第02話『世界情勢 4月~5月』
二〇一九年 四月十二日 アメリカ
『レヴィアン日本に落下!
東部標準時十一日午後十一時二十分、三十二年前に発見された小惑星レヴィアンは幾度の軌道変換作戦も有効的な効果を見せず、落下地点だけを変更して最終落下地点である日本に落下した。
大気圏に突入後、日本軍によるミサイル迎撃が行われ爆散した模様。
砕かれたレヴィアンは日本列島を覆いかぶさるように落下。それにより巨大津波が発生し、環太平洋全域に数十から数百フィートの津波が襲った。
津波による行方不明者は日本を除いて数千万人と推定され、日本は全滅との見方が専門家から出されている』
四月十二日 イギリス
『日本に起きた異変
日本に小惑星レヴィアンが落下して二十四時間が過ぎた。
UKへの影響はレヴィアン落下で発生した地震のみで、津波や巻き上がった粉塵はなく、粉塵の影響は来月とされている。
その中で不可解な事象を、レヴィアンと共に地球に帰還した惑星往還船インディアナの外部カメラが捉えていた。
日本国国防軍と思われる迎撃によって爆散したレヴィアンは、日本をまるで檻のように囲う形で落下した。そして着地する瞬間、檻の中にあった日本列島とその海は、瞬時に緑色の大地となったのだ。
直後に大小様々なレヴィアンが落下。着地による衝撃波と熱波、巨大津波で大半が浸水して見えなくなった。
極東に位置し、世界有数の先進国である日本に一体何が起きたのか。一億二千万人はどうなったのか。極東地域は依然と被害が酷く、宇宙物理学者によると状態が安定して海路で行くには半年から一年は掛かるだろうと言う話だ』
四月十三日 インド
『朝鮮半島壊滅
レヴィアンが日本に落下して四十八時間が経ち、次第に被害状況が分かってきた。
津波による死者は推定で五千万人を超え、行方不明者も五千万人を超えるとされる。最終的な死者は一億人となろう。我がインドもマグニチュード五から六クラスの地震が襲い、家屋が倒壊して数百人が犠牲となった。
日本は落下直後から首都東京を始め主要都市との連絡は取れず、隣国韓国も首都ソウルとも連絡が取れない。衛星写真から朝鮮半島の様子を見ると、津波はソウルにも達しているようだ。
韓国は湾岸部に都市部が集まっている。よって国家の要となる主要都市が軒並み機能停止したのだ。
北朝鮮も同じだ。四十八時間が過ぎて水は引いているが、都市部は完璧に機能不全となっているだろう。政府、経済の停滞は必至だ。いや、レヴィアンが落ちて機能不全程度で済んでいること自体が奇跡と言えよう』
四月十三日 アメリカ
『中国北京との通信回復
ホワイトハウスは定例会見で中国の首都である北京との通信が回復した発表をした。
中国国家主席との直接の会話を大統領はしたそうで、国家主席を含む中国国務院は被害は少ないとのことだ。
しかし上海や香港など湾岸都市は地震と津波で壊滅状態であり、以前の状態に戻すには十年は要するとされる。
落下地点である日本に関する情報はなく、湾岸都市の壊滅に中国政府は人民解放軍の大量投入を決めた。
ホワイトハウスはこの混乱に乗じ、中国は日本に対して軍を派遣するのではないかと懸念を示した。ただ、主要の軍港もほぼ全てが津波に襲われ、正常稼働する軍艦はほぼないとされる。落下までに就役していた航空母艦遼寧と山東も、最悪航行不能状態である可能性があるとしているので当面は心配はないだろう』
四月十五日 アメリカ
『ハワイ上空黒く染まる
レヴィアン落下に備えてハワイ州では全域で大統領令による避難命令が出されていた。
それでもここで死を選んだ人を除き、約九十五パーセントの住民が本土に避難をした。
レヴィアンが落下したことによる津波は定点カメラによるとどの建造物よりも高い九百八十四フィートを超えており、オアフ島のコオラウ山脈に設置してある定点カメラは、津波の前になすすべなく飲み込まれていくホノルルを映し続けていた。
それから四日後、偏西風に乗って西より漂ってきた粉塵によって空は覆われ、昼間だと言うのに夕暮れと変わらない暗さとなり、通信状況の悪化とソーラーパネルが機能しなくなってカメラの電源が落ちてしまった。
