6.魔王と少女の再会
「人違いですね!」
シエルは明るい声で答えた。
「いやいやいや、儂が魔王なの!お前と戦ったって言ってるだろ!」
「人違いですよ!私の会った魔王さんはこーんなおっきい人だったんですよ!」
「人違わないの!儂、それ儂なの!」
「……」
横から大きく手を広げる少女と小動物の戯れに見えるそれを見守りながら、達巳は終わりの見えない堂々巡りの様子を窺っていた。
「だから、こんな体してるけど儂が!お前と!戦った魔王なんだよ!わざわざ崩れる城からお前達を外に出しておいてやっただろ!」
「えっ、確かにあの時、気が付いたら壊れたお城の外で寝てましたけど……どうして知ってるんですか!?」
「儂がやったからだよ、儂の気遣い!……これで儂が魔王だっていう証明になっただろ!?」
「うーん……でもこんなに可愛くなかった……」
ヴォルホークの両手の肉球をもみながらシエルがやや不本意に認める。
「でも助けてくれてありがとうございますねぇ……」
「お、おう」
「悲しそうに肉球を揉みしだいている……。
ってアレ?じゃあ二人共元々知り合いで、あんまり仲良くなかったんですか?戦ったって……」
達巳は二人が顔なじみなのか気になって聞くと、ヴォルホークは首を横に振り、シエルは悩ましそうに首を傾げた。
「おう、元々は儂を殺しに来た勇者一行の内の一人だぞコイツ」
「えっ、殺っ……?」
達巳は驚いてシエルへ顔を向けると、未だにヴォルホークの掌をムニムニと揉み続けながらシエルが答えた。
「私は魔王率いる魔人がたくさんの人を苦しめていると聞いていたから戦ったんです。
でもこの子が魔王さんなら、人のために身を挺してアラクレイノシシの気を引く、なんてちょっと聞いていた話と違います」
「待て待て、何だたくさんの人を苦しめていたって。
儂は別に略奪とかしてないぞ……悪い噂が立ってるとは聞いたことあるけど、そんなに悪意に満ちてんの。魔王様は超イケメンとかそういうのは?」
「なかったですね!」
少女の笑顔に、肉球を揉まれ続けながら魔王は傷心した。