第34話 色々とやばい不審者
その日から僕は、不審者を貶めるべく、隙を探す事にした。
幼馴染(お嬢様)の屋敷に通う不審者は、やっぱりやばかった。
まず挙動がやばい。
「あ、どこから入り込んできたのかしら。刺されたら大変だわ」
「こいつが邪魔なのか」
お嬢様の部屋にハチが入り込んできた時、あいつが手を振っただけで、気が付いたら下に死骸が落ちてた。何それ、どういう理屈でそうなってんの?
そして言動がやばい。
「先生には、座右の銘とか信条とかあるんですか?」
「……そんなもんねぇよ。正義のために友人きったくらいだしな。なかなか死なねぇ」
人きったとか言ってるし、友達もきってるし。きった後も眺めてたっぽいし。
やばい奴確定じゃん。
後は視線もまずい。
「先生はいつも寂しそうな視線してますよね」
「この顔つきがいやなら追い出せばいいだろ」
「そうは言ってません」
「素性も分からない人間を置いといたら、知らねぇ間に、テメェを切るかもしれねぇぞ」
「先生はそんな事できるくらい元気じゃないでしょ? 泣いてる人を、一人ぼっちにさせたくないもの」
「んなわけねぇだろ。甘ぇ事いってんじゃねぇ」
お嬢様を見る目がなんだか、憎々しげだし。凝視してるし。なんか、すごい物言いたそうににらみつけてる時あるし。目つきするどいし、怖いし。
あ、何で僕こいつ嫌いなのか分かったかも。
お嬢様の甘さにつけこんで、ずっと甘えた態度でいるのが腹立たしいんだ。
世の中にはもっと不幸な人間がいるんだよ。
いつまで自分より弱い人間に甘えてんだ。
うじうじしてるやつって僕あんまり好きじゃないっぽいな。
意外な点を発見してしまった。
日ごろつきあってる人間はみんな、底抜けに明るいし、能天気だから気が付かなかったのかも。
まあ、昔の僕に対する自己嫌悪もまざってるのかもしれないな。
馬鹿とお嬢様に出会う前は、ちょっとした臆病ものだったし。