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陸上の渚 ~異星国家日本の外交~  作者: 龍乃光輝
第二部 第四章 フェーズ1 捜査編 全19話
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第115話『火事場泥棒会議』

 今期のアルタランの安全保障理事会の七ヶ国は、偶然か必然か強国が多く在籍していた。

 経済力、軍事力共にトップ二であるシィルヴァス共和国とメロストロ合衆国。

 反異星人思想筆頭で、日本転移後から防衛と称して軍拡に勤しむメシリアーナ国。

 独自規格の兵器を開発し続け、国際社会とは軍事共有を結ばない中立国のソロモ国。

 国防は他国に委ね経済力に予算を振っている経済第五位をレジンス連邦。

 ユーストルにフォロンがあると分かるまでは世界最大の産出量を誇っていたイルリハラン王国の西、マルターニ大陸の隣の小大陸にあるブロトリア共和国。

 世界最貧国で、世界中から経済支援を受けている議長国のサラマート王国。

 基本的に全ての国々が結晶フォロンの恩恵を受けて経済活動を行っているが、今期の安保理の国々はより多くの需要を持っていた。


 だからこそ今回のテロによって世界最大の産出地域であるユーストルには多大な関心が寄せられていた。

 フィリア社会の経済は六年前と違って完全にユーストルを中心に動いている。そのユーストルの秩序が崩壊してしまえば経済発展は著しく遅延を強いてしまうため、経済と軍事双方で強国であるシィルヴァスとメロストロは共同提案と言う形で、ユーストルをアルタランの管理下に置き、世界軍の常駐を提案したのだ。

 第三者による管理であれば領土国による恣意的な運用を防いで公平的な輸出が出来る。そう謳った。

 当該国からすれば盗人猛々しいが、世界経済の中心地でありながら史上最悪のテロをさせてしまった二点から、その厚かましさの印象を薄れさせた。

 反異星人国家のメシリアーナ国はその提案に全面的合意を見せた。世界経済の中心地に異星国家が常駐し、半ば支配している現状はフィリア社会に対する最大限の侮辱であり屈辱として、断固とした日本の権利はく奪を主張する。

 中立国のソロモはその立ち位置から一方的にユーストルを奪おうとする国々に対して、当事国の意見を無視して管理権を奪うことは法治国として妥当なのかと牽制を入れた。


 軍を持たない国のレジンスは、イルリハランと日本の管理から外れた各国の企業から輸出される先が、民間から国となって軍拡に繋がるのではないかと懸念を入れる。

 あくまでフォロンは経済の発展に使うのであって、そうした意味では輸出を適度に行っているイルリハランと日本から切り離す意味はないと、備蓄はしても半数は輸出に回している例を挙げる。

 世界第二位のフォロン産出国であるブロトリアは、その地位奪還が成されないことは遺憾だが隣国に覇権を握らせたくはない思惑から賛成を仄めかしている。

 経済力では最も乏しい島嶼国であり議長国でもあるサラマート王国は、国益を見ればアルタラン管理案を進めたいところ、議長故に偏った見解は示せない。ソロモ同様に公平な立ち位置を進む。

 つまるところ、安保理で提案されたユーストルのアルタラン管理案に対して賛成国は四ヶ国、中立が三ヶ国。明確に反対を表明した国はなかった。


 アルタラン安全保障理事会は入れ替わりやすさからフィリア社会の縮図とも言えるため、この時点で反対国が無いと言うことは過半数以上の国がユーストルに対する政策で不満を抱いていたと言うことだ。

 さすがに管理案賛成国もすぐさま決議を取ろうとはせず、全会一致に持ち込んでイルリハランと日本を封殺する形でしようと様々な提案を持ちかける。

 しかし、中立国が持ち出すのはどれもが当該国を無視しての決議には難色を示すもので、票数では可決できても世界経済クラスの事案では過半数を上回るより全会一致を賛成派は望んだ。


 シィルヴァスとメロストロが共同で管理案を出してから二日後、ようやく管理案賛成国は折れてイルリハランと日本の大使を安保理に参加させることとなった。

 日本は当然ながらオンラインで、イルリハランはアルタラン全権大使が参加する。

 ただ、元々賛成国が過半数を超えている現状から、日イの主張によって撤回される見通しは低い。中立国が反対に回ることはあっても、賛成国が意見を変えることはまずないからだ。

