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軟派な日曜〜拓海の場合〜
ミユと拓海、二人きりで出掛けたはずが、街をぶらつき、カフェでお茶して、映画館を出た頃には、若い女性の御一同様、ご案内状態になってしまっていた。
「もう!今日は二人っきりって約束だったのに!お邪魔んぼうがいっぱい、くっついてきちゃうなんて!」
「なによ、お邪魔んぼうって。ダサ。」
「なにおー!」
ミユと茶髪の女の子(ミユも拓海も名前をしらない)の一触即発な空気のど真ん中に、拓海がスイっと歩み入った。
「ほら、二人とも、眉間にシワなんか寄せたら、可愛い顔が台無しだよ」
二人の眉間をチョン、チョン、とつつくと、
ついてきている女子たち(誰も名前をしらない)の叫びが大合唱になる。
「ずーるーいー!二人だけー!」
「ははは、君達もつっついちゃうぞ」
「きゃあー!」
黄色い声がコダマするなか、拓海は一人ずつ、女の子の眉間をつっつきだした。
「もう!せっかく学内じゃんけん大会で拓海センパイと一日デート券を勝ち取ったのに、
これじゃ、意味ないよーぅ!」
ミユの悲痛な叫びに拓海は振り返り、ウィンクしてみせた。
それを見てしまった女の子達がバタバタと倒れたのは言うまでもない。