第5話 君の気持ち
恋は甘い香りがする
第5話 君の気持ち
悠馬の唇と私の唇が少しずつ離れて行った。
私、杉山杏里。14歳。
なんと..この度ファーストキス終了しました。
杏里(こ、これはゆ、夢・・!?)
悠馬はなぜ私にキスなんてするのか。
もしかして嫌がらせ!?
ううん。違う。悠馬はそんなことする人じゃない。
だとしたら...どうしてだろう。
杏里「あ、あの・・」
悠馬もやっと世界から抜けだしたのか、
両手で持っている私の肩をチラりと見た。
この瞬間悠馬も理解したのだろう。
バッ
悠馬は口を押さえてとっさに私から離れた。
悠馬の顔は今にも爆発しそうなぐらい顔が真っ赤だった。
杏里(あっ-)
悠馬「ごっ、ごめ・・」
と、口をゴシゴシ手で拭いた。
そんなに嫌だったらどうしてキスするの?
私は嬉しくてたまらないのに-。
ガラガラ
保険の先生「あら、こんなところでどうしたの?2人とも」
杏里「あっ、先生」
保険の先生「ちょっと!2人とも墨まみれじゃない!
シャワー貸してあげるから」
杏里「じゃあ悠馬先・・」
悠馬「杏里がいけよ」
私の声をかき消すように悠馬が言った。
杏里「えっ、悪いよ!私のこと助けてくれたのに・・そこまで..」
悠馬「だーかーら幼馴染を助けるのは当然だろ」
杏里「う、うん・・」
私は保健室のシャワーに向かった。
ジャーーーーーーーーーー
-保健室-
保険の先生「あんた杏里のこと助けたんだって?」
悠馬をニヤリと見る先生。
悠馬「べっ、別に・・」
保険の先生「まー、好きなやつ助けるのは当然かぁ?」
悠馬「こっ、ここでいうなよ!」
顔を真っ赤にする悠馬。
保険の先生「で、なんで2人してそんな目に合ってるんだ?」
悠馬「いやぁ~、クラスに悪趣味な女子がいてさ、
そいつが杏里をいじめてバケツに入った墨をぶっかけたっていうか」
保険の先生「ふーん..それを悠馬が助けたのね」
悠馬「まっ、まあ・・」
保険の先生「それで悠馬..高感度上がったと思って舞い上がってるわけだ?」
悠馬「ちっ、ちげーし!!」
-教室-
クラスの男子「ちょ、この仕掛け全部美奈ちゃんが仕掛けたってほんと?」
クラスの女子「うわ!最悪じゃん!」
美奈「ちがっ!私は・・」
わざとらしく涙を浮かばす美奈。
美奈「私・・この人達に全部やれって言われたの!」
といってクラスの女子1・2を引っ張った。
クラスの女子1・2「えっ・・」
美奈「わ、わたしぃ..ヒック..この人たちにぃこうしろってぇ..ヒック」
顔をふさいで泣いている美奈から少しばかりの笑みがこぼれた。
クラスの男子「お前って本当に最低だな」
美奈「そうでしょ!?こいつら本当にさいてーで・・」
思わず顔をあげる美奈。
クラスの男子「お前のことだよ」
クラスの男子は美奈をジッと見る。
美奈「わ、わたしぃ?どうして・・」
クラスの女子2「あんたの最低な姿、全部録音してあるから」
といって録音機を美奈に渡した。
恐る恐る美奈は録音ボタンを押す。
カチャ
ジャーーーーーーーーー
美奈『もっと』
クラスの女子1『はっ、はい』
美奈『早く入れなさいよ、早くしないと帰ってくるじゃない』
クラスの女子2『すっ、墨持ってきましたぁ!ハァハァ』
美奈『まだ少ない、もっと持ってきて』
クラスの女子2『はっ、はい~!』
ドタバタドタバタ...
クラスの女子1『あっ、あの...こんなことして一体何を...』
美奈『だーかーらー、何回言ったらわかるの?あのクズ女をこらしめるのよ』
美奈『うん。水はこのぐらいでいい。バケツ2個で2杯分ね。
後はここに墨を入れればっ!』
クラスの女子1『美奈は何をたくらんでるの・・?』
美奈『この墨水をあのクズ女にぶっかけて恥かかせるに決まってんじゃんっ!
そんなのもぉわかんないなんてぇ、美奈のぉ友達失格だよぉ?』
クラスの女子1『ごっ、ごめんなさい』
プチッ
これを聞いた美奈はゾクゾクし始めた。
美奈「ど、どうして・・」
クラスの女子2「私墨を取りにいくフリしてこっそり録音してたのよ?」
美奈「なっ!ハメたのね!?」
クラスの女子「美奈、最悪!私美奈のこと応援してたのにー」
クラスの男子「失望したぜー」
や、やめて!
だ、誰か・・助けて・・
-廊下-
杏里「シャワー気持ちよかったね!」
私たちはあれから2人ともシャワーを済ませて体育用のジャージに着替えた。
そして今教室に向かって歩いている。
悠馬「おっ、おう・・」
さっきのキスのこともあったせいか気まずい一方だ。
杏里「ゆっ、悠馬・・?」
私は悠馬の顔を不安気に覗き込んだ。
するとなぜだか悠馬の顔がみるみる赤くなっていく。
杏里「あっ、ごめん・・」
悠馬「いや・・こっちこそ」
-教室-
ガラガラ
杏里(ふぅ・・やっと教室着いた。中入ろう・・ん?)
ドアを少し開けるとなんだか賑わっていた。
杏里「みんなどうし・・」
私が目撃したのはとてつもなく残酷なものだった。
ビシャッ!バシャッ!
みんなで美奈ちゃんに水やら墨やらケチャップやらかけていたからだ。
悠馬「おい、どうした杏里。そんなところで立ち止まっ・・」
悠馬も目を見開いていた。
美奈ちゃんは顔を両手で押さえていた。
美奈「ふぇっ、グスッ、うえっ」
激しい泣き声も聞こえる。
どうしたんだろう。私。
やり返されてるから喜ばないといけないのに。
私がやられている時より胸がしめつけられた。
クラスの女子「杏里ー!杏里もこいつに仕返ししなきゃ!」
杏里「やめてっ!」
私は気がついたら美奈ちゃんを抱きしめていた。
教室中がシンとなる。
杏里「美奈ちゃん、大丈夫?」
私は美奈ちゃんに笑顔で声をかけた。
美奈「どっ、どうしっ・・ひっく..私に優しく・・する・・の?」
ケチャップやら水やらビショビショになっている美奈ちゃんが目にとまった。
杏里「いこう!美奈ちゃん!」
美奈「どっ、どこに・・」
杏里「保健室に決まってるでしょ!」
私は美奈ちゃんの手を引っ張り保健室にかけつけた。
-保健室-
シャワーを浴びてジャージを来た美奈ちゃんがシャワー室から出てきた。
杏里「大丈夫だった?」
すると美奈ちゃんが飛びついてきた。
美奈「うえーーーん。ごめんね。杏里ちゃ・・ごめ・・」
私は泣きじゃくる美奈ちゃんの背中をさすった。
杏里「大丈夫だから。その代わり友達になってくれる?」
美奈「もっ、もちろん!杏里」
私は初めて本当の友達ができた気がした。
杏里「ありがとう!美奈」
-保健室 外-
???「ふーん。あれが噂の杏里ちゃんかー」
???「・・・よし、あの子に決めたー」
続く