第33話 普通と常識を疑ってみた
子供は皆、充実した時間を過ごしているようだった。
「何か裏があるに違いない、それでお嬢様を罠にはめようとしているんだ」
「ヨルンったら、また先生の事を悪く言って。先生は良い人よ。どうしてそんないじわるばっかり言うの?」
で、そんな負のつぶやきを垂れ流していたらお嬢様に怒られてしまった。
もしかして僕は幼馴染(お嬢様)に焼きもちを焼いているんだろうか。
だから、受け入れて当たり前の普通の光景を、受け入れられないでいる?
……とか?
ひょっとして貴族の世界では、こうやって見るに堪えない哀れで可哀そうな生き物に施しを与えてあげるのが普通だったりするのだろうか。
視線の先、幼馴染(お嬢様)は不審者(暫定)と話に華を咲かせている。
「先生、昔は騎士だったんですよね」
「だったらなんだ」
「任務で、いつも悪い奴をやっつけてたんですか?」
「良い奴も切った。簡単には死ななかった」
「え? どうして?」
「……」
「綺麗事ばかりじゃやってられねぇんだよ。温室育ちの貴族のお嬢サマにゃ、分かんねぇこった」
理解する? なれあう?
やっぱり無理。
こいつ怪しい。
今すぐ消えてほしい。
というか存在ごとしょうめつしててほしい。
気が付かない間にどこか知らない所で死んでてくれないかな。
あいつを消すために自分の手を汚すのもなんか、いやだし。
「お嬢様、今すぐこの人、元の場所に捨ててきましょう。それがだめなら、濡れ衣をきせて牢屋にぶち込みましょう」
「何言ってるの! 落ち着いてヨルン! そんなの、駄目に決まってるじゃない」
何言ってるんですか、あやしい奴を部屋に置いておくことの方が、よっぽど駄目に決まってるじゃないですか!