懐愁
廃墟の写真集で見つけた一枚
昔、好きだった遊園地
父と母と弟と
何度も行った思い出の場所だった
今でもよく覚えている
私はここを知っている
すごく楽しかった場所なんだ
とっくに色褪せてはいるけれど
私にとっては金色のたからもの
それは私の中の永遠で
記憶という無自覚の産物で
虚無に置き去られた純粋だ
例えばヒロシマのドームのように
例えば神戸の町のように
例えば福知山の電車のように
例えば━━━━
切なさでも悲しみでもなければ怒りでもない
「そうだね、昔はこんなのだったね」
自分の思い出を自ら破り捨てて粉にして
「でも、こんな風になっちゃったね」
足元に積もる塵を見下ろして
その山に身が埋まる日を恐れて
様々な言葉をこうして紡いで
声にする
「私はここを知っている」