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お盆明けの最初の休日、ノボルさんと母と三人で家具店へと出かけた。勉強机とベッドを購入するためだ。リサは塾の夏期講習に受けているので、今ここにはいない。高校から出された夏休みの宿題だってあるのに、さらに塾にまで通って勉強しているのだ。時間だって有限なのに勉強の時間をとっている辺り、大変立派だと思う。そんなリサと比べられて、母からはもっと勉強しなさいと言われ、ノボルさんからは塾に通ってみるかと言われたけれども、自分のペースでやりたいと感じているのと、今まで行ったことのない塾なるものが一体どのような場所なのか想像がつかず、勝手が分からないために気後れしているというのもあって、考えさせてほしいと言って保留にしてもらっている。そのうち結論を出す必要があるのだろうけど。
購入予定の勉強机とベッドは配達サービスを使って届けてもらうことになった。アパートの引き払い前には西陣宅に届けられるようで、引っ越したらフローリングの床の上で雑魚寝なんて事態は避けられそうだ。
「リサも塾が終わったところみたいだからこれから一緒に夕飯でもどうかな?」
帰り際、ノボルさんにそう聞かれ、反射的にコクリと頷いてしまう。
空が赤く染まる中、西陣宅の最寄り駅で待ち合わせしていると、白シャツにデニムパンツ姿のリサが現れた。合流してからは、ノボルさんと母が先導し、俺とリサが後ろからついていく。前を歩く二人は腕を組んで、まるで熟年の夫婦のようにふるまい、つい数日前に再婚した者同士だという風には感じられない。
そんな二人の様子を見て、リサが俺の耳元で小さくささやく。
「私たちも腕組んでみない?」
顔を引きつらせながら彼女の顔を見ると、上目遣いでいたずらっ子がするような笑みを浮かべていた。
「その必要なくないか……?」
「そう?でも兄妹だったら腕くらい組むんじゃない?」
小悪魔の笑みを浮かべているから、きっと思い付きで言っているのだろう。それは想像ついたが、流し方が分からず頭痛の時にするような表情を浮かべてしまう。それを見てリサはなお一層ニヤリと微笑んだ。
「初心」
「からかわないでくれ……」
俺のボヤキにリサはくすくすと笑みを浮かべる。その姿に非難の目を向けて抗議した。
「急に俺たちが腕組んでみろ。ノボルさんも母さんも何事かと驚くし、クラスメイトに見られたらそれこそ色々言われるぞ?」
けれどもリサは
「兄妹ってそういうもんでしょって言えばいいじゃない。実際に兄妹なんだし」
と俺の非難をかわし、くすくすと笑みを浮かび続ける。そして突然俺の手を握るものだから慌てて手を払いのけて距離をとってしまった。
その様子にリサは傷ついた表情を見せる、というわけではなく、なお一層笑みを深めた。
「初心だね。ジュンくんは」
心臓に悪いからやめてほしい……。
本日、計五話を掲載いたします。
第六話:7時
第七話:10時
第八話:13時
第九話:16時
第十話:19時
御関心がございましたら、ぜひとも継続して閲覧ください。
次回は5/9に掲載いたします!
次回以降から水土の7時に一話ずつ掲載いたします!