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第1話プロローグ

「勇者の小僧よ、小僧とは剣を交えたいと思っていたぞ。さあ、主のために死んでもらおうか」


フルフェイスの甲冑の裏でニヤリと笑う見えない笑顔。

早く殺り合いたいと腕がウズウズしていながらも、魔王城のエントランスで待ち侘びていた、血に飢えた己の魔剣を、パーティの主格たる聖剣を持ちし勇者に突き付ける。


その者は黒甲冑の騎士。しかし、間違いなく魔王の下僕である彼は————魔物だ。


血走った目で勇者を睨む黒騎士。突き立てた魔剣にはもう既に前菜を喰らっていたようで、ポタリポタリと赤い血を落とす。


「お前に斬り殺された民の命を、俺は忘れてはいない。一人で片付けてやるよ、下がれ。」


勇者の男が黒騎士の言い放つ。


「勇者!それは危ない!」

「無茶よ」

「......お前ら、これは漢としての戦いだ。勇者意志を......聞いて欲しい。」


僧侶と魔法使いが勇者を止めようとするが、予め勇者から話を聞いていた戦士が肩を掴んで彼女らを引き留める。


「......悪いな」

「ふむ、難儀な小僧だ。さあ剣を早く構えろ」

「......」


勇者は黙って懐の聖剣を引き抜く。その剣は白く、淡い光を放つ。一方黒騎士の魔剣は全てを飲み込むように黒く禍々しい。


「「いざ尋常に、勝負!!」」


二人はそう口にし、戦いの火蓋が落とされた。




先手を取ったのは—————勇者だ。


スピードと体重を乗せた重い一閃。しかし、防御の構えを取った黒騎士に容易に受け止める。


魔剣と聖剣の衝撃は強く、火花は舞った。


黒騎士はその重みで薙ぎ払い、勇者を吹き飛ばす。

体重差により吹き飛ばされた勇者は回転して吹き飛ばされていくが、聖剣を地面に突き立て、衝撃を受け止める。


「いい、重心移動だ」

「くっそ......なんて重いんだ......!」

「仲間を呼んで良いのだぞ?」

「断る!!」


そう拒否した勇者は聖剣で空を斬り、光を纏った衝撃を飛ばす。


「はっ!!」


黒騎士はそれを剣で分散させる程に高速で切り刻む。しかし、その処理出来なかった衝撃を肩へと受けた。


『ジュ!!』っと焼ける音。まるで生身の身体を熱い鉄板押し付けるように、音と不愉快な焦げる匂いが黒騎士の肩へと生じた。

しかし、それに臆する事も痛いと声に出す事すら、黒騎士はしない。


「さあ、全力で来い!!」

「ああ!!死にたくねえなら避けていんだぜ!!」


黒騎士の煽りに乗った勇者は聖剣を上に掲げる。

その聖剣からは高密度の光が溢れ、白い一筋となる。

一方、黒騎士は魔剣を己に突き刺さす。


「なに!?」

「さあ、吸うがいい。魔剣ギシュテルよ!!」


勇者は驚き、光が揺らいだものの、光は集まり続ける。そして黒騎士の魔剣は黒騎士の血を吸い、ブクブクと黒い何かが膨れ上がる。


異形の黒騎士に勇者はその光の一太刀を振り下ろす。


「ホーリーッ!セーヴァアアアア!!」


勇者の叫びと共に、光は黒騎士をも飲み込む。

黒騎士は全身から焼ける音と痛みを我慢しながら魔剣へと血を流す。しかし、勇者の放つ速度は早く、その膨張する魔剣すら焼き殺す。


光が抜けた先。そこには——————







「おぎゃあ、おぎゃあ」


己の意志を無視した産声。

なんだこれは?我が身は、勇者は!


「おお、おおおお!!」

「う.....産まれて良かったぁあ!!」


我を抱えられたのは金髪蒼眼の好青年。コイツは誰だ?その手を止めろ!斬り殺すぞ!


そう思い、声を出す。


「ぎゃぁ〜!」


もしかして、我.......赤子となった?有り得ん有り得んぞ。そんな訳が.......


好青年から上へと持ち上げられ、ある事実を言われた。


「お前の名前はシュテルだぞ」



あたりには金髪の美女がおり、母親だろう。

その他に目に入るものは鏡。すぐさま、その鏡に視点を動かす。



我が......騎士の我が......!!人の子だと!!

おかしい、おかしい。何故だ?それは死んだからだ。何故だ?あの勇者に殺されたからだ。


そう思うながら我は自問自答した。そして落ち着き、ある結論に至る。




この赤子に宿るハズだった魂に心から申し訳ないな。どうやら、ぶんどって転生してしまったようだ。

せめて、親には不気味な子と思われぬよう、頑張ってみるか。

まあ突然、記憶が蘇る事もあるだろうし、せめてこの身体を使わせて頂く代わりに、裕福な暮らしを築いてやろう。


そして、情報収集だ。我が主、魔王様の結末も気になるし、生きていたら力添えしたい。


さて......我が第二の生を華やかなモノへと変えてやるか......!


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