通信が途絶えてしまったためハワイ州の状況が分からなくなり、どれだけの人が生き残っているのかの状況も分からない状態だ。連邦政府は現段階でハワイ州に軍の派遣はしない方針を決めており、死を覚悟して残った住民の安否が気遣われる』
四月二十四日 アメリカ
『粉塵、西海岸到達
レヴィアン落下から二週間が過ぎ、巨大津波によって壊滅した西海岸上空が薄暗くなったことを救助活動をする州兵が確認した。
今のところ小規模な山火事程度の薄暗さだが、数日もすれば昼間でも日没と同じ暗さとなるだろう。
気温の低下も確認されており、予想通り例年より数℉は下がる見込みだ。津波から難を逃れた通常の農作物の被害は免れないが、全世界で成功させた冷害対策した農作物は何とか維持できるはずなので食糧難は免れるだろう。しかし、冷害対策が間に合わない植物や、それを餌にする家畜の被害は免れず、ステーキはしばらくすればお預けでBBQも出来なくなるだろう』
五月三日 アメリカ
『インフィニティ号帰還
昨日五月二日、実に六年に渡り宇宙に滞在し、レヴィアン落下を防ぐために任務に就いた十五人の宇宙飛行士が、帰還専用スペースシャトル、インフィニティ号によってフロリダ州にあるNASAシャトル離着陸施設に着陸して無事帰還した。
地球人類総意の任務であったレヴィアン軌道変換作戦は失敗に終わり、約三週間前にレヴィアンと共に戻ってきたインディアナ号は、三週間低軌道上で待機。事前に打ち上げておいたインフィニティ号とランデブーして乗り換えて帰還した。インディアナ号自身に大気圏突入能力はない。
日本に起きた謎の事象は三週間経った今でも解明されておらず、インディアナが獲得した大量の資料やデータの解析が求められる。
レヴィアンの落下で発生した粉塵は広がりを続け、あと五日帰還が遅ければ大気圏突入は困難であった。
十五人のクルーは無重力空間に六年と滞在していた。インディアナ号には遠心力による1Gモジュールがあるとはいえ、地球で生活するには困難なほど筋力低下しているため、今後一年に渡って筋力増加のリハビリ期間が必須となる。クルーの中には骨密度の低下でシャトル着陸時の衝撃で骨盤を骨折した者もいるほどだ』
五月五日 オーストラリア
『津波ゴミが深刻な問題に
八年前のグレートイーストジャパンアースクエイクで起きたような津波によって発生したゴミが深刻な問題となっている。
日本の場合は一地域のみだったため軽微であったが、今回は環太平洋と広域だ。ゴミの総量は数億から十数億トンを超え、石油プラントなどの被害もあって重油の流出も深刻である。
被害国はいまだ被害を受けた湾岸地域での作業に終われ、津波ゴミや重油対策に手が回る状況ではない。オーストラリアはレヴィアンの被害は免れたが、津波ゴミが早くも漂流してきている。
これらのゴミが海から消えることは今後百年はあり得ないだろうと専門家がコメントし、重油流出によりイルカやクジラなど神聖な海洋生物たちの命が脅かされることを危険視し、今後魚介類を食べるには慎重にしなければならない』
五月十一日 イギリス
『レヴィアン被害者数、一億人を突破
小惑星レヴィアンが落下して一ヶ月が過ぎた。
落下時点である日本の被害者数は依然と不明だが、環太平洋にある湾岸都市の被害者数がある程度分かってきた。いまだに津波の爪痕が酷く、がれきの撤去が進んでいないため数万人ががれきの奥底にいると思われるが、各国の集計により暫定数字が出た。
日本を除く最も被害者数が酷いのが中国で、公式発表では死者行方不明者が四千五百万人と出ている。これは上海や香港など世界有数の経済都市がレヴィアン落下側にあったことと、十四億人を抱える国土の中で避難できる場所が少ないことがあり、避難しきれない国民が多かったとのことだ。中国は以前より他国からの難民受け入れを拒否しており、翻って出国が拒否されたのも原因とされる。
次に被害者が多いのが韓国で、被害者数は二千万人。これは津波だけでなく、地震による倒壊、衝撃波及び熱波も含まれる。
青瓦台も被害を受けて壊滅し、大統領以下閣僚の死亡も確認された。現在は政治的空白を無くすため、暫定政府として生き残った閣僚、市長と道知事が臨時大統領及び閣僚を務めている。
経済は完全に破たんし、非常事態宣言を発令した。医療と食料が底をつき、北朝鮮に脱南する国民もいるとされる。北朝鮮の被害者数は不明。
