中学一年生 〜ゴールデンウィーク1〜
主要選手タイム
No.3 相川 陽介(中1入学時)
種目 50 100 200 400
Fly 38.2 1.21.5 ----
Ba 32.5 1.09.9 ----
Br 45.0 ---- ----
Fr 32.2 1.08.5 2.23.9 ----
IM ---- 1.19.9 2.58.4 ----
今日からゴールデンウィークが始まった。今年は4連休だ。しかし、JSC木田の選手達に休みなどはない。
「ゴールデンウィーク合宿初日なので、コースわけのデータするか。奇数Fr、偶数IMで、100×20の2分サークルな。上から、3人で1コースにしようと思う。」
飯田班と山井班合同ゴールデンウィーク合宿一日目である。先輩に1人だけ県の代表合宿に呼ばれているため、人数は21人で7コースあるため、1コース丁度3人になる。
「山井コーチにも、それくらいは計算できるんですね」
陽介が冗談を言う。山井コーチは県内の最も偏差値の低い高校にギリギリで受かった、いわゆる低学歴である。それでも、水泳のコーチに正社員としてなっており、昔は就職しやすかったことがよくわかる。といっても、かれこれ10年くらい前の話である。
「図形とか、方程式とか言われたら分からんけど、答えが2桁くらいの掛け算、割り算引き算足し算くらいはできるわ。」
この発言には小学5年生の石田ですら苦笑い。30手前の大人の発言としては少しかわいそう…否、かなりかわいそうな発言だった。
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データ後
「あぁ疲れた。データとか二度としたくないわ。流させろー。」
疲れた疲れた…と、騒いでいる陽介。
「みんなだから…疲れとるのみんなだから休ませろや。うっせぇわ。」
とは、四季。
「また、四季に負けたかー。15本目で休んだのがあんま意味なかったか。」
「いやいや。15本目の休憩ないと、追い上げすら出来なくなってただろうから、あれは仕方ないって。」
「だー。くっそー。この1月で大分持久力には自信ついたはずなんになー。」
とは、涼介。「だー」や、「くっそー」は、涼介の口からはいつもなら出ない言葉だが、四季はニヤニヤ笑うだけでゲラゲラ笑うのを必死にこらえている。
「でも、結局俺ら3人で1つのコースやろ?」
「えっ、そうなん?」
「四季から俺までが7.8.9番らしいよ。」
アベレージは、四季がFr 1.15.2、IM1.20.0。涼介はFr1.14.0、IM 1.22.9。陽介はFr1.16.0、IM 1.22.0だった。
「陽。その、「でも」の使い方変じゃね?だって、涼が頭抱えてるのは、コースが上がらなかったからじゃなくて、俺に負けたからだろ?」
ニヤリ。と、四季の会心の笑み。しかし、そのころには涼介も冷静になっていた。
「まぁ、負けたのはしゃあない。次勝てばいいってことだろ?」
四季はつまらなさそうにしているが、無視して涼介が話を続ける。
「午後の練習って3時集合やろ?疲れたまると嫌だから寝るわ。2時半にはおこしてくれ。」
合宿中は2回練習。朝食後9時〜11時半まで、15時半〜18時半までの2回水中練習がある。朝は6時半〜7時までが、全員集まっての体操の時間だ。
「涼は寝てしまったし、ほかの部屋に遊びに行くか?」
合宿中の部屋割は、中学生以上は3人部屋で、小学生は7人部屋である。
「でも、小学生は7人部屋だろ?うっさいしせまくねぇか?」
「でも、2人でだらだらしててもつまらんだろ」
「ちーっす」
これからの話をしていたら、石田がいきなり部屋に入ってきた。
「おい。ノックぐらいしろよ。」
「鍵かかってない方が悪いですよ。ちなみにー、俺のデータのタイムはー…」
「確か、俺の次だよな?中2の先輩とかにも勝つなんてすごいじゃないか。まあ、俺らに勝てないようじゃあまだまだだけどな。」
陽介の満面の笑みが、照り輝いている。
「なぁ…寝てる奴がいたら普通静かにするよな~?」
涼介が眉間にシワを寄せながら四季、陽介、石田…と睨んだ。
「ごめん。」
すぐに謝ったのは四季。少し、陽介の眉間のシワが治まったかに見えた。がしかし、陽介が爆弾を投下する。
「いやいや、合宿は楽しまないとダメでしょ?」
「は?」
「いや、だから『バン』…すみません。」
それ以降一日目は3人の部屋はとても、とても静かだった。




