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水泳部1年春  作者: 田尻山 一由
17/24

山田 四季 〜県室内選手権1〜

「いやー。本当にね。この感覚が本当に懐かしく感じるわー。」


今日は、およそ一ヶ月ぶりの大会。ワクワクしないで居ようと言う方が無理がある。ただし、屋内25メートルプールなため、環境としては微妙である。


「でも、お前が出るのは今まで個人では出たことない、400IMと、200、100のFlyだろ?400と200溺れんなよ?」


涼介が何か言ってきたが、無視する。


「なぁ、四季は今回Br出ないのか?」


何も知らない岡島が聞いてくる。そうすると、涼介も陽介も俺に話しかけたりしなくなる。どうも、岡島と二人の間には何か溝があるみたいだ。


「うん。今季はFlyにしようと思って、ここ2年ほどJOの出場ラインから離れていってるし、タイムも去年はベストが全く出なかったからな。流石に苦しかったから、気分転換と、弱点のパワー不足の解消を目標に今年はFlyを本格的にやるよ。」


俺の言葉に岡島は「そうか。」とだけ言って、俺にプログラムを要求してきた。このスクールはスクールでのプログラムの購入をしない。なので、誰かがまとめて買ったり、バラバラに買ったりなのだが、今の中1の面々は親が大会を見に来るため、プログラムは親が買い、出場者本人は買わない。という、おかしなことになっている。でも、俺は親に「大会に来ないでほしい」と言ってあるので、プログラムは大会中ずっと自分の手元にあるから、他の選手のみんなに見せてあげたりしている。代わりに、控え場所の場所取り、毛布引き、掃除などは結構してもらっている。


「はいよ。」


まだ、自分は見ていないプログラムを岡島に渡した。岡島はBrの欄を見て


「本当に出ないんやなぁ。勿体無い。お前は200なら、俺に勝てるんにな。」


これは、いつも岡島が言っている。岡島は本気で言っているみたいだが、俺も、コーチたちもその言葉は俺に発破をかけるためのものだと思っている。


「Flyは、初めてやから楽しみやからいいの。それよりも、俺のFlyのところも見せてよ。」


と、岡島と二人でプログラムを見ていると、必ず女子が群がる。いつものことだから慣れてはきたのだけど、やっぱり、俺にはこの密集した感じは嫌いだ。


「よし、大体分かったし大丈夫だろ。」


俺の機嫌を伺って岡島は立ち上がり、そのままウォーミングアップをするために更衣室へ向かっていった。


「じゃあ、俺たちも行きますか?」


陽と涼に声をかけると、いつもと変わらない調子で、石田が「俺は?」とついてきて、いつもの会話になった。


「お前らが仲良いのなんか変やよなー。」


「いや、俺ら同級生だし、それに、水泳に関しては岡島と俺が選手コース、Jr選手コースの同期だからあれくらいの仲には普通なるだろ。って、いつもいってるだろ?」


これは去年くらいから、いつも言われている。去年のリレーで、俺がFrリレーのメンバーになったのは、「岡島を一人にさせるといけないから」という理由が一番強いとみんなが思っている。まあ、実際そうだけど。


「まあ、それはいいじゃん?それよりも今日の大会で決まるっていう、夏の県合宿メンバーに入るためのアピール頑張ろうぜ。」


「何をするんだよ。賄賂でも出すのか?」


そして、いつも通りくだらない話をしながら俺たちはウォーミングアップをした。


☆★☆★



開会式が終わり、俺は、1時間ほど暇になっていた。宿題するのもいいけれど、勉強を大会中はあまりしたくないので、勉強道具ごと家に置いてきた。おかげで、明日提出の宿題に一つも手をつけていない。


「なぁ、四季。この問題ってさー。どう四季をたてればいい?」


うわー。ないですわそれ。俺のことなど全く気にせず、俺に質問する陽介。てか、一次方程式の四季の立て方分からないって、どういうことだよ。でも、俺は答えない。


「涼介に聞け、俺は大会中は勉強しない。」


でも、あれは勉強じゃないような…そんなことはどうだっていいか。


「じゃあ、話変わるけど、安達さん一回も練習来なかったね、スクールの方は。」


そういえばそうだ。結局あの日しか来なかった。安達秋は学校の部活の方では、水中練習にも参加して、俺に「こうやって、泳げるようになったのは山Cのおかげだから、感謝はしてあげる。」と、上から目線で感謝の言葉をくれたが、同時に、「でも、飯田コーチがいる木田には月曜日しか行けない。」とも言っていた。


「まあ、月曜は来るんじゃね?そんなこと言ってたし。」


「なら、休みって言わないとね。月曜は大会直後で今週は休みだろ?」


あっ、そうだった。大会の次の日は練習は休みなのだ。まあ、部活はあるんだけどね。


「じゃあ、明日学校で伝えとくよ。」


とは言うものの、正直、今はレース以外はどうでもいい。スマホをいじっている人が大勢見て取れるが、あれは結構身体にストレスと言う名の精神的疲労を与えるから、大会ではあんまりいじらないほうがいいと思う。まあ、俺もストレッチと、睡眠以外にすることなんてないんだけどね。何故なら、他のスクールの人とあんまり仲良くないからだよ…悲しくなってきた。


★☆★☆



「200mバタフライの招集を始めまーす。」


その声と同時に皆ぞろぞろと招集所のお姉さんに集まる。この大会の良いところの一つはそのお姉さんが美人なことだな。うん。


「1組目1コースの山田です。」


「はい、FINA認証見せて。」


くるりと回って、着ていたTシャツを少しだけ上げてズボンを少し下げ、左側のお尻を向けた。


「はい。オッケーです。」


これで、お終い。最近はこのFINA認証のチェックが行われる。これはめんどくさいけど、高速水着問題が起こってからは、招集所で2回チェックされる。招集受付と、レース直前だ。レース直前までは、招集所から離れなけば何をしてもいいんだが、みんな仲間内で会話をしているせいで、俺は一人である。Flyの人なんて誰も知らない。そう思って、俺は音楽を聴いていた。


「次、200mバタフライ一組目行きますよー」


そう言われて、飛込み台の目の前まで行く。


俺は速い。速いんだ。速い。よし。


パンパン!パン!パンパンパン!


隣のコースの選手が太ももに肩、胸、腕、お尻といった場所をひたすら叩いている。


気合入ってるなー。速そうやなー。俺が速いはずないよなー。というか、俺って200Fly出るの初めてだよな。泳ぎきれるのかなー。不安だ。不安だ。ふあんだ。


「只今より、プログラム6番男子200mバタフライ。タイム決勝を始めます。」


ダメだー。えーっと、今回の目標は、2分40秒だから、36、40×3で、いいんだよなー。いいんだよなー。てか、40て楽勝じゃね?あれ?行けるんじゃね?


ピッピッピッピ ピー


よし。行ける。


\\ヨーイ ピッ //


よく飛べた!俺の得意はBrで使い込んだ、腰のうねり。ドクッとドクッと…よし。

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