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 むすっとしているところで一通り笑った落ち着いたリサが「ごめん」と笑みを崩さないまま言う。その言葉でも俺の表情は変わらず、そっぽを向く。


「ああもう、ごめんなさいって。悪かったから。お( わ )びに今日の夕飯、私が作ってあげるから」


 リサは謝りながらもまだ笑顔のままだ。俺は何とも言えない感情を抱きながら、彼女の顔を睨みつける。


「もう。機嫌直してよ~」


間延( まの )びした声を出しながら、リサはキッチンへと向かい、冷蔵庫の中やキャビネットの中をあさる。


「この材料だとしょぼいカレーは作れそうだけど」


と考え込むような呟きが耳に入る。


「ニンジンとかじゃがいもとかなかったろ?」


「玉ねぎだけ使ってチキンカレーとか。それ以外だと野菜炒めかなぁ?」


「鶏肉はオーブンで焼いて、キャベツは蒸して、豆腐は( ゆ )でればいいんじゃないか?正直( こ )るほど材料ないだろ?」


「それでも別にいいんだけど……。これだったら帰りにお惣菜でも買って来ればよかったなぁ……」


 そういえば、リサを迎えに行く前に一度俺は冷蔵庫の中を見ていた。それを覚えていれば、喫茶店の帰りにスーパーに寄って買えていたと思い反省する。かといってこれから買いに行くかと言われれば遠慮したいと感じていた。


 相談の結果、オーブン焼きと野菜炒めと茹で豆腐という案になった。リサは一度部屋に戻って着替え、ジャージ姿でリビングに戻り、早速調理を始める。全てを彼女に任せっぱなしというのもどうかと思ったけれども、キッチンに二人いても邪魔なので、


「何か手伝うことあれば呼んでくれ」


と声をかける。


「気にしなくていいよ。ちゃっちゃと作っちゃうから。そういえば白ご飯って残り物なかったよね?いる?」


「今から水吸わせて炊くと二時間はかかるんじゃないか?」


「んー。三十分三十分でかためのご飯にするか、水を多めに入れて炊くかかなぁ」


 俺は立ち上がりキッチンへと向かう。


「かためにしよう」


といって米を取り出して( と )いだ。それだけなら使う場所は洗い場だけだから邪魔にならない。お米を何度か研いでから水を吸わせる。カウンターの上に水とお米の入ったボウルを置いた。隣ではリサがオーブンにアルミホイルを敷いて鶏肉を乗せてオリーブオイルを軽くかけていた。


「マッシュルームとかあってもよかったかなぁ?」


「ないものは仕方ないから、そのまま焼いちゃえばいいんじゃないか?」


「それもそうだね」


と呟いて、鶏肉を二匹まとめてオーブンで焼き始めた。


リサはキャベツをまな板の上で切りながら


「あとのことは大丈夫だから部屋にでも戻りなよ」


といった。ほんの少し気後れしたが、実際ここに居たところで何かできるわけじゃない。テレビを見て時間を潰すのもなんだか偉そうだったので、


「勉強してくる」


と告げて自室に戻った。

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