第28話 内緒で飼ってはいけません
活発なお嬢様は、近隣の魔物相手に腕試しする事がよくある。
それで、幼い頃に痛い目にあったはずの迷いの森へも出かける事があるのだ(普通、そう言う場所にはいかないだろうが、お嬢様は普通じゃなかった)。
で、事情聴取で不審者拾いの事をさらに詳しく聞くと、腕試しで入った迷いの森の中で人間を拾ってきたらしい。
怪我をしてたし、男性が困ってるように見えたので、ここまで連れてきたのだとか。
その不審者は、飲まず食わずで森の中で迷い込んだのだろう。
かなりやせこけている。
それを見てか、お嬢様が厨房からくすねてきたらしい食料が部屋のテーブルにのっかっていた。
他にも、空になった食器がおかれているが、それは普通の昼食。
お嬢様用にはこばれてきたご飯だろう。
つまり。
この拾いもの、内緒だ。
これ誰にも事情説明してないな。
そんな推測を証明するかのようにお嬢様は、部屋の外の様子を気にしながら小声になる。
「お母様とお父様には内緒にしてるの」
僕はもう何度目かになる仕草をした。
頭を抱える。頭痛もしてきた。胃も痛い。心はささくれだっている。満身創痍だ。
本当に内緒でこんな不審者連れ込んでたのか。
「駄目です、ちゃんと言ってください」
「絶対駄目よ、そしたら追い出されちゃうわ」
お嬢様が不審者をかばうようにそいつの前に立つ。
僕の視線を遮っても何の意味もないというのに。
しかし、世間からみたら、自分が悪い事してるって自覚はあったんだな。
「内緒で飼うなんて、絶対の絶対それこそ駄目です。追い出しといてくださいよ。いつまで自分の家の中に不審者を飾っておかないでください」
僕の幼馴染(お嬢様)はとても頑固だ。
だから、意見が衝突すると困ったことになる
まったく譲らない。
とても、譲らない。
あーだこーだ言い合っていると、置き物と化していた不審者が動いた。
「邪魔したな」
そういって窓から出ていこうとする。
いや、ここ三階なんですけど。
お嬢様と同類で常識ない感じなの?




