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水泳部1年春  作者: 田尻山 一由
22/24

中学一年生 〜四季〜

「四季は今日も休みか。」


元谷はそう言って、本来四季がいるはずの場所に座る。


「そうみたい…だけど?」


その席の隣に座っている女の子が答えたが、元谷はそんな答えを聞きたかったわけではない。安達秋は何か知っていそうだが、何も教えてくれない。四季の家を知ってる人は、


「陽と、涼に聞いてみるか…」


何度ももう聞いているが、それでも聞きに行ってしまう。中学になって、初めてできた友達であり、最初の一ヶ月間の学校生活では、ほとんど一緒に行動していた四季が、学校に来ないのだ。


「失礼しまーす。小笠原いますかー?」


この学校では、他クラス、職員室への入室は原則禁止されているので、元谷は涼を呼んだ。


「よう、大地。でも、水泳にもあいつは来てないぞ。それに、あいつの家なら毎日行ってるけど、応えてくれねぇよ。」


四季が学校に来なくなって一ヶ月がたった。今は6月。合唱コンクールまであと2週間。水泳の地区大会は今週の日曜日である。この学校から病欠以外での、不登校児ができたのは初めてなようで、先生たちもその対応に慣れておらず、四季の家族も、引きこもりの理由が分かっているせいか、あまり問題視していないようで、そのまま放置しているとのことだ。


「こないだの大会のタイムで、400IMと200Flyは四季がエントリーしてるのにな。」


四季が居なかったので、部内記録会での結果を見た後に、涼介と陽介が部長の海馬先輩にお願いして、四季の大会出場を許可してもらった。ちなみに、400IMと200Flyの、部内記録会の参加者は0人だった。


「四季が来なかったら、俺らが怒られるぞどうするよ。」


「まあ、そうはならねぇだろ。」


陽介、涼介、元谷の3人は焦っていた。


「あれ?安達さんどうしたんだ?」


3人で暗い顔をしていると、秋が3人の方向に歩いてきているのを陽介がみつけた。


「山Cが学校に来ない理由は、岡島のせいなんだろうけど…それで何で山Cが引きこもるの?ただの同期でしょ?」


そこが、皆引っかかっていたのだ(元谷以外…元谷はまず、何故山Cが学校に休んでるか知らない)


「なんか、微妙に仲いいんだよな。あの2人。岡島は普段、先輩たちと一緒にいるけど、大会の時とかはよく四季と話してるんだよな。」


「大会の時はよく喋る…って、ただ単にBrのまともな選手が、今のJSC木田には四季と岡島くらいしかいないだけでしょ?そんなのは仲良いとは言わないでしょ。」


秋は苛立ちを隠せない様子で、言葉を続ける。その姿に、3人ともとても驚かされた。


「それに、あいつはうちのクラスの指揮者なの。他に代役がいないし、山C以外頼んでもやってくれないし、こいつみたいに、やってみて、拍すらあってなかったら本当に意味無いのよ。」


「なんか…すみません。」


秋を苛立たせているのは、合唱コンクールの指揮者の件だった。元谷が「四季の代理は俺がやる。」といって1週間たったが、リズムが一定にならず、伴奏と歌ぢけが噛み合っているようで噛み合っていないが、指揮者はただの置物。といった状態で、バラバラになっているのだ。


「まあ、山Cがいても指揮ができるとは限らないからいいけどね。」


そうして4人はまた少し、暗い顔になった。すると、涼介が提案をした。


「今日の部活、部長に言ってサボって、四季の家行く?」


それを真顔でいった。


「ちょっと聞き捨てならんなー。」


「た…高田先生か。なんだよ。ビックリした。」


「なんだよ。とはなんだ。俺も先生だぞ。しかも、水泳部の顧問の。今の会話はなんだ。部活サボるって…いいわけないだろ!」


すると、涼介が大きなためいきをついてから、少し考えて発言した。


「なら、四季を部活に参加させるために、今日、四季の家に行ってから部活に行きます。っていうのはどうですか?」


「本当に部活に出るんだな?」


「帰りに交通事故とかぎなければ出ますよ?」


「なら、いいだろ。じゃあ、四季のことは頼んだ。」


高田先生はあっさりと言ってしまった。


「一時はどうなるかと思ったけど、四季の家に行けて、しかも怒られなくて済んで、涼介さんアザーっす。」


陽介が涼介を半分茶化しながら、感謝した。


「じゃあ、今日の放課後は玄関集合?」


「それでいいと思うよ。」



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