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お姉ちゃん、見つけた

作者: カラサワ

お姉ちゃんがいなくなっちゃったらしい。

夜中におばあちゃんがお母さんにそう言ってた。お母さんはびっくりして、その後ぽろぽろ泣いちゃってた。

かくれんぼが大好きなお姉ちゃん。かくれるのが得意なお姉ちゃん。

皆お姉ちゃんを見つけられなくて帰っちゃったのかな。

お姉ちゃんかわいそう。

はやく見つけてもらえるといいな。

次の朝、お布団からでると、ふたりともキチンとしたお洋服を着て、忙しそうにお部屋の中を動き回っていた。

お母さんは真珠のネックレスつけていて、お父さんも黒いネクタイに真珠のピンをつけておめかししてる。

僕もお父さんから大事なところに行くときのお洋服を着せてもらった。

お父さんとお母さんと一緒にでお出かけするのはすごくひさしぶり。どこに行くのかなってお母さんを見たけれど、ぜんぜん楽しそうじゃない。

お父さんも何も喋らないでハンドルを握っている。

どこにいくのかな。楽しい気分はどこかにいっちゃった。

車からおりるとお姉ちゃんのお家に着いてた。知らない人がたくさんいて、玄関におばちゃんとおじちゃんがたっていた。

みんなお姉ちゃんのことお話してる。お姉ちゃんのお友達なのかな。お姉ちゃんを探しにきたのかな。

いっぱいいるから、きっとお姉ちゃんもすぐ見つかるとおもう。

ぼくもお姉ちゃんを探そう。いちばんに見つけて皆をびっくりさせてあげよう。

お家の中にも知らない人がいっぱい座ってた。探さないの?それとも見つからなくてひと休みしてるのかな。

ぼくはまずお姉ちゃんのお部屋に行くことにした。せまい階段をあがって、せまいろうかのいちばん奥がお姉ちゃんのお部屋。

お姉ちゃん。入るよ。おじゃまします。

中は真っ暗。電気をつけると机と本棚とベッドがある。お布団がこんもり膨らんでる。

「お姉ちゃん。見つけたぁ」

お布団の下に隠れていたのはクマさんのぬいぐるみだった。

かたんと押し入れから音がして、ほんのちょっとだけふすまが開いたのが見えた。

「お姉ちゃん、ここ?」

ふすまを開くと空っぽの押し入れの中にぽつんとぼくが前にほしいとおねだりしたアニメのぬいぐるみがあった。

きしきしと階段をのぼる足音が聞こえた。お母さんかもしれない。勝手にどこかに行っちゃダメっていつも言ってるから怒られちゃうかもしれない。あわてて押し入れの中にぼくはかくれた。ドアが開く音、お部屋の中をウロウロする足音。しばらくすると聞こえなくなったからぼくはぬいぐるみを抱きしめてお姉ちゃんのお部屋を出た。

階段を下りるとさっきより人が増えていた。なのにみんなお姉ちゃんを探そうともしていない。お姉ちゃん見ませんでしたかと知らない人に聴いてみてもみんな知らんぷりする。

もういいや、ぼくだけで探すから。

おじちゃんとおばちゃんのお部屋の押し入れのなか。いない。

クローゼットのかな。いない。

床下の物入れのなか。いない。

お風呂のなか?いない。

最後はおぶつだんのお部屋に行った。誰もいなくて、少しだけ暗くて、しーんとしてた。

あれ。あの白くておっきいのなんだろう。

ちょうどお姉ちゃんが入れるくらいの箱。

大っきいふたは重くて動かせなかったけど、ちっちゃい窓は簡単に開いた。

「お姉ちゃん、見つけた」

真っ白い服を着て、真っ白いお顔のお姉ちゃんが眠っていた。

「お姉ちゃん、見ーつけたっ」

聞こえなかったみたいだから大きな声でそう言うと、お姉ちゃんはゆっくり目をあけて、

「見つかっちゃった」

ってふふふと笑ってくれた。

「おばちゃんとおじちゃんのところに行こう。みんなびっくりするよ」

ぼくがいちばんに見つけたの、褒めてくれるかな。

「えらいねって言ってくれるよ。でも私、少し疲れちゃったの」

そう言うとお姉ちゃんはまた目を閉じてしまう。

なんだかぼくもねむたくなってきた。

「一緒に寝る?」

お姉ちゃんは目を閉じたままぼくに言ってくれた。

「…うん」

「じゃあ、おいで」

ぼくはちっちゃい窓から中に入るとお姉ちゃんは抱きしめてくれた。

ひんやりしてて気持ちがいい。

おきたらお母さんたちに勝手に動きまわってごめんなさいって言わなきゃ。

でもお姉ちゃんは見つけたから…。


「?なぁ、このぬいぐるみはいつからこの中にあったんだ?」

「さぁ?でもわざわざいれるんだ。彼女のお気に入りだったんだろう」

「そうか。そうだな、こんなに小さな娘なんだ。あの世にひとりでも一緒にいてくれる友達は必要だよな」


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