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 日曜日を迎え、リサは昨日と同じように朝早くから学校へと出かけた。文化祭期間中、仕事を割り振られていなければ、自由登校なので、特にやることもなく午前中は別のところで時間を潰すことにした。


 電車に揺られ、何度も来たことがある繁華街へ。まだ朝の十時ということもあって開店していないお店が目立ち、人通りも少ない。リサが高校で頑張って裏方の仕事をしている中、俺は何もないこんなところで何をしてるのだろうと考えてしまう。けれども今日は仕事を割り振られていないし、行ったところでやることも見るものもない。午後にリサと待ち合わせをしているからそれに遅れないようにすればいいかと考え、街をフラフラと歩く。歩いている途中、十時からすでに開店している書店が目に入り、暇つぶしにはちょうどいいかもしれないと考えて中に入った。


 繁華街に構えているだけあって大きな書店でいくつもフロアがある。同い年くらいの男子高校生だとマンガの売ってるフロアに寄ることが多いらしい。けれども、子供の頃から節約生活を送ってきた俺はマンガを読むなんて贅沢なことをしようとは思わず、いつしかマンガを読んでいる同級生を見てお金の無駄遣いをしていると思うようになり、手を出そうとも思わなくなっていた。だから俺は最初に参考書のフロアへと向かった。


 学習参考書のフロアは就学前児童向けの本から大学受験向けの本まで幅広く( そろ )っている。文化祭シーズンの日曜日であるにもかかわらず、フロアには高校生らしき人々の姿が目に映った。中には家族連れで訪れている高校生もいる。その中に見慣れた顔はないけれども見慣れた制服姿の者たちが幾人( いくにん )もいた。恐らく高校に向かう前に寄ったのだろう。似たようなことを考えるやつもいたものだと思い、国語のコーナーへと足を踏み入れる。


 現代文の参考書が並んでいる棚に足を踏み入れて、のんびりと書棚を眺めた。現代文の教科書や入試問題などで抜粋( ばっすい )されている文章は一冊の評論や物語から一部分だけを抜粋して掲載されている。正直、その抜粋された部分だけを読まされても分からないものは分からないと思うこともあるのだけれども、節約して滅多に本を買わない俺にとっては貴重な読書の機会と感じている。教科書や入試問題の過去問を見て、関心が持てたら図書館に行ってその本を借りて読み、関心を持てなかったら別の文章を探す。そんな感じで本を選んできた。


 適当に参考書を一冊とってのんびりと目を通す。高校受験までは国語の問題集に物語からの抜粋もあったけれども、大学受験になると評論からの抜粋が多くなり、あまり物語を見かけなくなった。こういう時くらいでしか、小説のタイトルを知れない身としては正直つまらなさは残る。そう感じたときは、あえて中学生向けの国語の参考書の方へと遊びに行き、目を通すこともあった。


 ダラダラと読んで時間を潰しているうちに、気が付けば十二時を回っている。そろそろ出るかと思ったところ、胸ポケットからピロリンと音が聞こえた。スマートフォンの着信音だ。連絡先を登録している相手は身内の三人しかいないので、誰から来たのかと思いながら開いてみれば、リサからだった。


『一時に教室前で待ち合わせね』


 手にした参考書を棚に戻して『分かった』と返信を送ってから文化祭の真っ最中の高校へと向かった。

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