 参加許可が下りた数時間後の午後、アルタランに在任しているイルリハラン全権大使が安保理会議場へと入場した。

 同時に理事各国大使の目の前に置かれているパソコン画面には、オンラインで繋がった日本大使も表示される。


「……まず」

 着席し、会議が始まると同時にイルリハラン大使が発言する。

「理事国は当事国である我が国と日本に対し、無礼極まりない提案を我々に通達せずしたことを謝罪してもらいたい」

 突然の謝罪要求に理事国の大使はざわつく。


「何を驚かれる。逆の立場だったならば、貴国らは一切そうした要求をせずに席を用意したことを感謝をするのかね? であれば訂正をするが、常識から見ても第三者が安保理と言う立場を利用して他国の領土に干渉することは内政干渉以外考えられないのだが、最新の国際政策は内政干渉を容認するでよろしいか?」


 テロを大義名分に推し進めようとして棚上げしていた問題を、イルリハラン大使は開口一番で指摘をする。

 国家間の立場は対等であり、安保理と言う立場を鑑みても上から目線は許されない。あくまで世界秩序のために考えることが出来る立場だけであり、それ以外の国家の上に立っているわけではないのだ。

 イルリハランは主導権を安保理に握らせ続けさせないためにも、初手から殴り込みを決める。


「元はと言えばテロを起こさせたイルリハランに責任がある」

「テロの発生と、ユーストルのアルタラン管理は直結していない。論点を都合のいいように変えないでいただこう。アルタランが議論するのはテロに関することであって、場所となったユーストルではないはずだ。そもそも、テロ組織が犯行声明や今日までにユーストルに対してなんらかのことをしたか? 答えは否だ。犯行声明もなければ正体不明の組織がユーストル内で活動している報告もない。ユーストルについて騒いでいるのは安保理のみである以上、テロこそ対処せねばならないがユーストルに干渉することは国際法の明確な違反だ」


 時に暴論には暴論で返すのが政治のやり口だが、今回は正論での返しだ。

 しかも正論が的確過ぎて暴論を飲み込む。


「それとも安保理ではテロとユーストルが繋がっている明白な確証があると? であれば今この場で提示をしてもらいたい」

「テロを許した国がなにを上から目線で……」

『日本からも発言をさせてください』

「異星国家が何だ」

『安保理の怒りはテロ組織なのか、それともユーストルの主権を握っているイルリハランと日本、どちらに向いていますか?』


 画面越しに放たれる日本大使の問いに七ヶ国は答えない。

『まずはそこを明白にしなければ前に進みません。誰を敵として誰を味方とするのか』

「我が国は日本を敵国として見ている」

 理事七ヶ国で最初に発言をしたのは反異星人思考のメシリアーナ国大使。


「我々とは異なる星、異なる生態、異なる歴史を経て発展した異星人をこの星の一員とすること自体おかしな話だ。一刻も早く異星国家を完全隔離して不干渉をするべきとこれからも主張をし続ける」

 国家間の対立、民族間の対立、人種間の対立と、同じ星で発展した人類でも一つになれないのに、異星人を含めて一つになることなどまずありえない。メシリアーナの主張は決して間違いではなかった。

 だが、論点はそこではない。


『メシリアーナ大使、それは日本に対してであってユーストルに関しては違います』

「いいや違わない。現に異星国家の存在でユーストルの一部は実効支配されているんだからな」

『日本が来なければユーストルの価値はレーゲンしか知らず、ユーストルはイルリハランとレーゲンの対立によって別の歴史を歩んでいる以上、日本を否定することが日本の絡むユーストルを否定するのは違います。大使、レーゲンがユーストルを実効支配し、結晶フォロンを大量に産出したら違う反応を示したのではありませんか?』

「異星国家が……」

『例え発展した星は違えど、進化の方向性が同じであることは学術的に証明されています。異星国家の事実はあれど、意思疎通による違いは無いと考えています』

 遺伝子学的にリーアンと地球人の遺伝子が同じであることは証明されている。異星人同士で出産が出来る時点で、異星人と言う概念で排除をするにはすでに弱かった。

『その上で再度聞きます。メシリアーナはテロとユーストルの主権を握っているイルリハランと日本、どちらに怒りを持っていますか?』

「日本だ」

 にべもない。


『であれば貴国にこれ以上言うことはありません』

 人それぞれ考え方が異なるのなら、国家もまた考えが異なる。他国にとって有利な考えを他国に強いるには根気がいる上、対等関係から強要が出来ないので日本は引き下がる。これ以上くらいついても心象をより悪化させるだけだ。

