見知らぬ場所にて
気がつくと自分はよくわからない場所に立っていた。
例えるなら辺り一面どこまでも続いていきそうな星空の中。暗い中に点々と輝く星の光、時折流れている流れ星、そんな場所の中心(?)にいると思うとなんとも言えない感情が込み上げてくる。
この神秘的な場所をもっと楽しんでいたかったがそうもいかず冷静になるにつれ先程までの状況を思い出してしまう。
崖から落とされ、おびただしい量の血を流すと同時に自分の体を貫通している木の枝。そんな自分の様を思い出すと吐き気がこみ上げてくると同時に、やはり自分は死んだのではないかと考える。あの状況で助かる可能性は皆無と言っても過言ではないだろう。
何故そんな状況だったにも関わらず今の自分はこんなにも平気なのか。神秘的な場所ではあるがやはり見たことも聞いたこともないようなこの場所。考えれば考えるほど謎は深まっていく。しかしその時、
「君が星海 楓人君だね?ようこそ、君が来るのをずっと待っていたよ」
背後から唐突に自分の名前を呼ばれ、焦りながら振り返ると少し上からゆっくりとこちらに降りてくる女性がいた。しかもただの女性ではない。驚く程の美女だ。
くっきりとした輪郭でとても整った顔立ち。
パチパチさせた大きく引き込まれそうな碧眼。
背中まで伸ばした艶がありふわっとした綺麗な銀髪。
豊満な胸、だがしっかりと引き締まったボディ。
パッと見だが身長も女性にしては高い。
この世の女性を褒める為の言葉はこの女性の為だけに作られたのではないかと錯覚してしまうほど美しかった。
その女性が自分の近くまで来ると羽織っているローブとその特徴的な髪を靡かせながら着地する。近づいてくるなり自分の顔を覗き込んだりふむふむと言いながら自分を中心にくるくると歩き回りながら観察してくる。
「ほーほーほー。君がねえ〜。へぇ〜」
「……あの。そろそろ質問とかしてもいいですか?」
「さすがに初対面で胸のサイズは教えられんぞ?」
「誰がそんなこといきなり聞くか!」
「でもチラチラ胸を見ていたじゃないか。まあ君がどうしてもと言うなら教えてやらないこともないぞ?」
「……それは大丈夫です。それより質問いいですか?」
「おっ、少し迷ったねぇ〜。ちゃんと男の子しているじゃないか関心関心」
なんだこれは。会話のキャッチボールが全く成立しない。会話をするための第一投目が外野まで打ち飛ばされるような感覚だ。
その美貌に感動すらしていた瞬間の俺を返せ!
胸に視線が多少傾いても仕方がない。貴方が言った通り男の子だもん、どうしようもない。大きいんだもん。すごい大きい。
「ふふっ。すまない、少しイタズラが過ぎたね。君と会うことを楽しみにしていたんだ、許してくれ」
「まあ別に怒ってはないんで許すも何もないですけど……」
「君は優しいんだな」
そう言いながら笑う姿は子供のように無邪気で可愛らしかった。
一見クールな印象を与える容姿だが子供のように可愛らしい言動も見られる。
そのひとつひとつに自然と惹かれてしまう。
「ところで会うのを楽しみにしてたって言いましたよね?それはどういうことですか?」
「んっ、そうだね。その話も兼ねて君の疑問をひとつずつ解決していこう。話を遮ったお詫びにしっかりと説明しよう。とりあえず私に付いてきてくれ」
そう言って女性は歩き出しその後を楓人が付いて行く形で二人は歩き出す。
だが少し歩くと途中で女性は振り返り、
「自己紹介がまだだったね。私の名前はアルミアナ、気軽にヴィーンって呼んでくれ」
「原型止めてないじゃないですかそれ……。改めまして、俺は星海 楓人です。よろしくお願いします」
アルミアナはくすくすと笑いながら、楓人は呆れながら先へ先へとまた歩き始めた。