第27話 お嬢様がやばいもん拾って来た
勇者養成学校の二年生になったころ、お嬢様がやばいもんを拾ってきた。
それは、たまたまお嬢様の家に一人で遊びに行った時の事だ。
見慣れている景色に見慣れないものを見つけて、僕はつい一時停止してしまった。
「……」
「ヨルン? どうしたの?」
お嬢様が不思議そうに聞いてくる。
分からないんですか?
僕じゃなくたってあれには普通、違和感を感じるものですよ。
「お嬢様、あれはなんですか」
僕は幼馴染(お嬢様)の私室でなんかの生き物を見た。
指をさして、間違いがないようにしっかり指摘。
この状況でボケられたら、さすがにキレる。
「駄目じゃない人を指さしちゃ」
「そういう問題じゃありませんよ!」
いや、予想外の方向でボケられたため、結局キレたが。
なんだあれ。なんだあれ。なんだあれ。
この前来た時はあんなもん、なかったよな。
僕はその部屋の中にある強烈な違和感をじっと見つめてみる。
部屋の隅におかれているそれは、よどんだ目で息をしていた。
あまりにも存在を主張しないから、最初は置物だと思った。
でもよく見ると人間だった。
しかも成人男性。
その時の僕の心境。
じーっ(直視中)。
え?
ごしごし(目をこする)
って感じ。
だから、僕はあの不審者について質問したんだけど。
お嬢様は「それがどうしたの?」とでも言わんばかりの態度で、不思議そうに小首をかしげているだけ。
逆に、お嬢様のその反応が「どうしたの?」だよ。
常識とかどうしたの?
頭大丈夫。
馬鹿と違って、お嬢様は比較的まともだったでしょうに。
いや、比較的だから普通と違う面があるのには理解してたけど。
「あの不審者の事ですよ。どうしてこの部屋に?」
「あの人は、拾ってきたの。魔物がうじゃうじゃいる森で」
するとお嬢様はやっと得心が言ったという顔で話し始める。
「おいてきちゃったら、可哀そうだったの」
「そうですか。とても変わった物を拾ってこられたのですね」
「そう? でも、前にもこういうの拾った事あるわよ」
「あの執事は例外です。お嬢様のご両親も噛んでたんですから」
そういえば、お嬢様はよく生き物を拾ってこられる。
傷ついた犬猫鳥などを拾っては、お医者さんのもとにつれていって手当てを受けさせてあげていた。
村の子供達が屋敷の近くで遊んでいて怪我をした時なども、よく拾ってきていた。
数年前には、老齢の執事なんかも拾ってこられていた。
その時はお嬢様の両親も一緒だったので、それを聞いた僕は普通の反応してたが。
「ですけどこれは……」
しかし、視線の先で息してるそれは、そういうのとは違うと思う。
僕はその、なんとも言えない視線で、不満げな表情をしてぶすっとしている男性に視線を向けた。
その服はボロボロだった。
外套で身を包んだたびびとっぽい服装で、腰にはぼろっちい剣をさげている。
頭の髪の毛はぼさぼさだし、無精ひげも生えてるし。
僕は見た時に抱いた感想を包み隠さず伝えた。
へたに比喩的表現で包んでも、伝わんないしな。
「ただの不審者では?」