『他の理事国はいかがです?』

「テロは撲滅する。これは全世界共通の目標だ」

 シィルヴァス大使が答える。

「同時に世界経済の火薬庫であるユーストルに懸念を持ってもいる。フォロン結晶石がマルターニ大陸全土か、局地的でも複数の土地から産出するなら特に問題ないが、ユーストル一ヶ所だけなのが問題だ。代替がないなかで世界戦略資源を独占すれば、経済を自由に操れるのと同じになる。テロを理由に侵攻を企てる国もあるかもしれない。それを防ぐためにも国際社会による管理が大事なのだ」

「それを防ぐためにも国際開発特区として民間企業の移転を許可している」


 メディアでは印象操作として度々伏せられるが、ユーストルにはイルリハランと日本しかいないわけではない。ユーストルは国際開発特区と指定し、日本の主権を認めた国の企業は日イの厳しい審査をパスすることで浮遊都市を移転させて仕事をすることを許可している。

 テロによって一時的にユーストル外縁に避難しているが、決して二ヶ国による占拠独占はしていないのだ。

 利権と言う意味では他国より強くとも、そこは主権を持つ国として当然の権利である。


「管理案を支持する理由は、フォロン結晶石の利用目的を民間に限定しているからであろう?」


 ユースメミニアス規約として、ユーストルで採取されたフォロンは軍事利用に回せる量を禁止している。フォロンが大量に出回れば軍事利用されるのが目に見えて分かるため、エンドユーザーは最終的に民衆になるよう管理していた。

 無論完全な禁止こそせず、年間採取一%は流用が認められている。

 ただ、やり方次第では流用できるので暗黙の了解による平和利用のアピールの体が強い。

 安保理はその軍事利用制限を撤廃したいのだ。そして日イがため込む量を減らしたいがため、テロを利用して管理案を持ち出したのだ。


「ユーストルを火薬庫を申すなら、尚の事軍事利用には厳しい制限を設けるべきだ。簡単な話、民間に利用されるフォロンはユーストルから。それ以外を他の産地から使えばよいだけだ」

 それだとフォロン価額に著しい格差が生まれるが、それは各国共通の問題だ。

「結局のところ、ユーストルをアルタラン管理下に置くのは安保理共通の認識か」

 イルリハラン大使がそうまとめる。中立を標榜する三ヶ国も、あくまで一方的に決めることに難色を示すのであって管理案自体に反対ではないのだ。

「事前情報の共有は出来ただろう。日本大使はいかがですかな?」

『日本も大丈夫です』

「では最初の謝罪をしてもらおう」

 話の流れから情報の共有になったものの、最初の要求である謝罪を安保理はしていない。イルリハラン大使は忘れずにそれを追求する。

「安保理にどれだけ大義名分があれ、他国の領土に事前通達もなく干渉することは明らかな国際法違反だ。謝罪をしないのであればイルリハランはアルタランを強く非難し、特区内のフォロン供給の停止も視野に入る」


 イルリハランはユーストルの主権を握っているため、産出したフォロンの扱いに裁量権も握っていた。これは日本にもない権利で、イルリハランの独自で一部または全部の流通を止めることが出来た。

