これが、事件の始まりです。
呆然としている俺の目を覚まそうとしたのか腕に抱いた桜が鳴いた。
俺は隣にいる草加部を睨んだ。
「お前、何してくれてんだ。」
「読まないで捨てるなんておかしいだろ」
なんで、こいつはこんなに馬鹿なんだ。
頭が、おかしいんじゃないのか。
「あのな、俺に手紙を書くような人は誰一人としていない。なのに手紙が入っているなんて普通おかしいとおもうだろ」
「もしかしたら、お前の親って可能性もあるだろ。」
「お前はつくづく馬鹿だな。一つに親は俺の通っている学校を知らない。もし、知っていても下駄箱に入れる必要はない。」
「それじゃあ、学校の誰かってことも」
「それこそ、ありえないな。学校で親しくしている友人女子なんていない。教師なら直接俺の所に来ればいい」
そして、俺は過こし間を置いてから言いはなった。「この、手紙は俺が読む必要の無い物ということだ」
「なんか、すまない俺のせいで…」
「今更だろ。とりあえず、俺たちはいつ着替えたんだ」
俺の問いに驚いたように自分の服装を見た。
「着物だな…。ていうか、お前似合いすぎだろ」
腹を抱えて笑っている草加部を放置し俺は歩き出した。
「待てよ。どうするつもりだよ」
「ここにいても仕方ないだろ」
とりあえず、二人と一匹はこの場所から移動することにした。
こんなのあり得ないだろ。何時代なんだここは。
露天など何もなくさびれた建物が並び、役人や町人らしき人が歩いていて、農民や子供は薄汚れた着物を着ていた。なんで、建物がこんなに老朽化してるんだ。
すると、前方で争う声が聞こえた。
「お願いします。娘を返してください」
「うるさいぞ、農民風情がお前が勝負に負けただけの事だ。」
「お父さん、もういいよ。ここじゃあ勝負が命を左右する。私が生贄になるわ」
これは、関わらない方がいいな。
俺が、立ち去ろうとした時怒鳴り声が聞こえた。
「おい、おっさん嫌がってんだろ。離してやれよ」
何をやってるんだあの馬鹿は…
俺が、前方を見ると草加部が町人にむかって怒鳴っていた。
あいつは学習能力がないのか。
「ありえね…」
俺は、とりあえずあいつを止めるための考えをめぐらせた。
これしかないな。俺は腕の中の桜を見た。
すると、桜は全てわかっていると言うように短くニャーと鳴いた。