中学一年生 〜安達秋〜
ファミレス
「はい。ストップ」
安達秋の話を四季が途中で止めた。
「お前はこのまま話して俺をどうしたいんだ?今めっちゃ恥ずかしいんだけど?」
四季は顔を真っ赤にしていた。安達秋はしてやったりという顔をしている。
「山Cが、私のあんまり知られたくないところを、何のためらいもなく聞こうとしてくるから嫌がらせをしようと思いました。でも、平泳ぎが、綺麗なのは事実だよ。」
四季は顔をより一層赤くし、それを見て、安達秋は吹き出すのをこらえるためにしたを向いて、お腹と口を抑えている。尚、笑をこらえることには失敗している。
「ていうか、練習まだなの?」
時計を見ると5時半すぎだった。
「おっ…いっけね。あと30分じゃん。お前はどうすんの?プール見に来る?」
慌ててグラスに入ったカルピスをあおりながら四季は尋ねた。すると、安達秋がキッと四季を睨んでから言った。
「さっきの見て、そんなこと言うの?あんたって鬼畜?鬼?」
(やべっ…しくじった。)
四季は慌てて謝ろうとしたが、途中でそれを止めて少し考えてから、言葉を発したが、安達秋は不機嫌なままだ。
「俺、さっきの話聞いて思ったんだけどさー。お前って、飯田コーチさえいなければ、泳げるんじゃねぇの?そしたら、うちのスクール入れるんじゃね?これは名案!お前が俺のいる班…山井班に入ったら「そこまで!」…」
安達秋は震えていた。しかし同時に眼だけは生き生きとしていた。その目を見れたのは四季だけだった。
「無理よ。私はプールにも入れないから。もう、泳げないのよ。だから、水泳部に入っても水中練習は多分出来ない。」
「ごめんね」
この謝罪の言葉は四季の胸に深く鋭く突き刺さった。そして、彼女の、また泳ぎたいという意思をとても強く感じたのだった。
「なら、今日は飯田コーチいないから、よっていってくれ。お前の泳ぎは見れなくていいから。」
「安達秋さん。お願いします。」
その時、ほんの少しだけ。安達秋の震えが止まっていた。もう一度…もう一度…
「もう一度…安達秋さんに俺の芸術的な平泳ぎを見せてやる。」
四季はドヤ顔でそういった。
「気持ち悪っ。でも、ありがとう。」
その時の安達秋の笑顔は赤子の生まれてきた時の顔にとても似ていた。