 日本は割譲された領土ないなら裁量権は自国にあるが、特区内ではイルリハランの要請の元で動く。

 イルリハラン大使も日本大使も語ることを止めてアルタランの出方を見る。


「……アルタラン安全保障理事会議長として謝罪をする」

 二国間または国家群による交渉であれば押し通せても、世界各国が集まるアルタランの、しかも『安全保障』を謳う部門で暴挙の前例を作れば、後の国際社会での立場を失う。

 議長国のサラマート大使は当事国でありながら外されたイルリハランと日本に対して謝罪をした。

 安保理議長が自身及び同部門の失態について謝罪をした例はない。

 皮肉にも前例を作ってしまった。

 とはいえ暴挙による前例と謝罪の前例、どちらが信用に影響を及ぼすかはその国次第である。


「イルリハランはその謝罪を受け入れます」

『日本もです』

 これで会議がようやく始まる。

 しかし、話し合いは終始前に進まなかった。

 テロを理由に強引に管理案を推し進めようとする安保理と、テロと治安秩序は関係ないとして拒否する日イ。

 互いに理不尽を理由に寄り添うことをしないがために妥協案が出ず、はたから見れば子供の喧嘩が何時間も掛かっているにしか見えなかった。

 日イが安保理に参加して四時間が過ぎ、太陽が地平線に沈み込んだ頃についに一ヶ国がしびれを切らした。


「話し合いではらちが明かない。こうなれば民主主義に則って決議を取るべきだ」

 伝家の宝刀である決議を持ちだしたのは反異星人国家のメシリアーナ大使。

「大義の無い民主主義に正義があるというか」

「異星人と共同で世界戦略資源を独占する国にも正義などありはしない」

『異星人=悪に対してのイメージを日本は撤回要求しません。逆であればおそらく同じでしょうし、異星人は区別であって差別とも思っていません。しかし、イルリハランから建国時より保有していた領土の中から希少な資源が発見された途端、独占云々を語るのはいかがなものか』

「異星国家が我ら社会の価値観に物申すか」

『異星人だからと無知と思わないでいただきたい。フィリア社会の政治と地球社会の政治は同類であることはすでに承知していますし、グイボラ絶滅から今日まで百年の歴史についても理解しています』


 日本が主権を獲得してから五年。無知ゆえに搾取されるのを防ぐべく、日本の官民は総出でフィリア社会について勉強をしてきた。精通とまでは行かないが、不勉強で後れを取るようなことはない。

「その決議に我が国と日本も参加してよいのだな? メシリアーナ大使」

「貴国らは理事国ではない。どうして決議に参加できる」

 安保理決議は理事国のみで行われる。会議にイルリハランと日本が参加しようと投票権はなく、当然拒否権もない。

 七ヶ国中、すでに四ヶ国が賛成を表明している時点で議決は決まっているも当然だった。

 日イとしては決議そのものを止めなければならない。


『……一つ安保理に尋ねたいことがあります』

「日本大使、なにか?」

『安保理決議について言及することはありません。ただ、テロが起きて十日弱。まだ事件の全容もつかめず、テロ組織からの声明もなければユーストルに侵攻する不明勢力もありません。なぜ今、ユーストルの治安秩序の判断を安保理が下す必要があるのですか?』

 安保理の国々は治安維持としか言わず、時期については明言を避けていた。

「占拠された後では遅いからだ」

『ユーストルには大型基地であるラッサロンが常駐し、さらに日本もユーストル全土で展開できる防衛体制を整えています。客観的に考えてもユーストルを占拠するにはテロ組織では困難と思われますが、安保理は何を危惧して早急な管理案を押し通そうとしているんですか?』

 客観的、論理的に日本はアルタランに追及する。


「そもそも、アルタランが管理することがなぜ治安維持に繋がるのかも説明がほしいな」

 外交の場で本音をさらけ出すのは負けを認めるのと同義だ。

 イルリハランと日本はその本音を知っているからこそ指摘をする。

「ブロトリア大使、貴国としてもユーストルのアルタラン管理が決して国益に繋がると思っての賛成であろうか?」

「どういうことだ」

「世界一位と二位の産地が隣接しているのだ。であればより強固な治安維持と称して貴国の産地も管理下に置くと言い出す可能性を少しは考えたか?」

「……っ!」

「フォロン産地を標的にしたのならブロトリアでもテロ起きる可能性がある。起きて今回のように安保理が管理に動いたら、当然賛成するのだろうな」

『それ以前に、フォロン産地であるユーストルを管理下に置くのならブロトリアの産地に今回触れていないこと自体不可解ではないでしょうか。ユーストルにだけそれを強いるのは不条理かと』

「今回我が国は関係ない事だ」

『明日は我が身と言うことわざがあります。今はなくとも今後もないとは言い切れません。ならばテロが起きる前に管理下に置くのもまた治安維持になるのではありませんか?』


 まさか自分たちに矛先が向かうと思っていなかったのだろう。ブロトリア大使は言葉を詰まらせる。

「無言と言うことは自分たちのことは棚に上げて都合のように進めたいものと解釈する」

「イルリハラン大使、侮辱する発言は慎んでもらいたい」

 議長のサラマート大使は注意を促す。

 侮辱で言うなら主権国を無視しての管理案を通そうとするのは侮辱ではないのかとなるが、その点では謝罪を受けているので口をふさぐ。


「そもそもとして国家の集合体であるアルタランに公平な管理ができるとは到底思えない」

『日本の母星でも国連と言う同じ国際組織がありましたが、各国の主義主張と利害関係によって名ばかりの組織でした。レヴィアン問題で一致団結こそすれど、紛争等では有効的な解決は出来ていませんね。アルタランが国連より民主主義なのは理解していますが、それでも公平な管理には疑問を抱きます』