以下フィリピンが千万人、アメリカ、ロシア、インドネシア、台湾が五百万と続き、日本から最も遠方の国々で累計五百万人ほど集計され、環太平洋の国々は非常事態宣言を発令している』
五月十二日 フランス
『UN(国際連合)、レヴィアン落下後初総会開催
レヴィアンが落下してから一ヶ月が経ち、活動を停止していたUNで初総会が開かれた。
各国のUN大使は全員母国に帰国しており、ニューヨークにあるUN本部での総会開催は不可能だ。よってオンラインでの開催となった。
地球の七割を粉塵が覆われてGPSなど人工衛星からの通信が非常に不安定になっているが、欧米間での海底ケーブルは問題ない。
しかし、日本にレヴィアンが落下したことで、太平洋間の海洋ケーブルが断絶してしまったため、常任理事国である中国とロシアとの通信は不安定なままだ。それだけでなくレヴィアン落下の後遺症が強く、日本周辺国の大半が欠席する予定だ。
よって今回の総会は白人総会と揶揄するコメントもある。
議題内容は当然レヴィアン災害の復旧復興だ。
レヴィアン落下によりアジア諸国は壊滅状態となり、さらに大気中に舞い上がった粉塵で史上最悪の冷害、氷河期が来ることも想像されている。間接的を含め被災者は三十億人を上回り、その人ら全員の救済を考えなければならない。
ヨーロッパ諸国はアジアで発生した難民受け入れに難色を示しており、すでに多数の難民を引き受けているのに新たに引き受ける余力はない。それは我が国フランスも同じだ。
UNの国際難民機関は直接的な被害を免れた批准国全てに、受け入れを容認するよう打診しているが、今後の関連災害を考えると各国も素直に返事は出来ず、総会は平行線を辿るだろう。
三十億人は世界人口の四十一パーセントだ。ただでさえ世界中で貧富の差が激しい中でそれだけの人々が食糧難になれば、全世界で食糧危機となる。
間違いなく先進国は首を縦に振ることはない。
建前として助けるとしても各国は極東を見捨てるだろう。
なぜなら自国も明日を生きるのに大変なのだから』
五月十五日 国際連合
『会議は踊れど進まず
五月十一日に開催した国連総会は紛糾して前向きな結論は出なかった。
レヴィアン落下に伴う世界を襲った地震、巨大大津波、巻き上がった粉塵による冷害は刻々とグランドゼロとなった日本を中心に広がっている。
津波によって水没した都市が半数以上あり、瓦礫の撤去も人命救助優先で人手不足から進まず、被災国から国連に援助の連絡が来ているが率先して救援を送る国はない。
落下からひと月が経ったことで太平洋の海の潮位は落ち着いているが、環太平洋上に流出した瓦礫は多くあり、同時に海辺にある各国空港の復旧も全く進んでいない。
そもそも粉塵の影響で全世界で固定翼機は飛行禁止しており、例外が低空を移動できる回転翼機だが、救援物資が足りないため救援は大して進んでいなかった。
その上海上は瓦礫の山で、無事だった艦船の着岸も出来ない。軍艦も然りだ。
海と陸からの支援が出来ず、陸路では限定される。
無事だった欧米や南アメリカ、アフリカ大陸の国々も自国民を守ることを優先して、人材も物資も出し渋っている。
人道支援をメインとするNPOや国境無き医師団は被災地に出向いて活動をしているが、人材不足は否めない。物資不足から略奪も横行し、治安はレヴィアン落下の終末期よりも悲惨とも言える。
よって建前の言葉だけが出て実際に行動に移す国はなかった』
五月二十日 韓国
『速報 北朝鮮宣戦布告!
北朝鮮軍が二十日午前四時、軍事境界線を越えて韓国に進軍を開始した。
臨時政府は直ちに軍の派遣を決定。同時に北朝鮮に軍の撤退を要請したが、逆に宣戦を布告し、合わせて軍事境界線内で砲撃が確認された。
レヴィアン落下による国力の低下と在韓アメリカ軍撤退後の隙を狙ったのだ。
これも全て日本がレヴィアンを迎撃したからだ。
臨時政府は国連に救援を残った通信ラインを使って要請したが、応援は望めない。
現在の国力のみで押し返さなければならない。
他に打診するとすれば中国だが、休戦に向けて動いてくれるかどうか不透明だ。ロシアは最初から期待していない』
五月二十日 北朝鮮
『この国難だからこそ統一を!
