるのはかなり痛い。
「ヨルン! いらっしゃい!」
それで数日後。お嬢様の屋敷に遊びに行くと、部屋の窓から顔をのぞかせて手を振ってくれた。
訪問する時間はいつも決まってるから、たまに窓からああやって様子をうかがっている時があるのだ。
そういう所は、なんか年下の妹になつかれてるみたいで可愛い。
僕はそれに手を振り返すのだけど。
何か、後ろにあやしいのがいる。
そのあやしいのは、お嬢様の首に手を回そうとしていた。
「う、後ろ後ろ!」
あの例の不審者だ。
お嬢様の屋敷で世話になっている、あの陰気で、後ろ向きで、ひねくれもので負け犬っぽい奴。
僕が必死に警告してやってるのに、幼馴染(お嬢様)はかわいらしく小首をかしげるのみだった。
危機感、仕事しろ!
で、そうしている間に不審者が、がっとお嬢様の首を掴んだ。
お嬢様が、絞め殺される!
絞殺された死体を脳裏に思い浮かべた僕は全力疾走。
使用人やご両親にいつもしている挨拶もせずに、慌ててお嬢様の部屋に向かった。
けど、部屋の中に行くと。
「もう、あれくらいで落ちたりしないわよ!」
「……」
「窓からおっこちるなんて、子供じゃないんだから」
「子供だろ」
「子ども扱いしないで!」
なんてやりとりがあった。
いや、あれ絶対殺そうとしてた。
絞め殺そうとしてた。
この不審者、しらばっくれてるな。
僕が来たから、慌てて犯行をやめたに違いない。
「ヨルン、どうしたの? そんなに怖い顔して」
「(こいつ絶対後で殺す)……いえ、何でもありません」
僕は新たに心に誓った。
どんな方法を使ってもいい。
このやばい不審者を幼馴染(お嬢様)の屋敷から絶対に追い出してやると。
結局その努力が実らず、それから何年も居座り続けることになる不審者と、あれこれ騒動が起こるのはまた別の話だ。
馬鹿の称号・ランク こなれた魔物ハンター。お手伝い屋さん、弱い物いじめ討伐者、お嬢様がピンチだよ「A」
お嬢様の称号・ランク こなれた魔物ハンター。天然記念物よろず屋 正義の執行者(※ただし優しい)、危機感ヤヴァイ「A」
僕の称号・ランク かけだし魔物ハンター、お世話大好きマン、実力派みならい商人、大大大苦労症、不審者お掃除係 「B」
一言コメント「人間関係に注意! 少しの油断から関係にヒビが入るでしょう。一人で悩まない、これ大事! BY女神」