第13話 整体院の常連さん その1
「どうも、こんにちは!」
「いらっしゃい!全身にします?それとも他のところを重点的にやりましょうか?」
バルトさんは、あれから、整体院がやっている日は毎日来てくれている。来たときの雰囲気も、だいぶ打ち解けてきた。
「そうだな、じゃあ今日は、背中でも押してもらいますか。」
「はーい、どうぞ!」
あのおっさんがやって来たとき、私をかばって立ってくれたバルトさんは、抜き身の短剣を構え、強い殺気を放ちながらおっさんに向けて一歩、踏み出した。それだけでビビったおっさんは、ほうほうのていで退散し、それでもってバルトさんは剣を収めて、私を振り返った。
『また、このようなことがないとは限らない。自衛の手段を覚えるのもいいけれど、まずは助けを求める手段を持ちましょう。』
そう言って、私とフレンド登録をしたんだ。あのときのバルトさん、かっこよかったなぁー。
そんな回想をしいしい背中をぐいぐい押したあと、バルトさんはニコと笑い、
「また来ますね!」と告げて帰っていった。
次にいらっしゃったのは、これまた常連になりつつあるイリーさん。明るい水色のロングヘアに真っ赤なチャイナドレスがとても似合っていて、活発な印象を受ける。性格も明るい。
「今回は、肩周り、お願いします!」
そう言って、施術台にポンと身を投げ出す。
こんなに明るい人なのに、昔はかなり悩んだことがあったらしい。詳しくは聞かないけど、お兄さんがうんたらかんたら、とか言ってた。ちなみにお兄さんもこのゲームのプレイヤー。今はパーティーの方が忙しいようで、まだ来ていないけど、時間があったら行ってみる、というようなことを言っているそうだ。会ってみたいなぁ。
「ありがとうございました!肩、すっごく軽くなりました!」
そのあとは、新顔さんが二人ほどいらっしゃって(会話から察するに、どちらもイリーさんのお兄さんではなかったようですが)、最後にいらっしゃったのはこれまた常連のジョーさんでした。彼は、今のところ一番大きいパーティーに所属している方。苦労も多いと聞きますが……。
「はあぁー……」
今日は、お店に着くなり深いため息。何かあったのかな?
「……今日の午前中に、ウチのパーティーに入りたいって言う人が来たんですよ……」
ジョーさん、悩みが口をついて出てくるタイプなので、根掘り葉掘りとか、変な勘ぐりとかをしなくて済んで、ありがたい。
「戦闘希望ってことでしたけど、正直戦闘はそこまで向いているように見えないというか……、もうウチ、そっち系はとっくに飽和してるんで……。それで、ウチのボスが、ゴールドベアを倒したら入れてもいいって言って……」
「ゴールドベア?」
「ああ、北の森に出るっていう、金色の熊です。現状弱点が見つかってなくて、かなり強いとか……。そんなんにあんな娘が立ち向かっていって、勝てるわけがないでしょう……。俺もボスに同調するようなこと、言っちゃいましたけど、本音を言えば、あそこまで手ひどい形で追い返さなくたって、説得して薬師に仕込むなり、ゆくゆくは出てってもらうにしたって一通り教えるなりすればいいのに……。」
なるほど。ジョーさん、パーティーの中では強気に振る舞っているけれど、本当はそういう排他的な空気が嫌だったのかな。
「少し軽くなりました、ありがとうございました。」
去っていく金髪の男性を、私は深く頭を下げて見送った。それから、ドアに「CLOSED」の札を出した。ジョーさんが帰る頃には、もう閉院も近かったのだ。
しかし、その、ジョーさんのパーティーが追い返したっていう子、大丈夫なのかな……?
何だかモヤモヤする。それを振り払うように、私はアオバに変身し、北の森を指して駆けていく。