昨月起きたレヴィアン大災害により南朝鮮は多大な被害を受けた。偉大なる指導者である総書記は、困窮極まる南朝鮮の現状を憂い、支援と活性化を目的として軍の派遣をご決断成された。
我が国は偉大なる第一書記の英断により、地下シェルターの避難によって国民のほぼ全員が無事という快挙を成した。この史上最悪の国難の前に対立になんの意味もない。
分裂した地域を今こそ統一し、朝鮮民族の存在感を世界に見せるのだ』
五月二十二日 国連
『直ちに休戦を要望する
国連の事務総長はは二日前に突如勃発した第二次朝鮮戦争に対し、歴史上これほど不毛な戦争はないと強く非難をした。
小惑星レヴィアンによって億に届く人が亡くなり、今後数十年でさらに大勢の人が亡くなると予想されている中、人が人を武力を持って殺し合うことに何一つ大義名分はない。
今こそ誰であれ手を握り合い、互いを引っ張り合いながら一つとならなければならない。
肌の色、民族、国、宗教、そんなものはレヴィアンによって破壊され、残るは地球人類と言う決して壊れることのない繋がりのみだ。
争いは失うだけで何も生まない。
この最悪の状況だからこそ過去のしがらみは水に流し、武器ではなく手を握り合ってほしい。
第二次朝鮮戦争、二日間で戦死者は北朝鮮が五人、韓国が二百人としている。両国の発表であるため真偽は不明』
五月二十三日 中国
『中国国家主席、治安維持のため朝鮮半島に人民解放軍の派遣を決定
三日前に起きた北朝鮮による韓国侵攻により、軍関係者だけでなく民間人の虐殺もまた確認されたことを受け、人民解放軍を派遣し治安維持に努める決定をした。
奇襲に近い先制攻撃で韓国に侵攻した北朝鮮軍は、統一と謡いながら軍人だけでなく非戦闘員である民間人にも銃弾を浴びせている確たる証拠を得た。
国際社会の先頭に立つ我が国が、そのような悪逆非道を見過ごすことは出来ない。
よって一時的な措置として軍を派遣。第二次朝鮮戦争の早期終結を計り、情勢が落ち着くまで暫定統治することにした』
五月二十三日 アメリカ
『中国、朝鮮半島支配に動く
中国はこのレヴィアン落下に伴う混乱と、北朝鮮の暴挙を利用して朝鮮半島支配に乗り出した。
防波堤であった日本が消滅した今、中国を食い止める国家はない。在韓アメリカ軍が撤退し、レヴィアンの被害を直接受け、在任韓国内閣が崩壊した韓国に北朝鮮と中国軍を食い止める軍事力はないのだ。このままでは北朝鮮に韓国は占領され、さらに中国が治安維持として統治してしまうだろう。
中国の暴挙に国連は動かない。
残念ながら中国には拒否権がある。いかに安保理が動こうと、中国が拒否すればそれで終わりだ。平時であれば重大な国際問題として政治、経済と打撃を受けただろうが、今は非常事態だ。
このどさくさに朝鮮半島を手にし、さらに日本跡地を手に入れて太平洋の西側の覇権を手にする考えだ。
気になるのが中国の強行に同じく大国ロシアが何も言わない事だ。
中国もだがロシアも西太平洋の海洋進出は北極海同様力を入れていた。日本列島とアメリカによって阻まれていたが、その両国がなければ率先して出てくるはずだ。
なのにロシアは沈黙を保ち、その内情を語らないことにアメリカ政府は首をかしげている。
アメリカ政府は現在太平洋上で展開できる艦隊がなく、津波ゴミもあって太平洋横断は難しいだろう。日本に残した第七艦隊が悔やまれる』
五月二十五日 国際気象機関
『ついに粉塵世界中に蔓延する
国際気象機関(WMO)は、チリとアルゼンチンが分割統治するティエラ・デル・フエゴにてチリによる日光の遮光を確認。現在極夜である南極点での確認は明けるまでは分からないが、北極と南極を除く全ての人が住む土地で粉塵が確認された。
これにより世界気温が約五℃から十℃が下がり、世界規模の冷害と飢饉が訪れるだろう。
計算によると待機中に巻き上げられた粉塵が地上に落下するまでは三年から四年は掛かる見込みで、これによって温暖化は落ち着くが代わりに牛クラスの大型動物が大量死すると予想される。
世界各国の協力が不可欠だ』
五月二十八日 中国
『第二次朝鮮戦争終結
中国政府は、八日前に勃発した第二次朝鮮戦争が終結したと発表した。
第二次朝鮮戦争の被害は北朝鮮公表で百人。韓国は軍人五九〇人、民間人三七〇人と公表しており、民間人が被害を受けたことで紛争から戦争へと発展していたが、韓国軍はレヴィアンの被害で機能不全をお起しており、辛うじて進行を食い止めている程度であった。