 国際組織と言えば公平なイメージを持つも、その中身が複数の国々の集合体だ。人それぞれ考えが異なるように国家間でも考えは異なる。ユーストルに対する見方も違うだろうから、管理するとなっても意思統一が成されずに、イルリハランを主軸とした二国防衛よりも治安維持は中長期で考えると脆い。

「ユーストルの管理はアルタランが行い、治安維持には別の防衛組織と契約する方針だ」

 シィルヴァス大使が問いに答えた。


「駐留するのは世界軍ではないと?」

「国家に依存しない防衛組織として、軍事企業と契約して防衛にあたってもらう」

「傭兵に世界経済の中心を防衛に当たらせるだと?」

『平和維持軍が活動することはありますが、民間企業に委ねた例はありません』

「軍事企業チャリオスはどの国にも属さない特殊な企業だ。社員は多国籍で民間人だから国の息も掛からない。中立と言う意味では十分と言えるだろう」

「冗談にしては品がないな。世界共通の認識である世界経済の中心地を傭兵に警護させるなど苦笑すら起きん。遺憾を通り越して軽蔑さえしてしまう」

「イルリハランはチャリオスとの関わりがないからそう言えるが、チャリオスの軍事力は主要国並みにある。ユーストル防衛には十分だ」

「そのチャリオスが契約を無視してユーストルを占拠しないとなぜ言える」

「企業は信用と契約が全てだ。チャリオスは半世紀前に起業して以来、全世界を相手に着実に実績と信用を築いている。仮に契約を反故にして占領しようと、ユーストルのみを支配したところで経戦能力は途絶える」


 ユーストルの中心に位置する日本はともかくイルリハランは、ユーストル以外でも広大な領土を持っている。それ故に他国と断交したところで、経済には響いても餓死する心配はない。

 だがチャリオスは主要浮遊都市と小中の関連浮遊都市が複数しか持たないから、ユーストルを支配しても外部との航行を遮断してしまえばユーストル内で自給自足を強いることになる。

 もちろん自給自足するだけの資源はあるが、あくまで自活に限られて経戦は不可能だ。地下資源はフォロンばかりで鉄類がない。石油もないから燃料はもっぱら木材。いくらフォロンを無尽蔵に手に入れてもそれだけでは戦えない。

 世界一の軍事企業としても、世界を相手に戦うには太刀打ちは出来ないのだ。

 中立と信用、支配等々を考慮した結果、民間軍事企業チャリオスが選ばれた。


「国際社会がする判断とは到底思えないが、その判断の責任を負うのはアルタランなのでそこは問わない。ではもう一つの日本が出した疑問の管理を急ぐ理由を話してもらおうか」

「最悪が起きる前に対処をしているまでだ」

「我が国と日本の防衛力よりチャリオスの方が優秀か。そこまで侮辱を受けたのは初めてだ」


 国家間の立場は対等であり、テロ云々に関わらずその立場は尊重されなければならない。なのにあからさまにチャリオスを推すと言うことは、何らかの密約か忖度が交わされている証左となる。

 それが中立国まで及ぶのか、推進国までなのかは分からないが、管理案は表向きで真の狙いはチャリオスの常駐にあるのではないだろうか。

 日イ大使は目配せも相談もすることなくそうであろうと察して、一番判断が揺らぎやすい条件が揃っているブロトリアをターゲットに絞る。


「決議を取るする前に、オンラインで話をされたい方がいるがよろしいか?」

「誰であろうと決議をすることに変わりはないぞ」

「構わない」

「それ以降話を拗らせたりはするかね?」

「拗らせているのは一方的にそちらだが、以後は口を閉じよう」

『日本も同じです』

「では許可しよう」


 議長国サラマート大使が許可したことでイルリハラン大使がパソコンを操作する。

 各大使のパソコン画面全体にある人物が表示された。


『初めましてアルタラン安全保障理事会の大使。イルリハラン王国第十六代国王、ソレイ・ビ・イルリハランです』


 テロにより崩御されたハウアーと王位継承権第一位だったリクトに代わり、王位を継承したリクト王太弟の実子のソレイ新王だ。


『私の話を聞いてください』

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 作中でも述べられている様にまさに暴論ともいうべき『管理案』<`ヘ´> そして各国に深く浸透しているであろう件の企業の根・・・・ 果たして若き国王の時間稼ぎの間に起死回…
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