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 夕方になり、教室内のレイアウトは完成した。保存の必要な飲み物やお菓子の( たぐい )は基本的にない。保冷剤などが必要になる炭酸飲料の類は提供せず、あくまでウーロン茶やリンゴジュースなど、炭酸のふくまれていないものに( しぼ )る。飲み物やお菓子は裏の段ボールに放り込んでいき、とりあえずお店を開くうえで必要となる商品はそろった。


 廣松にお釣りを渡し、周囲を見渡す。ウェイター、ウェイトレス役の生徒たちが執事服やメイド服を試着して互いに見せ合っている。あるものは楽しそうにし、あるものは忌々( いまいま )しそうにしていた。なんとなく前者は女性陣とメイド服を着た女子生徒を見て鼻を伸ばす男性陣が、後者は執事服を着せられた男性陣が多い気がした。自分たちのクラスの出し物なのではあるけれども、俺自身はなぜだか分からないが他人事( ひとごと )のように見えてしまった。


「買い出し、終わりましたか?」


 リサの声が聞こえ、振り返る。買い出しのことで廣松と情報共有をはかっていた。連絡事項をいくつか済ませると、リサは俺の方へと寄ってくる。


「お疲れさまです、ジュンくん。買い出しありがとうございます」


「いや。大したことはなかったよ。俺一人でってわけでもなかったし」


 一緒に買い出しに出かけたメンバーを指さしてそう告げると、リサは彼ら彼女らにも笑みを浮かべ


「ありがとうございます」


と声をかけた。


「ジュンくんは執事をやるんですか?」


 リサの言葉に俺は執事服を着ているクラスメイトを見る。


「……あの服着る気はないなぁ」


 本音を言うと「そうですか」と一言だけ返して止まった。


 リサは教室内の様子を眺めているが、何となく心ここにあらずという風に見える。


「疲れてるのか?」と尋ねると、ゆっくりとこちらを向いて「ほんの少し」と返した。


「このあと美術部の方も見てこないといけないから。あとは生徒会の打ち合わせをやって……。終わるの多分、七時くらいかなぁ……?」

 リサは軽く背伸びを見せて、「もう行くね」と言ってクラスを離れた。彼女の後ろ姿を見て、「大変そうだなぁ」と感じた。けれどもその言葉しか思い浮かばなかったので、何となく自分は冷たい人間なのではないかと感じてしまう。


 リサが居なくなった後、廣松の注目の合図に皆が静かになる。明日明後日のシフトの書かれているプリントを一人一人に渡し、解散となった。俺の予定を見ると、明日の午後丸々在庫管理として入れられている。


 もう確認することはない。( かばん )を回収して、教室を出た。

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