人民解放軍は朝鮮半島の治安回復として軍事介入することを決定して部隊を派遣。
第三者として両軍に立ち入ることで戦闘を終了させた。
当面は両国の治安維持部隊として人民解放軍が駐留し、韓国には正当政府の設立を。北朝鮮は対話のテーブルに付くよう促す予定だ』
五月二十八日 アメリカ
『中国による傀儡国家の誕生の手助け
中国政府は第二次朝鮮戦争を終結させたと大体的に報じているが、一体どこまでが本当なのか疑わしいものだ。
これによって中国は北朝鮮と韓国に内政干渉してしまったからだ。
治安維持と言う大義名分と、アメリカがすぐに手を出せない事を良い事に、国連に連絡をせず単独で干渉することは国際法違反である。
しかし各国が自国にしか目を向ける事しか出来ないばかりに、中国はそれを無視してやりたい放題に動く。
北朝鮮は中国と国交があり、アメリカや国連の目も合って主権を保てたが、国際社会の監視の目が崩れたことを機に付け込まれてしまった。正当政府のない韓国は言わずもがなである。
これによって中国は二国に表向きは主権を認めつつも裏では言いなりにできるようになったわけだ。
中国は人道支援として、国連決議で禁止していた北朝鮮への人材と支援物資の供給を韓国含めて行う。
中国国内でも破滅的な被害を受けたが、国を二つ手に入るなら安い代償と見たか。
アメリカ政府は中国の行動に避難の声明を出した。
「中国の言動は目に余るものがある。世界は確かに過酷な状況であるが、他国が内政干渉することは明確な国際法違反である。通すべき筋を通さず、周囲に通告せず単独ですることは決して許されない。戦争の終結は我が国も願っている事ではあったが、その終結のしかたは明白な間違いである」
中国はこのアメリカの非難に対し、
「朝鮮半島の情勢は放っておけば拡大して重大な懸念になる。それが我が国にも火の粉が降りかかるため、早期解決が急務と言える。空を覆う粉塵によって航空機が全世界で飛行禁止となった今、解決できるのは我が国しかなかった。アメリカは太平洋の彼方だ。口ではどう言おうと手が出せないのだから、手を出せる我が国しか第三者として振る舞うことは出来ない。故に我が国は治安維持部隊として派遣したまでだ。そして、我が国は北朝鮮と韓国の内政に口を出すつもりはない」
と反論している』
五月三十一日 トルコ
『日本はどこに消えた?
小惑星レヴィアンが落下して、あと十日足らずで二ヶ月が経とうとしている。
まだとも言え、もうとも言えるほどこの二ヶ月は様々なことがあった。
レヴィアン落下による直接的な被害は落ち着きを見せても、空を覆う薄暗いチリは決して晴れることはなく、雨雲が来れば昼でも夜のように暗く、雨が上がって雲がなくなっても曇りより少し暗い空は変わらない。
夏季であっても日によっては厚着が必要なほどだ。
世界中でこのような気象変動が起きているが、どの国であってもあることに口を開こうとしない。
日本列島がどうなったかだ。
すでにNASAが公表した落下した瞬間の映像が広まっているが、日本に何が起きたのか公式に発表する国も機関もない。
映像を見る限りでは日本列島は〝緑の陸地と入れ替わった〟としか表現できないが、誇張の利かせた映画でもあるまいし、現実でそうしたことが起こるはずがない。
しかし、そうでなければ納得できない説明でもある。
親愛なる日本はレヴィアンが地球に直撃する、まさに直前で日本列島と謎の緑の大地は入れ替わったのではないだろうか。
それを証明するためには調査しかないのだが、調査に必要な艦船が全滅ではもうしばらくかかるだろう。
そして、万が一そこに日本列島、日本政府、日本国民がいないのであれば、そこは空白の陸地となる。
現代の地球で南極を除き、太平洋への玄関口としてどの国にも実効支配されていない陸地がそこにあるのだ。
太平洋の覇権を保持したいアメリカ。
太平洋への自由な航行を目指す中国とロシア。
最悪この空白地域である日本跡地を求めて紛争が起きるかもしれない。
いや、それは些末なことだ。
今知りたいのは、日本がどうなったかだ。
もし入れ替わったのだとしたら、どこか別のところで無事なのかもしれない。
もしかしたら映像はフェイクで、日本国はレヴィアンによって滅んでしまったかもしれない。
日本よ、一体どこに消えてしまったのだ』




