第32話 目を離したすきに人間やめてた
ウティレシア邸……(お嬢さまの家)の主に挨拶をした後、ある場所へ向かう。
大勢で何かをやる時は、いつも中庭が定位置だ。
皆は何か、中庭に出てやる気を出しながら勉強していた。
簡易テーブルのうえに教本とノート、あるのはそれだけ。
あ、足元に木刀が転がってる。
「あ、ヨルン。聞いてちょうだい! すごいのよ先生って。私の剣のお師匠みたいな事できるの!」
お嬢様すごく嬉しそうだな。
その反面、僕はすごくむかむかしてるけど。
で、中庭で開かれたその即席の勉強会では、雑談から派生して……剣の持ち方とか基礎の型とか教えられていたらしい
お嬢様が「こんなのもできるようになったんだから」と剣から衝撃派を出したりしてる。
ぶわっとしたのが、庭木をゆらして木の葉が舞った。
得意げなお嬢様は可愛いけど、進化がしゃれにならない。
目を離した隙に人間やめないでください。
後は、王宮で用いられている騎士たちの日常、部隊構成なども教えてもらったのか。
嘘だぁ!
「なんでそんなに詳しいんだよ。変質者のくせに」
無駄に豊富な知識をひけらかされた僕は、なぜか負けた気分になった。
打ちのめされていると、一緒にやってきた子供達が紙きれをもって、変質者に話しかけていく。
勉強おしえて、だってさ。
村でも勉強教えるところあるけど、意欲高い系の子供達はそれだけじゃ不満らしい。
お嬢様と馬鹿の活躍で、最近村の子供達の多くが、勇者になりたがっているのも影響しているのだろう。
学校とはあったらいいんだけど、そこまで手を回せる余裕がないんだよな。今のウティレシア領には。魔物の動きが活発になってきて、森から出てくる事が増えてるみたいだから。
視線の先、変質者は面倒そうにしながらも、勉強を教えている。