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第11話 棚を探索しよう!

あれからぽつりぽつりとお客様がいらっしゃって、応対しているうちにいつの間にか閉院時間になっていた。あっという間だね。やっぱり整体師、天職かも。

一夜明けて、今日は日曜日。早めにログインできたので、開院の準備をしても時間が余った。アオバとして、暴れまわってもいいんだけど……ちょうど長短の刀のセットも出来上がってるころだし。でも、今日はそこまでそういう気分じゃないし、何より最近興味が出てきたものがあるんだ。施薬室にある、あの棚だよ。攻略した直後に、一度だけちらっとのぞいた。あそこ、薬のレシピのほかにも何かあるかもしれないし、使えそうな薬も見つかるかもしれないし。これは見るしかないでしょ!ヒアウィーゴー!


施薬室には大きな棚が右と左に合わせて二つあって、その奥に少し広めのキッチンみたいな設備がある。右の棚には、調薬器具らしきガラス瓶や鉄鍋、それから瓶詰めにされたいろんな粉末や、紐でまとめられたキラキラ光る鱗なんかがある。まずはこっちから行ってみようか。

そして、器具や瓶詰め素材の説明を、次々読むこと30分。ショウガとかニンニクみたいに、現実世界にあるものも入ってた。説明を見るに、モノは現実と一緒かな。面白かったのは、手に持つと、倦怠感と引き換えに水中呼吸ができるようになる人魚の鱗や、飲むと体が暖かくなってパフォーマンスが向上するけれど、飲みすぎると熱でダメージを食うというサラマンダーの背骨の粉末。あ、あと天使の羽根なんていうのもあったな。ランドセルじゃなくて、でっかくて真っ白い鳥の羽根みたいなのだよ!で、どういう効果があるのかというと、手に持つと宙に浮ける。これだけ。面白そうと思って使ってみたけど、空中移動とかはできないし、ただ浮遊できるという、それだけの代物。まあ素材だからこんなものかな。そうそう、クロウバタフライの鱗粉もあったよー。

右の棚はこれくらいにして、次は左、行ってみようか。こっちには本や紙の束がどっさり。紙の束は、薬のレシピ。ひと通り見てみよう。……おや?「癒しの茶」?効能は……HPの若干量の回復とリラックス効果。お、いいねえ!恐らく慢性化した疲れに悩むお客様にお出ししたら喜ぶだろう。私でも作れる、かな?ただ材料混ぜてお湯で煮出すだけだし、楽勝でしょ!

まず指定されている材料を棚から出す。ショウガとカモミール、ネイチャーヒーラーという薬草、レイドロップという何かの果実。これらをすりつぶして混ぜ合わせ、ティーバッグに入れ……あれ?ティーバッグが見つからない。ま、薄い紙がなくたって成分は変わらないしね!

そして湯に入れ、3分煮出す。

でけた!

薄い緑色、きれいだなー。さっそく飲んでみよう。

……あれ?変に青臭くってザラザラする。味もない。リラックスどころかストレスだよ、こんなの飲まされちゃあ。お客様にはお出しできないね。

癒しの茶のことはすっぱり忘れて、今度は本に手を伸ばす。「人体ツボ大百科」という本があった。パラパラすると、人間の体の絵に、これでもかと点々が描かれ、ツボとして解説がある。

「……んお?」

その中の一つに、私は目を奪われた。

すぐさまくノ一の衣装に手を伸ばし、壁の時計を見上げた。開院時間まで、あと少しだった。

……あーあ。


表に出ると、もうバルトさんが待ち構えていた。「OPEN」の札を出すと、すぐさま店に入ってくる。

「いやあ、また来ちゃいました」

黒い長髪を背中で束ねた青年は、そう言って快活に微笑んだ。

「この間話した、クロウバタフライの鱗粉が結構まとまった額で売れまして。お金に余裕があるから、今日は全身、お願いします!」

「わかりました、こちらにどうz……」

そこで扉が乱暴に開き、ハゲかかった小太りおやじがドカドカ入ってきた。

三白眼がぎょろりと動き、私の姿をとらえる。

「お前、ここの店主だろ?」

「はい、そうですが……」

ようやく思い出した。例の雑魚いおっさんだ。

「アオバを出せ、アオバを!」

「……はへ?」

「だから、アオバを出せっつってんだよ!あいつからここの鍵を受け取ったんなら、フレンド登録の一つや二つ、してるんだろお!?オラ、出せ、出せ!」

恐らく、こいつをのすのは簡単だ。しかし、その最中の動きで、コユキがアオバであることを感づかれるかもしれない。そうなったら、私のそもそものこのゲームの目的がおじゃんになってしまう。つまり、今の私ではこいつを倒せない。コユキ、絶体絶命!

と、何もできずに固まっていたら……。


「おや、僕が先客だったはずですがね。」

視界が、大きな背中にさえぎられた。

バルトさんが、小刀に手を掛け、おっさんの前に立ちはだかっていたのだ。

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