中学一年生 〜引きこもり〜
「四季の家かー。今日は入れさせてもらえるかねー。」
「今日は、最高の武器が手に入ったから大丈夫だろ。」
そう言って、陽介が秋を見ると、秋は何のことかわからず、少し首を傾げて陽介に質問した。
「武器?」
「そう、武器。こんなに簡単に手に入るなら、さっさと使っとけばよかったな、涼。」
「それは確かにな。でも、武器っていう言い方は少し悪いだろ。そういう風に利用はするけどね。っと、」
涼介が止まった目の前にはちょうど、「山田」と書かれた表札のある家があった。
「ここが、四季の家でーす。」
陽介が、自分の家かのように手を広げて紹介した。そこは、一般的なサイズの、2階建一軒家だった。車が止まっているのを確認してから、涼介がチャイムを鳴らした。
「すみません。四季くんいますかー?」
「いますよー。でも、追いかえせって言われているんですけど…」
「今回は彼女さんも連れてきたので、大丈夫だと思います。なので、四季くんの部屋の前まで連れてってくれませんか?」
がチャリ、という音とともに扉が開いて女の人が出てきた。
「あら、四季にも彼女ができる年になったのねー。ふーん。四季にしては悪くないわね。じゃあ、2階の四季の部屋に突撃してあげて、部屋の鍵はないから勝手にずかずか入ってあげて。何かあったらと、帰るときに一階の奥のリビングに来てね。」
「はい、分かりました。じゃあ、上がらせてもらいます。お邪魔します。」
4人が一斉に靴を脱ぎ始めた音を聞いて、2階の方からドタバタと音が聞こえてきた。その音を聞きながら、涼介が「しまった」という顔をする。
「また、ロックかけられたか。」
秋と元谷が、涼介の言葉の意味を理解できなかったので、それを聞き返すと、「行けばわかる。」と、疲れた顔で返されてしまった。
☆★☆★
「おい、四季。開けるぞ。」
ドアノブを回し、戸を押すがビクともしない。
「やっぱりか。これ、どうやって閉めてるかが分からねえから開けれねえんだよなー。」
ドアノブは回るが、肝心の戸は全く動かない。陽介も涼介も苦い表情を作ったが。
「山C開けるよー。」
返事はない。
「火つけたら、流石に扉は無くなるよね。」
そう言って、秋がカチカチとシャーペンをならすと…もちろん何も起こらないが。部屋の中から、バタバタと、音がして、扉が開いた。
「すいません すいません すいません。」
土下座はしていないものの、驚異的なスピードで3度謝って廊下に出てきた四季を、秋がしっかりと受け止めて、
「捕獲。」
こうして、四季の引きこもりは終了した。
☆★☆★
「まさか、こんな簡単に四季に会えるとわな。火をつけるとか、嘘でもそゆなすぐに出てこねぇだろ普通は。」
秋の行動には3人と四季も想定外だった。
「で、何の用ですか?」
四季が誰とも目を合わせずに問う。
「誰から話す?私?それとも、小笠原くんたち?」
四季は、その言葉から3人と秋があまり仲が良くはないということを知った。
「なら、俺らから先させてもらおうかな。レディーファーストとかあるけど。」
「じゃあ、四季のお母さんに誤解を解いてくる。」
「お前ら、俺の母さんになんて言ったんだよ。」
ため息混じりに、半ば諦めた表情で四季がボソッと言った。
「じゃあ、俺らからの本題はと…水泳か学校、それか部活に来てくれないか?来週の日曜に大会がある。その前に鳴らすくらいでいいからさ。」
「俺は学校に来てほしいな、俺内部だけど、小学校時代仲良かったやついないし、お前おらんとつまらん。」
「正直な奴め。」
元谷の言葉にまた少し本音をこぼす。
「俺は、まあその付き添い?大会には出て欲しいけどね。」
3人の要件を聞いて、四季は少しも悩むそぶりを見せずに、「嫌だ」とだけ告げて追い返した。
反論は認めなかった。
☆★☆★
「どうせ失敗したんでしょ?「学校に来てくれ」とか、「水泳に来てくれ」とか、言って。」
秋は馬鹿にしたような口調で、涼介たちのマネのようなことをした。
「聞いてたのか?」
「違うよ。想像したらすぐに出てきたのを言っただけ。」
「そうかよ」
また一段、秋と3人の仲は開いた。
☆★☆★
「さてと、どう?元気?疲れてるように見えるけど。」
「要件だけ言えよ。」
そう言うと、四季は寝転がって携帯ゲーム器をいじり始めた。
「じゃあ、お言葉に甘えて…合唱コンクールの指揮者、山Cがいないなら、誰か代わりにやってもらいたいんやけど、誰か候補いない?元谷がやるって言ったくせに拍があってないから、全くだめでさ、山Cが最初はやるって言ったから代役決めてよ。っていうのが一つ。」
「多分、それはできんわ。俺、元谷と、安達さん以外の人の顔と名前一致してないし。」
「じゃあ、代わり探してみるね。」
「そうしてくれるとありがたい。」
四季は疲れた様子で首を回しながら言った。そ秋には、その態度が気に食わなかったようで眉間に一瞬しわを寄せた。
「あともう一つは、岡島に関してね。」
「俺はそれを聞きたかった。」
四季が上体を起き上がらせて言った。もちろん、ゲーム器も手から離した。四季の疲れはとんだようだった。
「全治は4ヶ月みたい。でも、ASには間に合うってさ。それと、四季に伝言って言って、こないだの、アドバイスを伝えるように言われた。」
「あぁ、あの25mだけ頑張れだっけ?」
「50mね。まあ、そんなのはどうでもよくて、もう一つの伝言は、「200の約束は忘れてないよな?」だってさ。」
「岡島はまだそんなこと言ってんのかよ。懐かしいなー。もう、俺に期待できないと分かっててお前は俺に期待するもんなー。」は〜…
四季は大きなためいきをつきながらも、顔は笑わせている。
「で、あんたはどうするの山田」
いつもは四季のことを山Cと呼ぶ秋が「山田」と苗字で四季のことを呼び、四季が秋のことを見ると、もう心の準備は決まったに等しかった。
「まずは、水泳から行くよ。ちゃんと、コーチに謝って、それから学校に行くよ。確か、今日の練習は今からだったよな?」
「そうだけど、その前に私に言うことがあるでしょう?」
「岡島からの伝言ありがとうございました。」
「違う違う。そうじゃないでしょ。迷惑をかけたら何をするの?」
「ごめんなさい。」
四季が謝った瞬間に、また作り笑顔…ではない本物の笑顔を秋が見せた。
「これ貸しになるよね?」
その笑顔は、四季の復帰を喜んでのことではないようだ。と四季は判断した。
「そりゃあ…そうですね。」
「てことで、合唱コンクールの指揮者やってね?断ったら、今から叫んで警察呼ぶから」
そこまでの脅しを入れなくても、もう四季は諦めていた。
「分かりました。やりますよ。それと、JSC木田にようこそ。」
「私が入会したの言ったっけ?まあ、いいや、下に皆んないるから行こ?」
「分かりました。」




